空港バイトの話
私の英語力はゼロ。
単発バイトを探していた。
空港での案内、誘導スタッフの募集を発見。おもしろそう!
空港に行ったことがあるのは数回程度。空港という場所に居るだけでわくわくしちゃいます。その裏側にちょっと覗けると思うと、好奇心が止まらない。応募せざるを得ない。日時を確認して即申し込み。
海外の方と接する機会もあります!とは書かれていたけど、なんとかなるだろと思った。
実際なんとかなった(なんとかした)。
任されたのは、パスポートの写真と顔が一致するかチェックするエリア。私は国際線に乗ったことないので、顔認証の機械の存在をこの時初めて知りました。パスポートの顔写真のあるページを開いて機械に置いて、カメラを見て、顔認証OKならゲートが開く。
奥の方の空いているゲートに人をどんどん案内して、顔認証できず困っている人がいたらフォローする、というのが私の仕事でした。
国際線なのでいよいよお客さんは外国人ばかり。英語で対応などできませんが、大丈夫だろうか。というか、うっすらわかってきた。この状況は絶対まずい!
ゆるやかに絶望していると、さっそく「Excuse me ?」「Miss ?」と声をかけられる。
「お伺いします!」と思いっきり日本語で返事をして私を呼ぶ白人のおじさまのところへ向かうと、向こうもネイティブEnglishで畳みかけるように質問をしてきました。
長い、文章が長い。速い、話すスピードも速い。何も聞き取れなかった、どうしたらいいんだ。
とりあえず、「えっと……、そーりー?」と聞き返してみる。「ごめんなさい英語あんまりわかりませんもう一度お願いします」の意を、「そーりー」の1単語にぎゅっと詰めこんで、放つ。
次はゆっくり話してくれないかな、と期待してみましたが。だめだ、素晴らしく流暢な英語。何も聞き取れない。
ここは日本だ。日本語を使ってくれ、とまでは言いませんが、ゆっくり話すとか、簡単な英語で話すとか、スマホの翻訳機能を使うとか、他言語話者に伝えようという心を持ってほしいものです。
とにかく。
空港という場所はとてもバタバタしています。まわりのスタッフさんに助けを求めようにも、気軽に頼れる雰囲気じゃない。まずは自分で何とかしようと思いました。
意を決して、「そーりー!」と言いながら機械に置かれているパスポートをぶん取りました。普段の接客なら「すみませんこちら確認しますね〜」とでも声をかけるところだけれど、この時は「そーりー」の1単語にすべてを託した。
結論、パスポートを置く向きが違っていたことが判明したため、私が置き直して解決。ゲートが空いたので「おーけい!」と言って先に進んでもらった。
よっしゃ、なんとかしてやったぜ、と一息つきたいところですが、そんな暇もない、次々人が押し寄せてくる。
その後も、「マスクを外してください」を英語にできないのでジェスチャーで伝えてみたり、「ひとりずつゲートに進んでください、離れてください」を英語にできないので、車の誘導のように手を使ってジェスチャーで伝えてみたり。開き直って日本語だけで喋りつつ、身振り手振りとパッションだけで案内を乗り切りました。
おそらく、私が5時間で発した英語は「ふぃふてぃーんげーと」「そーりー」「おーけー」「いえす」「ぱすぽーと」の5つのみ。この5つだけで空港の案内をやり切ったの、まじで褒めてほしい。
結果、英語がまったくできなくても空港バイト(国際線)を無事に終えることができました。シフトを終えた後の疲労と達成感が半端なかった。
もう二度とやんない。
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