ビートルズIn My Life,くるりIn Your Life

くるりのファーススアルバム「さよならストレンジャー」をはじめて聴いたのは、高校3年の頃だったと思う。2016年だ。

このアルバムは「不器用」とか「葛藤」とか、青年期の未知に対する不満と大人が近づくことへの不安が表現されており、ファーストアルバムにふさわしい。

その後、くるりはメンバー同士で意見の食い違いが多くなり、セカンドアルバム「図鑑」以降、何度もメンバーチェンジを繰り返すようになる。

そして時は流れる。「アンテナ」や「ワールドイズマイン」
さらに、くるりはオーケストラとJpopの融合に成功する。

進化を続けるくるり。
2023年の秋ごろ。僕は相変わらずくるりを聴いている。

新曲「カルフォルニアココナッツ」のPVがアップされていた。
早速チェックしてみた。

そういえばファンファン抜けたんだよな〜。と映像を見ながら思う。

ファンファンはくるりの元トランペットで紅一点メンバーだった。
可愛くて大好きだからショックだ。


カルフォルニアココナッツをいい曲だな〜と思いながら聴いていると「あれ??」と思う。

なんと初期メンバーで演奏されていた!!

何年振りに一緒にやってるんだろう??てか、え???なんで???


話は少し変わって。

僕はさよならストレンジャーをもう全然聴いてない。
シングルカットされた東京すら全然聴いてない。

嫌いではないけど、なんか、、今更って思ってしまう。
聴くと高校生の頃を思い出して恥ずかしいってのもあるけど、
それ以上に心に響いて来ない。


カルフォルニアココナッツが出てすぐに、くるりはアルバム「感覚は道標」をリリース。カルフォルニアココナッツも収録されており、「In Your Life」も入ってる。この曲は今年の夏にリリースされ、かっこよくて何回も聴いた。音楽的な実験を繰り返すくるりがたまに超どストレートのロックナンバーは最高だ。くるりだからこそ作れるのだろう。

In Your Lifeはよく晴れた日に海沿いをドライブしたくなるような爽やかなナンバーだ。

でも、歌詞では、「晴れのち曇り」などの

暗いフレーズがたびたび散りばめられているのだ。


あの場所へ向かえば
あの痺れるような出会いを思い出せるかな
あの頃無くした鍵はどうもこれだった
錆びついたドアを開けて走り出せるかな

くるり「In Your Life」

サビはこうだ。

カントリーロードの日本語訳のような、
「帰りたい、帰れない、カントリーロード」
そんなメッセージがあるのではないか。

そして、この「In Your  Life」というタイトルも何か引っかかる。

というのも、くるりは曲のタイトルをオマージュすることが多いからだ。
例えば、「ワンダーフォーゲル」「ワールズエンドスーパーノヴァ」など
それぞれOasisの「Wonderwall」「Champang Supernova」とそっくりだ。

この「In Your Life」は明らかなビートルズ「In My Life」に対する
くるりがバンドを続けていく中でたどり着いた一つの答えのような歌詞になっているのではないだろうか。と僕は考えている。

まずはビートルズの歌詞に注目しよう。

In My Lifeの歌詞は英語だ。僕なりに和訳をすると

あの場所をまた思い出すだろう。
変わってしまったとこもあるんだけど。
永遠はいつも最善ではないから
変わる場所もあるし変わらない場所もあるんだ。
どの場所にも恋人や友達と過ごした思い出があって
死んだヤツもいるし元気でやってるヤツもいて
オレはみんなを愛してるんだ。

懐かしいあいつらのことは好きだけど
君より愛しい人は他にいない
君を愛するようになってから
あの頃の思い出が意味を失っていくんだ。
出会えた人たちへの愛は消えないけども
時々立ち止まって思い出してみるんだ。
君をもっと愛せるように。

ビートルズ「In My Life」

ジョンレノンのおそらく実体験であろう歌詞。
恋人(Lovers)、友達(Friends)、君(You)
この3種類のジョンの出会った人たちが出てくる。

「君」は今ジョンと一緒にいる人のことだろう。

出会えた人たちのことは一生忘れないけれども、、とあるが、
この歌詞は逆説的にジョンの中で昔の彼らのことが「ありふれた」ことになっていることを表しているのではないか。
少し寂しい表現になってしまうが、忘れない人たちというカテゴリー感を感じてしまうのは僕だけだろうか。

名作映画「スタンドバイミー」では死体探しへの旅に出かけたが、機関車に轢かれそうになったり、ヒルに噛まれたり、誰にも言えない悩みを打ち明けてしまったり、、それはもう忘れられない一生の思い出だ。

スタンドバイミーのラストはもはやホラーとも言える。
そのくらいゾクッとするほどリアルだ。
わすれられない旅を共にした彼らその後、もっと絆を深めるのではなく中学進学を機になぜか疎遠になっていくのだ。

