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卵巣嚢腫手術記録⑤術後2日目

朝、上体を起こそうとするとまだ肩が痛い。昨日よりはマシなようだけれど。
これで明日本当に退院できるのだろうか?

ネットで卵巣嚢腫の腹腔鏡手術について調べてみると、入院日数が私より1日長い。
執刀数日本一の病院なので、いい加減ではないだろうが。
お金の心配さえいらなければもう1日入院していた方が身体的には良さそうだなと思った。


この頃の楽しみはもっぱらご飯だった。薄味でも、暖かい汁物は身体に染みて心地よい。
ただひとつ、難点もあるのだけれど。
胃に重さが加わると、お腹が欠落したような感覚が強まり、立った時に姿勢をうまく保持できない。
食べた後は自分で部屋から出て下膳するのだが、部屋のドアの前で気合をいれ、上体がグラグラするのを必死に耐えて行かねばならない。
腹部が安定せず、足もガニ股になって歩いていたので、側から見たらチンピラのようだった。

ご飯以外の時間はとにかく暇だった。
家から積読状態だった本数冊と資格試験のテキストも持ってきていて、最近時間を取れていなかった分、入院中に進めるのを楽しみにしていたのに。
頭にまだ靄のかかった感覚が残っていたのだ。だから今やっても頭に入ってこないだろうと断念することにした。


この日は手術後初の診察もあり、エコーと傷口を確認してもらった。
先生に診てもらえるとやはり安心する。
手術の時に撮ったお腹の中の写真を見せてもらったが、どこが何か説明を受けてもイマイチわからなかった。

診察の後は看護師さんから退院時と退院後の生活について説明があった。
活動制限などはほぼ無いが、腹筋などのお腹に負荷のかかる運動は避けなきゃいけないそうだ。入院前にダイエットに火がつき、結果もでてきたところだったので、これはちょっと悔しい。腹筋以外の筋トレと有酸素運動をがんばるしかあるまい。
お風呂は感染症対策で1番風呂のみにしてほしいと言われた。傷口が感染するとぐちゅぐちゅになったりして、再入院することもあるらしい。
ただ、自分の今の生活に大きく影響を与えそうなものはなかったからホッとした。

病室に戻ると、職員さんから入院の概算の料金を伝えられた。
手続き系が苦手で、少し損をしても放っておいてしまうタイプだが、今回は限度額認定証を出しておいて本当に良かった。
これがなければ今頃途方に暮れていただろう。

これまで、ガスによる痛みが辛かったが、その痛みが少しマシになると、傷口の痛みが気になってきた。
痛みと痒みでついつい触りそうになるが、出血したら恐ろしいのでグッと堪える。
寝てる間気付かぬうちに痒いところを掻いて、朝起きると見知らぬ傷ができているタイプの人間なので、寝る前は何重にも布を重ねてなるべく手が届かないようにした。

乾燥してきたからか、夜に咳が出た。横隔膜が上手く動かせないので、普段ほど力強く息を吐き出せない。
違和感が続くので、咳が長引いてしまう。
今風邪やコロナにかかったら、肺炎になりやすいかもしれない。これは結構怖かった。
以前見たドキュメンタリーで、なにかの疾患を抱えて免疫の弱い人が"風邪でも大変なことになるから"と、入念に手洗いうがいをしていたのを思い出した。
当時も見ていて"大変そうだなぁ"と思ったけど、同じ経験をしないとわからないものだなとつくづく思った。この時感じたものでさえ、全く一緒ではないだろうが。

私にとって入院生活は"無知の知"を思い知らされるものだった。

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