行く冬を惜しむ日
行きつけていない図書館に入り、あてもなくYAコーナーへと足を踏み入れた。
そうだ、息子に西尾維新でも借りて行ってやろうかと「な行」の書架を見てみた。
で、梨木香歩が目に入る。読んでいない作品があったので手に取ってみる。
表紙の絵や挿絵に、惹きつけられた。
冬だ。紛れもない冬。北国の風景。
『この庭に 黒いミンクの話』 梨木香歩著
朝からどうにも、冬が終わってしまうのが惜しくてしょうがない気分だった。
目覚まし用のホットチョコレート、1日を締めくくるグリューワイン。
あごに当たるカシミアのマフラー、ひざ掛けに乗ってくる猫。
ドンゴーアウェイ、冬。
パラパラとページをめくると、
「春の兆しには耐えられない。」
という一文が目に飛び込んできた。
近くの椅子に腰掛けて、一心不乱に読んだ。
いいです、この感じ。好き。
以前紹介した、トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』にも通じる曇天感。
ホーロー鍋の牛乳を薪ストーブで温める場面がたまらない。
帰宅するなりホーロー鍋で牛乳を沸かして飲んだ。