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作家オーディション〜第1関門突破せよ!〜

一般企業はマナー講習等新人育成セクションがあるが音楽業界、とりわけクリエイターは専属、フリー共にその様な機関はなく、社会的な一般常識に欠けた人材が希に存在する。ただ一つの才能に突出したが為、稀に何かしらの一般常識的な欠陥がある事は、これまでの偉大なごく一部の芸術家たちを例に取ると良く分かる。ネガティブな意味でなく。脳の生い立ち〜ストレスフリーマインド状態からの才能の開花といったイメージだろうか。

現代またはこれからの世界での芸術家としてクリエイターの立ち回り、相手のビジネススロットをいかに圧迫させないか、という気配りが少なからず楽曲採用の際のポイントを占める。専属の場合はマネジメントがそのケアを行うが今回は「フリーの作家」また「作家マネジメントからクライアントへ」という立場からSNS等の簡易的かつフレンドリーなメールクライアントでなく一般的な所謂Eメールの使い方をまとめてみた。そして「作家オーディションの際のメールの書き方」の注意点としてもご参照下さい。

HTMLメールは送らない:

HTMLを使用したメールは情報はデータ量の(若干の)多さから受信側にとって少し厄介である。もちろんデータ量からPCシステムを圧迫しない、というユーザーにとっては、ただの1通のHTMLメールは何の問題もないかもしれない。しかし膨大な量のメールを溜め込んでいくにつれ、データを圧迫する。そして常にテキストメールを受信し閲覧する側からすると、いきなりフォントや色の違うメールを放り込まれると少し戸惑う。そのメールの読み取りやメールデータのアーカイブは1通あたりの時間にしてごく僅かであるが、時間の切迫した現在のエンターテイメントのプロダクト進行中において僅かな時間のロスもストレスになり得る。特別な場合やプレゼンスの場合を除き控えるのがベターだ。随分前の事だがHTMLメールで意味不明に巨大なフォントでメールを送付してきた新人クリエイターがいた。本人はいたって真面目な青年だったが、その印象とは裏腹にメールの第一印象は少し怖かった。しかし制作するdemoはものすごく繊細なもので、そのギャプに面食らった記憶がある。

添付しない:

このご時世、やはり添付へのウイルスを心配してしまう。そして添付によるメールクライアントのデータ圧迫も心配である。スマホでメールを確認する場合もあるので添付は出来れば避け、ウイルススキャンのあるwebアップローダーや自身のサーバーにFTPにてアップロードしたURL=テキスト情報をメールに貼り付けるのがスマートだ。補足だがスマホのメールクライアントに送付されたURLからデータをDLする場合、使用するブラウザによりDL不可の場合があるが、クリエイターとしてはDL可能なアプリを入れておきたい。スマホの場合、メールクライアントに添付でいいんじゃないの?と思われがちだが、受信者に選択肢を与える、という観点からURLテキスト送付の方がやはり相手の都合が良い。もちろん、先方から「添付してください」と指示のある前ではこの限りでない。

メール返信:

必ず返信には元メールを残す。続けて送信した場合は送付メールを続けて履歴に残す。私の使用しているmac mailはスレッド別に表示出来るものの、その別れたスレッドを別々に確認する作業が厄介だ。ひとつのメールに収まっていると何かと都合が良い。ソートもしやすい。楽曲管理の場面ではリマインドメールの確認作業が頻繁に行われる。上述した意識のあるクリエイターはとても助かる。コンペで採用される楽曲の殆どがストック曲の為、制作したデモの利用開発がスムーズに行くと採用数も自然と増えて行く。新人クリエイターを見る際の指針のひとつでもあり、きちんと出来てない場合はつっこみたくなるポイントである。その様なクリエイターは、無論、楽曲の利用開発、ストック提出に対する意識が低いのは言うまでもない。

挨拶:

2重敬語など丁寧すぎて訳のわからない文面になっている場合がある。丁寧なのは好感が持てるが...。

署名:

オートインサートを使用してる方のリマインドメール下部が署名が繰り返し表示されてて大変な事になっている。署名のテンプレートを何種類か用意し、その都度使い分ける等気配りがあると、この人仕事できるな?というイメージで好感が持てる。また署名の情報量が多すぎる場合に上記だと少し萎えてしまう。

「?」を使わない:

ビジネスメールではマナーの良し悪しの価値観が分かれる点だが個人的には疑問系で文章を送られるとあまりイメージが良くないので「〜ご検討、宜しくお願い致します。」という言い切りの形の方が良い。またオーダー内容が「〜はいかがですか?」と雰囲気を聞いてくる様な曖昧なメールも困る。直接のコミュニケーションでは勿論、少しやんわりした表現はありだが、メールでは1回または2回くらいでスケジュール、タスクの内容を完結する様な問い合わせ内容、丁寧かつシンプルなテキストに留意するのがベストである。

