夏の仕業

夏になると生き生きとする。
夏になると見るもの全てが眩しく極彩色に感じる、心の動きが細やかに身体を駆け巡る。夏になるたびに躍動する心。全てを感受して、表現したくなる。
そうかと思えば、白昼夢に佇んで動けなくなったりもする。眩しすぎて目の前が真っ白になって急に音が消える一瞬の永遠、スローモーションに見える世界、それも心が動いている証拠だと思っている。

強い光があれば必ず影ができる。はっきりとしたコントラスト。じりじりと焼けつくような光に焼かれたいと恋焦がれながらも、陽炎のように逃げまどう影に存在全てを隠されたいとも願う。極彩色の季節の中で、一点の曇りもない真っ白な世界も一緒に見ている。


この世界では夏にしか物語が動かない。夏になると心が開いて全てをあるがままに感じて心豊かに生きられる。夏が終わると扉がゆっくりと閉じていく、また来年まで冬眠の季節がやってくる。


全ては夏のうちに。全ては夏のうちにやり切っておかなければならない。やり残したものは来年の夏までは持ち越せないから。


夏の終わりはだから苦しい。胸がいっぱいになって、激しく心が動いて、何も出来ずに夕闇に暮れなずむ空を眺めて終わる。夏のうちに全部、夏の間だけ生きている、向日葵が太陽を浴びて狂おしく一斉に花開くような、蝉が一生の激しい恋に身を焦がすような、とても短い間の、激情の、夏。



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