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「自分と違う」を認める勇気 ―シュガーラッシュオンライン感想

今年の映画初めとしてシュガーラッシュ・オンラインを見てきたので、遅ればせながら感想を。

アーケードゲームに住むゲームキャラクター、ラルフとヴァネロペが主人公の「シュガーラッシュ」続編だ。

前作は、悪役キャラとして過ごしてきたラルフが「ヒーローになる」という夢を叶えるために奮闘する物語だった。

今作は、変わらない日常の繰り返しに疑問を抱き始めたヴァネロペが「本当にやりたかったこと」を見つけ出していく物語。

舞台は小さな町のゲームセンターを飛び出し、インターネットの世界へと広がってはいるが、本シリーズで制作陣が表現したいことはわりと一貫してるのかなと思う。

前作では悪役に嫌気がさして、ヒーロー願望を持ったラルフ。

結局は、自分の世界を飛び出したことが引き金となってゲームセンターの世界全体を大混乱させてしまった。自分はヒーローになれないという現実を知ってはしまったけれど、悪役もこの世界には必要なんだということに気付く。

世の中には誰かがやらなくてはいけない仕事、果たさなくてはいけない役割がある。 

それをふまえて、日々の生活にどう幸せを見出すか。 

ラルフで言えばみんなのヒーローにはなれなかったけれど、大切な親友のための、自分なりのヒーローにはなれると気付いた。

これが前作のテーマだったからこそ今回のストーリーが成り立っている所は大きいと思う。

夢をひとつ叶えたあと、そこからまた新しい夢を見つけたいと思うか、掴んだ幸せを大切に守りたいと思うのか。

レースゲームの世界に住んでいながら、爪弾きにされて出場できない日々を過ごしていたヴァネロペ。みんなと肩を並べて競走できるようになり、日々の鬱屈とした思いはなくなったはず。

しかし、彼女は元来自分の夢のためなら手段を選ばないタイプの野心家。変わらない日常こそが幸せと言うラルフに同意はしつつも、「レースに出たい!」という夢が叶い、幸せなはずなのにどこか満たされない。

今回二人がインターネットの世界に飛び出したきっかけは、ヴァネロペの住むレースゲーム機が廃棄処分される危機に瀕したこと。

その危機を救うために冒険に出たはずなのに、主人公であるヴァネロペがオンラインゲームの世界に留まる結末となったことで、批判的な感想もちらほら見かけた。

でも「目の前にチャンスがあったら掴む。次の夢は何か分からないけどとりあえず動いてみる」という彼女の姿勢は、見ててすごく応援したくなったなぁ。

新たな道へ進む親友を心から応援できるか?

これは結構難しい問題。応援すべきと頭では理解できても、大好きな友達や身近な人となると感情が追いつかないことだってある。

どう生きていくかは人それぞれで、何が正しいという優劣があるわけではないけど、何となく友達が自分より先に進んでしまって、置いてけぼりになってしまうように感じることってあると思う。

そういう時って、これまでと同じように一緒に過ごせたらなとつい願ってしまうもの。
だからラルフが必死に引き留めようとする気持ちも分かる。

けど相手の志向に関係なく「〇〇した方が良いよ!」ってやたらに言うのって、言われる方からすると「あなたのためみたいな言い方してるけど、結局自分と同じ仲間が欲しいだけなんじゃないの?」って、価値観の押し付けに聞こえてしまうんだよね。

誰だって自分の考えには共感して欲しいし、否定されたくない。
自分と違う意見を認めるのは勇気のいることだけど、それを認めること=自分が否定される、わけじゃない。
自分を正当化するために周りをダシにしてしまっていないか、気を付けないといけないなと。

キャラクター設定としては親友同士の二人だけど親子のようにも恋人のようにも見えて、どんな関係性であっても相手を尊重することが大事なんだよ、というメッセージを感じた。

寂しい気持ちをぐっと堪えてヴァネロペを送り出したラルフは偉かったなと思う。

最後に 〜インターネットの世界で〜

予測変換してくれる検索エンジンやポップアップ広告の煩わしさなんかをうまく擬人化していたり、アバターがカプセルに乗って縦横無尽に駆け巡る様子で通信の仕組みを表現したり。

インターネットの世界に実は生きたキャラクターが住んでいる…という設定はファンタジーとして凄くワクワクするし、画面の向こうには常に「人」がいるんだということを意識させる上手い作品だと思った。

同じ趣味嗜好の仲間を見つけやすい分、相手に共感を求めがちになる傾向が色濃い気がするし、匿名で何でも発言できちゃう自由さもある。

メインテーマはヴァネロペとラルフの友情なのだけれど、インターネットの世界が舞台となることで、結局はリアルな友達と同じように(というよりまして顔も知らない相手なのだから尚更)、お互い尊重する気持ちを持って接するべきなんだというメッセージでもあるように受け取れたなぁ。

気軽に見られる作品でありながら、色々と考えさせられる映画でした。




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