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ヒジャブと日本語(次女:現地校に通って1ヶ月)

ぬいぐるみを毎日持って登校している次女が学校の帰り道に私に言った。

「今日、日本語を話せる先生が来たんだよ!!」

私が確認している限り、次女の通う学校で日本人はいないはずだから
文字通り「日本語を話せる」人であろう。
次女に「どんな先生?」と聞くと
「肌の色が濃くて、黒いハンカチみたいなので髪を巻いているの」
と、彼女は答えた

「それはヒジャブって言って、その人にとって大切なものだから、触ったりしちゃダメなのよ」と次女に伝えると
「うん。そんなことしないよ。その先生、私が一番好きな先生なんだ」
と、学校に行くのが楽しくなってきた様子の彼女は答えた。

次の日、教室の前で次女を迎えると彼女は喜んだ表情で
「すごいんだよ!日本語を話せる先生、ひらがなを書けるし
『こんにちは』だけじゃなくて『お元気ですか?』も言えるんだよ!!」
それに対して、次女が何て答えてるのか尋ねると
「学校ではまだ話さないの・・・恥ずかしいから・・・」
と、彼女はキックボードを蹴りながら私を振り返りもせず先に家へと向かって行ってしまった。

日本語を話せる先生との交流を聞くようになって一週間ほどたったある日
帰ってコートを脱がせると、次女が制服のカーデガンを着ていないことに気がついた。
「体育の後、私のカーデガン名前がなかったから見つけられなくて、
先生がまとめてボックスに入れてしまったの。。。私のがないよって英語で言えないから、そのまま帰ってきたの。
でも、学校あったかかったから平気だよ。」

平気ではない。
困ったことが言えないとは、こんなにも不便で辛い思いをさせるのかと思って次女を見たら、彼女は相棒のぬいぐるみをニコニコと撫でていた。

平気ではない。
それは我が家に一着しかない制服のカーデガンなのだ。

学校が家から近いとは便利なもので、私と次女は慌てて学校に戻り、
先生に事情を説明して、カーデガンを出してもらった。
名前の書いていないカーデガンの中から、多分我が家のものであろうものを選び出して、帰ろうとするともう学校のゲートは閉まっていて
我々は来客用の事務入口から出ることになった。
担任の先生は「送っていくわよ」とニコニコと我々を出口へと案内してくれた。

道すがら
「どうやら日本語を話せる先生がいるみたいですね。ヒジャブをしている。」と、次女の担任に話すと
「ああ、彼女は先生ではなくて、遊ぶ時に手伝いに来てくれる生徒ですね。6年生ですよ」とさらっと言われた。
「なんで彼女は日本を話せるのでしょうか?」と思わず私が聞くと
「そこまでは知らないわ。じゃ、また明日」とさらっと送り出されてしまった。

イギリスで6年生といえば11歳くらいの子どもであろう。
なぜ日本語が話せるのかわからないけど、彼女に会うことが次女の楽しみになっていることは確かだ。

「今度、先生にお手紙書いてみようかな。私、ひらがななら書けるから」と
次女は楽しそうにしてる。

次女と遊ぶ日本語を話せるヒジャブの6年生。

私は心からの感謝と、会ってみたい好奇心とで
登下校の最中にヒジャブの子どもを見つけると、
あの子かしら?この子かしら?とキョロキョロと見回し、すっかり怪しい保護者になってしまっている。

そんな親の様子など知らない次女が
帰り道いつものように私を追い越して、元気にキックボードを蹴っていたと思うと突然振り返り、
「今日ね、日本語を話せる先生が一人増えたんだよ!!その人は、青い目をしているんだ」
とニコニコと話した。

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