番外編(電話1):

オーディションに「電話での直接のお問い合わせはご遠慮下さい」と記載があるものが多い。オーディション担当は応募者のリストをアーカイブし、優秀な人材をなるべく漏らさない努力を行なっている。電話で連絡すると個別のデータをフォーマットに落とし込む作業が必要である。要するに面倒臭いのである。応募する際は、才能を正当に評価してもらいたい場合は、先方指定のフォーマットで手間を取らせない思いやりが必要である。結果、クリエイターの門戸も大きく開かれる。

番外編(電話2):

上述した発注データ、受注データ、プロダクト内容を整然アーカイブする事がエンタテイメントでは他のビジネス同様とても大事なタスクであり、いかに効率よくデータを補完出来るかという事に終始尽力している。また日本のエンタテイメントではインディーズでは特に契約書がなく口約束によるものも希に在る。メールのテキストデータはソースから送付日、送付先IPも把握できる為、当然契約内容として法的なエビデンスになり得る。電話にてギャラ交渉や契約内容、締切等を連絡してくるクライアントはクリエイターとして自己保身の為、注意して接したい所である。また電話連絡が慣習化している「仕事が出来る」的な自負のある方は更に要注意である。その方のアーカイブ能力は低いので周りの負担がとても多くなる。コミュニケーション能力が高い場合もあるが、情報量の更に増加するであろうこれからのエンタテイメントビジネス的には避けたい選択肢となる人材である。

打ち解けた間柄、同僚:

目上の方から下への情報伝達、同僚、または打ち解けた関係の間柄であれば当然、気軽的で簡易的でフレンドリーなものでも当然良い。

会社アカウント:

プライバシー、コンプライアンスの議論、違法、合法等のディスカッションはさておき、会社用アカウントメールはweb担当、管理者は簡単に閲覧する事が出来る。弊社アカウントの場合メールアドレスを新規に発行する場合はメール内容をシェアする事の事前確認はかならず行なっている。随分前だが、とある会社を退職してからも在籍していた会社のアカウントをそのまま使い続け、会社への悪口メールが筒抜けになっていた人の話を思い出した。事前確認がなかったのだなと(笑)そしてネットテクノロジーの進化により電話、メール等の通信内容が悲しいかな技術的には全て閲覧可能である、という事は覚えておいた方が良い。作家の守秘義務の重要性に関してはまた近日中にコラムに記す事にする。

最後に:

オーディションの際はメールの書き方、資料送付の方法を見てみると作家のメンタリティー、やる気、音楽に対する想い、そして表現力が良く分かる。丁寧に、と想って手書きならそれはそれでいい。しかしその熱意が時に相手の迷惑になる事もある。そして、そこで貰ったデータの印象がほぼ実際の作家の印象のままである。逆に言うと、メールでのアプローチの仕方にまで気を配れるクリエイターは作品に対してもある程度の気配りが出来る。

作曲家として、芸術家の立場を守る者の意見としては、通常の一般社会の様に、作家と作家マネジメント、作家とメーカーや音楽出版社に上下関係は存在しないと思うが、やはり一緒に仕事をしたいのは常識のある人。音楽と言えどビジネスなので時に良い楽曲をクリエイトするセンスよりも重視されるのでは?とも思う。音楽をユーザーに届ける作業と同様、決して押し付けであってはいけない。クライアントやユーザーの環境に合わせて最適なデータをプロバイドする必要がある。

クライアントにより相手に都合の良いメールクライアントに合わせる事は必修であるが、個人的なメールクライアントはLINEが圧倒的に増えてきた。Skype、Discord等チャット系クライアントにも変わるもので、メールとチャットのPC使いでは、共に同じアプリに同居し、なおかつ前述のチャット系アプリより見やすく、使いやすい。アプリの雰囲気で自然とフレンドリーな雰囲気を構築しているので前述した堅苦しいマナーも省略出来る。グローバルな視野をお持ちの方は各国で流行しているチャットクライアントやアプリを調べ使用してみるとその国の文化が分かって面白いかもしれない。ひとまず日本人はLINEとTwitterが大好きだ。

いつか、というか既にメールに関する今回のポストも時代錯誤、かもだが、新たなコミュニケーションアプリ、メールクライアント等が到来した際にも、やはり、ユーザーやクライアントの環境に合わせて最適なデータやフィーリングをプロバイドするコミュニケーションはきっとマストである。

*写真は「SIGMA 30mm F1.4」レンズ使用。単焦点は「ボケ感」が最高。あと「F1.4」の圧倒的明度。遅い時間のスタジオ撮影でのマストアイテムになりつつあります。一方、接写メインになるので演者へのストレスを考えより短時間撮影のスケジューリングを考慮する必要があります。

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