真面目で不健康な私と社会をギリギリ繋ぎ止める
ほっそいほっそい糸の話でもするか

一週間後の歯医者の予約
返していない図書館で借りた本
月末期限の水道料金の請求書のハガキ

約束とも言えないような小さな約束で
社会と繋がっている感覚を得て安心している
まだ大丈夫だ、まだ大丈夫でいなければ

低めの声で語りかけるようなボサノバ
歌声に惚れ込んでいたから
思想の話はしたくなかった
あなたが歌っていた曲の数々は
そのまま私のプレイリストになって
人に貰ったことば　貰った音楽　貰った…なにか

真面目で不健康な私と社会をギリギリ繋ぎ止める
ほっそいほっそい糸の話でもするか

隣で同じ月を見たこと
夜中に並んで飲んだホットの缶コーヒー
肉まんに酢醤油をつけるのが下手くそだった記憶
はちみつの香りのハンドクリーム

数多の一瞬の熱いしあわせの記憶に生かされている
繋ぎ止める理由はいくつあってもいい
だから君の好きな歌を聞かせて、好きな言葉を教えて
冷静になんてならないで、我儘でいて

どこか遠くに逃げ出したい気持ち
ある日突然どこまでも走ってゆきたくなる衝動
選択肢の中に「すっと消える」があること
心にへんてこな天秤を飼っていて
いつもゆらゆら、どこかふらふら、綱渡りみたいで
あの日の感動も、忘れてしまえばただの泡だし
何故かいつも何気ない冗談の方ばかり覚えているし

繋ぎ止めてくれる最後の砦は
顔も知らないあなただったりすることもあって
ふとした時に思い出すのは
誰も覚えていないようなくだらない話だったりして
心に残ろうなんて思わなくていいよ
思い出したように記憶のすみっこにいて
月にはそれぞれで行こう、できれば自力で
待ち合わせはしてもしなくてもどちらでも

言い換えるならば、大好きだよ

言い換えるならば、

"In other words, I love you"