「もう会うことはないだろうけど、あの時のような友達は一生できないだろう。」

スタンドバイミーのラストとIn My Lifeのように、どちらにも共通する
忘れられないんだけど、、というニュアンス。

じゃあ、懐かしい彼らに会いに行けばいいじゃん!!とかそういう野暮な話ではないことはみんなわかってくれるだろう。


くるりに話題を戻そう。

さよならストレンジャーは彼らの青春そのものであろう。

そんなくるりの初期メンバーが集まった今、彼らは一体どこを指しているのだろうか。

色々考えたけど、でも正直彼らの本心はわからない。
もちろん、みんな歳をとって折り合いがなんとなくついたとか、それもあるだろうが、やはりそれだけでもないだろう。

黒人R&BシンガーPink Sweatが「At My Worst」という曲にて、「僕が一番調子が悪い時も愛してくれるかい?」というメッセージが込められている。
お互いの調子がいい時はうまくいって当たり前だけど、最低の時も愛してくれるのが本当の愛だと彼は言っていた。

調子のいい時をくるりのIn Your Lifeに重ねると「晴れの日のドライブ」だ。
でも実際の歌詞は曇りのドライブだ。

「曇ってても、まあ、進んでいけばええし、雨降ってもええんちゃう?」

さよならストレンジャーの頃のくるりなら、誰のせいで雨の中走ることになったのか?みたいなことでケンカになっていたかもしれない。

ちなみに余談だが、
ビートルズの「In My Life」はアルバム「ラバーソウル」に収録されている。
そして、ラバーソウルには「ノルウェイの森」も入っている。

ちょっと強引ではあるが、くるり「カルフォルニアココナッツ」が「感覚は道標」にあるから、多分ノルウェイの森と対になってる??とか勝手に思っている。

そこも本当のところはくるりに聞いてみないとわからない。


話は大きく変わって、僕には嫌いな言葉がある。
「地元に恩返ししたい」だ。東京出身の人が東京に住み続けることをこんなふうには言わないから、この言葉をピンときてない人もいると思う。

では、これをいつ使うかというと、地方出身の人が就活でUターンした時に、面接や志望動機の決め台詞で必ずと言っていいほどこれを言うのだ。

僕はこれが大嫌いだ。そもそも意味がわからない。
これが大嫌いなので、僕は最近就活で地元の役場の最終面接の時、このフレーズを言ってやらなかった。するとまんまと落とされた。

ただ生まれて育ったことがいつの間に損得勘定になってしまったのか。
地方で育つということは「負債」を抱えるということなのだろうか。

本当に嫌いだ。

でも、やっぱり言わなかったことを誇りに思う。

恩返し死ね!!!!!自分のこと考えてりゃいいんだよ!!!!
自分勝手になりやがれ!!!!!!
親孝行する暇あったら自分の服でも買いやがれ!!!!!


まあ、この辺にしておこう。このくらいなら炎上しないだろう。


そういえば、昨日友達が僕の何にもない地元に遊びにきた。

襟裳の春は何もない春です〜♪とかのレベルじゃない森進一もびっくりの田舎だ。そう。

それは鳥取県だ。

何年か住んでいるので、多少は行き慣れた店もある。
でも今回の旅ではそこへ行かずに成り行きに任せると、大変なことになった。まず「いい田舎のおっちゃん」像を意識しすぎた接客に出会い、方言の雨というよりも雹のようなものに撃たれた。

そして、はじめて入った店で生焼けのメンチカツタルタルソース添えを食べて、信じられないくらい胸焼けした。僕たちはこの後、濃い緑茶で頑張って薄めようとしたが、ほとんど効果はなかった。メンチカツにタルタルってどんなセンスしてるんだよ。成長期の中学生でも胸焼けするだろう。そしておしゃれな雑貨屋で、おしゃれなおばさんに話しかけられて、相手に失礼は許されないような雰囲気があって仕事の営業のようにしゃべってしまった。さらに胸焼けした。

結局、僕らはスタバに行って、くら寿司に行って、スタバに行った。

チェーンありがとう。うますぎる。
くら寿司でぐびぐび芋焼酎を飲んだ。そしてスタバの接客の人が信じられないような笑顔でコーヒーをくれたので、「そんなに頑張らないで」と心配になったが、すごく嬉しかった。鳥取は砂丘があるのなら、オアシスはチェーン店だとその時思った。


正直、もてなすことがあんまりできなかったとも思う。

前に友達と遊んでいたときのことを思い出した。

僕が帰るのに友達が駅まで送ってくれることになっていた。そのときもう一人車でピックアップすることになっていて、来るのを待っていた。しかし、その子が汽車の時間が迫っているのなかなか現れず、おまけにゆっくりと歩いて車に乗り込んできた。

結局電車に乗れずに、僕はめちゃめちゃ機嫌を損ねてしまった。
今では怒ったことを少し後悔している。

鳥取に来てくれた彼も正直怒っていいレベルだったのだが、何にも言わずに楽しんでくれた。


最低の時でも機嫌よくいてくれる彼はやっぱりかっこいいし素敵だと思った。
そういう人に僕もなりたいが、これがなかなか難しい。

というか、最初からはうまくできないから、ぼちぼちやっていくことにした。


僕も鳥取のことが嫌いになったわけではないんだ。

それでも
街を作るコアの部分。そこにずっと留まる人たち。帰ってくる人たち。
何かずっと同じものが受け継がれている気がしている。

別にそれはいいことでも悪いことでもない。

でも、これ以上この街のことは好きになることはないだろう。

学生時代に何度も聴いていた大好きだったアルバム。
聴き直すアルバムもあるし、もう二度と聴かないアルバムもある。


鳥取はいつになっても僕のさよならストレンジャーだった。

みんなはそんなアルバムありますか??






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