「生産性のない人たちの支援は後回しだ」とかいうスーパーむかつく思想との戦い方

どうも。31歳という、世間的に言えば産み盛り・育て盛りの年齢でありながら未婚子無しなので日本の少子化対策になんら貢献していない、ついでにいえば収入が低く納税額は微々たるもの故東京都の発展にもたぶんほとんど寄与していない、軍国的な意味においての“生産性”が著しく低い東京都民のライター、小池です。

自民党の杉田水脈議員(衆議院比例中国ブロック)の発言・思想が大変話題になっているようです。話題になったきっかけは、雑誌「新潮45」への寄稿文において、「LGBT支援に税金を投入するべきではない。なぜなら彼らは生産性が低い存在だから」という主張を繰り広げたこと。杉田議員の極端な発言は今に始まったことではないのですが、これまでにない燃え方をしているのは、「生産性」という強烈なワードをぶちこんできたことが原因かもしれません。

杉田議員自身は「全文読んでから批判してください。話の主旨はあくまで『税金をそこに使うべきではない』ということなんですから」とFacebookやツイッターで発言していますが、一部だけ読もうが全文読もうが、酷い内容であることに変わりはありません。彼女はネット番組「日いづる国より」でも同様の主張を述べており、「同性愛の子どもは、そうでない子どもに比べて6倍自殺率が高い」というデータを他者から示されたときのことを“失笑”混じりに話すなど、にわかには信じがたい態度を四方八方で繰り広げているのが現状です。たぶんこれからもそれを続けるのでしょう。

ただ私はここで、彼女の批判を続ける気はありません。

なぜなら、彼女の言っていることはあまりに無知に基づいており、私ごときにはどこからどう手をつけていいかわからないからです。政治政策としての穴の批判は、そのジャンルのプロに任せたいと思います。

またそうでなくとも、彼女のような人は「変わらない」と個人的には思っています。というのも、選挙に強い(生き残る)政治家というのはかなりの確率で「変わらない」政治家だし、杉田議員のような人は「変わらないこと」自体がもはやブランディングであり商売になっていると思うからです。

政治方面のライティング仕事を多少なりともしてきた人間としての実感ですが、ある種の「変わらない」政治家は強いです。常に同じことを言い続け、やり続け、ホイホイアップデートしない人の方が、「ブレてない」「初志貫徹してる」「やっていることがわかりやすい」という好印象を稼ぎやすい。だからファンもつくし、そのファンが離れていかないということになりやすいのです(もちろん、良い意味で「ブレない」タイプの政治家もいます。先日の西日本豪雨の際、的確な采配で注目された岡山県総社市の片岡聡一市長のような政治家のことは心から応援したい)。

(7/26追記:↑の文章、杉田水脈がまるで小選挙区制の選挙に強いかのように読める文章になってしまっていたことに気づきました。彼女は小選挙区で当選したことはありません。最初の第46回衆院選では小選挙区敗退、比例復活での当選です。第47回衆院選も落選、第48回衆院選は比例での当選をしており、「小選挙区では勝てていないがしぶとく生き残る政治家」と言った方が正確です。ただ、彼女が自民党の公認をとれているのは、やはりこの悪い意味での「ブレなさ」のおかげである気がします。固定ファンが多いのは確かなので)

そもそも人間には、「言うこと・やることが変わらない人」についていくのが好きだという傾向があるのだと思います。どんなに勉強していない人にも、「この人はいつもこう言っている」ということだけはわかる。そして、自分が信望している人が「変わらない」ことに安心し、自分もまた変わらなくていいのだと安心し、その安心を与えてくれる「変わらない」人のことをさらに愛していく、というループに入ります。これはたぶん一種の幼児性なんでしょう。母親に、いつまでも同じ母親像でいてほしいと思う気持ちと一緒です。

「変わろうとしないリーダーと変わりたくないフォロワー」の組み合わせは黄金タッグなので、「不完全でも変化を続けていこう」組は、生半可な戦いでは勝てません。SNSで批判したところで、彼らの土台を突き崩すことはできないだろうと私は思っています。

かといって、無視できるかといったらもちろん無理ぽです。

彼女の主張するもろもろのヤバ思想……「生産性が低い人々に対しての支援はうんと後回しでいい」「日本には差別なんてないと思う」「異性愛に基づく男女の結婚が普通、そうでないものは異常」などなどを、私は根こそぎ許しがたく思います。完膚なきまでに叩き潰してやる、とテニミュばりに宣言したい気持ち。

