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黒海の記憶・番外/ウードゥルのアララト#03
「俺の家からは、美しいアララトの姿が見える」と言うファーティフ/Fの表情が、微笑みながらも、まるで遠くを見るようだった理由が分かったのは何年も経ってからだった。彼は当時、イスタンブル新市街に拠点を置く彼の会社の近くに、家族と別れて一人で暮らしていたのだ。
「OK、ありがとう。次の訪欧の時にスケジュールを絞り出すよ」僕が言うと彼が大きくうなずいた。
「アララト以外は何も見るものがない街だがな、しかし
コリョサラムGoryeo saram#10/アゼルバイジャンのバクーにて#10
たしかに1937年の強制移住は、極東における日本との軍事的緊張を反映したものだった。朝鮮半島が日本国の統治国となり、満州傀儡国が建国されると、長い間殆ど無人地帯でしかなかった国境が大きな問題になった。どこまでがロシアか?どこまでが満州国なのかである。ロシアは公然とスパイ活動を満州国に仕掛けていた。そして日本も沿海州に居住する高麗人住民を利用してスパイ活動をしていると断定した。極東地区がロシアの管理
もっとみるコリョサラム#03/アゼルバイジャンのバクーにて#03
アゼルバジャイ・バクーはカスピ海に突き出たアブセロン半島の南の根元にある新しくて旧い街だ。BAKUは「風の街」という意味だそうだ。カスピ海は渦巻く寒気と暖気のせいで黒海以上に気象の変化が激しい、その吹きすさむ風を古代の人々は"bād-kūbe"バード・クーベと云ったそうだ。これがバクーという街の名前になったと聞いた。
自分でも少し調べてみた。そしてサラ・ハヌム・バラベク・ギジ・アシュルバンリSar
サンマルタンの夕日を見つめながら、思いつくままの寓話#2
ところが、この天国と地獄の話が村長さんの耳に入りました。村長さんは困ってしまいました。
うちの村に、嘘をつかないなんて奴はいない。人をだまさないやつなんか居ない。
こりゃあ村ごと全員、地獄に引っ越しだなぁ。住民税は、どうなっとるんだろう。携帯電話は繋がるんかな。
村長は困り果てて、村人全員を連れてボクシを訪ねました。
ボクシは壇上からいいました。
「大丈夫です。行かなくても済む方法があります。」