お世話になります。┃僕の妄想物語
…このお話は性的な表現を含みます♡…
歩き慣れた夜道を、
前方から一台の車が曲がって路地に入ってきた。
白と黒の車体。パトカーだ。
15mほど先からヘッドライトが近づいてくる。
また職務質問だろうか? ・・・めんどくさい。
どうして俺はこんなに頻繁に「職質」に遭うんだろう。
引っ越して3年、いまだに冷蔵庫なしで暮らして
昼夜問わずコンビニ行っているのがいけないのか?
◇
眩しい光が俺の体を照らして停止した。
運転席のドアが開く。
「ちょっとすみません」
職業的な無表情で降りてきた、中年のオッサンに声を掛けられる。
制服の肩に「自動車警ら隊」のワッペン。
もう何度目にしたことだろう。
「どこに行かれてました?」
提げていたビニール袋をオッサンの目の高さまで上げて、
ほらこの通り、と言わんばかりに
「コンビニですけど」と答える。
車の助手席からも、色の白い若い女が降りてきた。
「お宅は近いんですか?」と続ける男性をよそに、
俺は女の方へと視線を注いだ。
「・・・リッピ?」
一瞬、怪訝そうな顔をした女は、
少しの間をおいて「タカオ君?」と聞き返した。
「そう、俺だよ権田タカオ!
なに、リッピ今警察官やってんの?」
興奮気味にまくしたてる俺に、
オッサンは「知り合いか?」とリッピに聞いた。
「あ、はい、小学校の時の同級生です」
直接顔を合わせるのは12年ぶりだろうか?
俺とリッピは同じ小学校に通っていたけれど、
中学受験をしたリッピはその後、地域とは別の有名私立中学へ進学していた。
どこかふわふわとした面影と、色白の肌、
ボブカットの黒髪は、小学生だった当時と変わっていない。
大学卒業後も派遣で食いつないでる俺に対して、
まさかリッピが警察官になっているとは・・・。
◇
「一応、身元の申告だけ取っといて」
と、明らかに上からの物言いでリッピにそう促すオッサンは、上司か、あるいは指導員なのだろう。
リッピは少し遠慮がちに
「お名前と生年月日を教えてください」と俺に尋ねた。
「権田タカオ、平成12年7月15日生まれです」
言われるままに回答する。
「何か証明するものをお持ちですか?」
スウェットパンツの尻ポケットから財布を出して、免許証を見せた。
横からオッサンも覗いてくる。
「うん、キミの同級生なら、照会はいらないだろう」
そう言ってオッサンはもう一度
「本当にコンビニに行っただけだね?」と念を押した。
「はい、俺んち、冷蔵庫ないんで、夜中でもよくコンビニ行ってて・・・。すみません。」
リッピの手前、おとなしく頭を下げる。
◇
行くぞ、と目で告げ先陣を切ってパトカーに戻ったオッサンの後を、リッピが追う。
「じゃ、くれぐれも私たちのお世話にならないようにね」
小声で言い残して、リッピはふわりと車へ戻っていった。
細身な体に対して、窮屈そうに胸を制服に包んで車に乗り込む姿が、なんだか無性にエロかった。
・・・まずい、ムラムラしてきた。
自宅のアパートまでは走れば5分と掛からないが、
性欲が湧き上がって止まない若き健全な男子にとって
その5分がどれだけ酷なものか、そんなのは説明するまでもないだろう。
・・・ダメだ。
俺はすぐ近くの小さな公園に駆け込み、
太い幹の木陰で昂りを鎮めることにした。
. . .
手が、早くもフィニッシュを迎える体制で動きを加速させている。
いましがた会ったばかりのリッピの幻影が、
俺の脳内と股間を刺激する。
全身に熱い血流が駆け巡っているのを意識の片隅で感じた。
も、もう出る・・・
っぐうぅぅう・・・!!!
発射した熱いものと一緒に、思いがけず大きな声が出てしまった。
まだ沸点から下降線を辿らない体と思考を持て余しつつ、
マスターベーションの余韻にひたるのもつかの間、
「そこで何してますか?」
遠慮さの欠片もない、
確信めいた威圧的な声が背後から飛んだ。
暗闇の中、気づけば自分の後方一帯から明るい光が広がっていた。
足元には自分の影すらできている。
ウソだろう。
・・・職質だ。終わった。
【完】
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