で、これを読んでくださっている人もそうだと思うんです。

なので私は、これを読んでくださっている方に向けて「彼女を直接殴りにいく」以外の「杉田水脈の倒し方」を提唱したいと思います。

書いていて改めて思いましたが、簡単な方法ではありません。私もまったくもってこれを完璧にはできていないので、あんまり好きな言い方ではないですが「自戒を込めて」というやつです。

私たちは、彼女の意見を間違っていると感じる大人です。だから、きっちり彼女の意見を否定しながら生きていこうではないですか。

たとえばこういうこと。

・目の前で人がセクシュアルマイノリティや障がい者を揶揄していたら、可能な限りそれを食い止める、あるいは最低限笑いにノらない。
・ちょっとした女性蔑視—「セクハラにあう側にも問題はある」なんて発言に同調しない。
・職場での、ポジションや年齢に依拠したささいな差別(お茶汲みをするのは特定の部署の女性だけ、新入社員の男性のことは多少理不尽な理由でも使いっ走りにしていいなど)を見逃さず、うるさく思われても問題提起する。
・子どものいない夫婦に対して「子ども作った方がいいよ」などと軽口でも言ったりしない。
・話し相手の恋愛的パートナーがどんな人かわからない時点では「彼氏/彼女」という言葉を使わない。
・そもそも人に安易に恋愛事情を聞いたりしない。
・「ゲイってこうなんでしょ」「LGBTってことはこうしてほしいんでしょ」と決めつけたりしない。
・近くにいる子どもたちや若い人に向けて、「自分の性のありかたや指向で悩むのはまったくおかしいことじゃない」というメッセージを常に強く発する。
・働けていない人、元気に日々を過ごせていない人に対して「あなたは人間として一人前ではない」という見方を向けない。

……彼女の発言が切り捨てているのはLGBTQだけではありません。「生産性」(どういう意味か知らねーけどよ)が低いと見なされるすべての人たちです。その人たちを、ある種の人たちが「支援不要」と思うのであれば、不要と思う人間以上の数で「支援する」という態度をとらなければ。支援というか、本来は「平等に扱う」ということでしかないんですけどね。

「自分の身の周りで繰り広げられる、薄めた杉田水脈案件」を極力見逃さず対応していく。

それを、今回憤っている人たち全員が徹底的にやったら、それだけでも大きな流れになります。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、でも本当はこれがいちばんキツい戦いだと思う。

だって、「薄めた杉田水脈案件」にはたいていの場合、杉田議員のようなわかりやすい悪役はいないんです。「これからも仲良くしていきたい人がふと漏らした暴力的な言葉」や「仕事上、面倒なことにしたくない場面で繰り広げられているうんと小さな差別」をどうするか、でモヤモヤすることの方が圧倒的に多い。それは、ひとつひとつはうんと小さなことに見えます。でもあたりまえだけど、その集合体こそが「社会」なんですよね。

ほんのちょっとした「んん??」「ウゲッ」が発生したときに「ま、今回はいいか……私だって忙しいし」と思わないでふんばれるかどうか。「これを私はスルーできるが、スルーできずに傷つく人もいるんだ」と思って勇気を出せるかどうかで、未来が変わるのだと思います。私はまだまだ流されがちです。気を引き締め直します。

(もちろん、その気力がないのに無理して戦って傷つき、力つきるようなことはしない方がいいと思います。それだったらSNSを遮断して、好きな映画を見ながら菓子食ってた方がよっぽど「生産的」だと思う)

杉田議員の発言はかなり極端で目立ちますが、同じような言葉は、今も日本中のどこかで、無名のだれかによって発され続けている。そして、杉田議員のツイートで傷ついている人がSNSで多数声をあげているように、心ない言葉に傷ついている人は私たちのすぐ近くに大勢いて、誰にもケアされずにうずくまっている。今回の件で思い出さなければいけないのは、そのことだと思います。

もちろん、私が言ったようなことだけでは、ある種の権力者の社会的息の根を止めることはできません。政治家を退陣させるには選挙で突き落とすしかなく、そのためにはより多くの人が政治に目を向け、投票というアクションで自分の考えを示す必要があります。ただ、20代・30代・40代がろくに選挙に行かない現状では、極端に凝り固まった保守議員を政治の場から追い出すのはガチ不可能です。そこは私たち30前後の「有権者最若手層」が、より危機感をもってとらえていなければならない現実です。

この現状を変えるための、小さな努力を積み重ねていくこと。それを私は、「生産性を上げるための行為」として自らに課したいと思います。


(※7/27追記 改稿した記事がハフィントンポスト日本版にも掲載されました。掲載にあたっては全面的に、媒体カラーに合わせるための編集をしていただいています。どのように変化しているか、何が削除されたのか、ライター志望の方などは見比べてみると面白いと思いますよ)

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小池みき

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