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社会福祉士の仕事3 自閉スペクトラム症の子とプールに入る

週に1度、25mプール2レーン分が障がい児者専用レーンになる公営プールがあります。
自閉スペクトラム症や知的障害の若年層とその親御さんの利用が多いかな。

自由業社会福祉士Nは、その日に、自閉スペクトラム症の子と一緒にプールに入る仕事をしています。

<お迎え>
公営プールの日にお迎えに行くと、部屋からものすごい速さで出てきます。会話はできないけれど、その子から「プゥゥゥゥ(小さく)ル」と喜びの発声が必ず聞こえます。
思わず「オーケー。プールだぁ。」と答えちゃいます。

<公営プール到着>
障がい者手帳を持っている人と付添人は無料で利用できる公営プール。
受付があり、本来は障害者手帳などを確認するのでしょうけど、ほぼほぼ顔パス。その子が「こんにちわ。」と大きな声であいさつすれば「こんにちわ。」と受付の人が笑顔で返してくれて、それを合図に、その子は風のように更衣室に向かいます。

<更衣室、着替え>
着替えは一般更衣室を使います。障が者用更衣室は割と混んでいますので。
ロッカーに荷物を入れる順番、荷物を置く場所・角度などにはこだわりがあります。
服を脱ぐ順番、水着の着方、服のたたみ方などにも、もちろん決まりがあります。
全てがスムーズに終われば、すぐにプールサイドに出られます。
何かにひっかかった時には、動きがピタッと止まってしまいます。何にひっかかっているのかが分かることはあまりありません。
その時は、数を数える宣言して数を数えると動き出します(親御さん直伝)。「5まで数えるよ。1,2,3,4,5。」などなど。5で動かないと6にしたり、7にしたり。5以下で動くことはなく、10以上もないんです。

<プールに入る>
プールに入る前に自動でシャワーが出るエリアがあります。
右手のひらから順番にシャワーをあびます。自動だから、あびてる内にシャワーが止まり、少し動いてまたシャワーが出てきて・・・をしばらく繰り返します。
いつも必ずちゃんとプールの入口からゆっくりと入ります。
プールに入ったら、まずは水中を一緒に歩きます。その時は前後で歩きます。
その子が手をつないできたら、泳ぎたいサイン。自由業社会福祉士Nはその子の片手を引いて歩き、その子は水に体を浮かしマーメイドのようにゆらゆらと泳ぎます。(手を引かれているので泳ぐと言っていいのかな)
手を離したら、また歩きます。それを繰り返すのがプールの時間。

プールに入っている時、その子のこだわり行動のようなものがとっても少ないのです。手をつなぐ、離す、という行動くらいで、あとはプールの水に身を任せているような感覚なのかな。
水の音、水面に映る照明のゆらめき、などとも同化しているように思えます。

<プールを出る>
15分間の休憩時間を知らせる放送が入ったら、私たちのプールの時間は終わり。
終わりのシャワーから更衣室での着替えまで、プールに入る前と全く一緒です。動きが止まったり数を数えたり、することもあります。

<プール終わり後のお楽しみ>
プールが終わったら、必ず売店に寄って、決まったアイスとお菓子を買います。売店の人も覚えてくれて、商品をすぐに出してくれます。
アイスもお菓子もバッグにしまい、お土産で家に持ち帰ります。
親御さん曰く、「玄関入るか入らないかくらいでアイスを開ける」そうです。

<公営プール出発>
受付で「さよーなら」と大きな声であいさつをします。
受付の人も「さよーなら」と返してくれます。

<送り>
玄関に到着するとその子がすぐにピンポンを押します。
ドアが開くと、その子の手と自由業社会福祉士Nの手を合わせて、さよならのあいさつをして、終了です。

水中は、地上よりも、リラックスさせるものがあるんだろうなと思います。
波、音、光、浮き、感覚、温度、色、など、水中にしかないものが、自閉症スペクトラム症の子をゆるやかにしているのかな。


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