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小学校高学年における「読書カード」がうまく作用しないワケ〜「仕掛学」と「ナッジ」の違いについて〜

「読書カード」のよくある話

低学年がやっきになって、
本を借りる読書週間の「読書カード」。
(冊数多ければ良いか問題は置いておきましょう)
しかし、この読書カード、
「高学年」になると
取り組みが微妙になりませんか?
一部の本好きの子のみに効果を
発揮していませんか?

それには明確な理由があります。
「ナッジ」
である読書カードを、
「仕掛学」
として
用いているからです。

仕掛学とナッジの違いとは?

仕掛学とは?
仕掛学は、
物理的な仕掛けやデザイン
を通じて
人々の行動を変えるアプローチです。
この考え方は、
「オルタナティビズム」とも呼ばれ、
特定の人々に対して物理的な介入を行い、
行動を変えることを
目的としています。

ナッジとは?
一方で、ナッジは
人々の選択を概念的に導く方法です。
これは「パターナリズム」と関連し、
社会全体の向上を目指す
戦略とされています。
ナッジでは、
情報の提示方法を工夫することで、
人々がより良い選択をするように促します。

違いの要点

  • 対象範囲ナッジは一般的に社会全体を対象にするのに対し、仕掛学特定の問題や人々を対象にします。

  • 介入方法ナッジは情報提示や選択肢の提供による概念的介入を行うのに対し、仕掛学物理的な介入を行います。

ややこしいですが、
いったんさておき、
冒頭に述べた「読書カード」の話へ移ります。

読書習慣を促進するアプローチの例

仕掛学のアプローチ(学校現場でよく見られる)

・ 図書コーナーの物理的な改善
仕掛学の観点から読書習慣を
促進するためには、
教室内に魅力的な読書スペースを
設置することが挙げられます。
例えば、教室の一角に色とりどりの
クッションや快適な座席

手に取りやすい本棚を設けることで、
子どもたちが自然とその場所で
読書をするようになります。
この物理的な空間の変化が、
子どもたちの読書への関心を引き出し、
習慣化を促します。

ナッジのアプローチ(仕掛学的思考でやってしまいがち)

・読書カードの配付
ナッジを用いたアプローチでは、
子どもたちの選択や行動を概念的に導きます。
読んだ本の数やページ数を記録させる
読書カードは本来こちらのアプローチになります。
子どもたちが自分と他の子供たちの読書量を
視覚的に確認できるようにすることで、
読書を続けるモチベーションを
高めることができます。
選択肢を増やすのではなく、
「読みたい」という概念にアプローチをかけます。

つまり、読書カードを仕掛学として、
「物理的に渡しただけ」では
効果を上げることは困難となります。
また、読むように強制するイメージを
持たせてしまう渡し方をするのは
もってのほかです。

私の記事で繰り返しお伝えしている、
以下の大事な3つの要素を満たすことが
「ナッジ」を成立させる上で重要になります。

透明性を確保: カードの目的や方法を子どもに明確にし、開かれた形で実施する。
生徒の自主性と利益を尊重: 教師や学校の目的ではなく、子どもの学びを中心にする。
選択の自由を維持: 子どもが自由に選択できる環境を整え、それを尊重しながら良い選択を促進する。

①カードが何のために作られているかを伝えている
②教師や学校のためでなく、子どもたちの財産となるような言葉、姿勢で渡すことができている
③自由意思を認める

これに加え、
「図書室に行く回数を増やす」
「読み聞かせをする」
「ビブリオバトルをする」などの
読みたくなるバイアスが発生する
先生方の色を加えることで効果があがります。
「掃除ナッジ」の記事を読んでいただければ、
同じやり方でも効果があがります。

「仕掛学」と「ナッジ」の違いを理解すると、様々な指導に役立ちます

仕掛学は、
物理的な環境を変えることで
子どもたちの行動を促し、
ナッジは、
情報提示や進捗の可視化など、
より概念的なアプローチで
子どもたちの選択を導きます。

どちらの方法も、適切に使用すれば
効果的な行動変容の手段となり得るので、
ぜひその違いを生かしていただければと思います。

ではまた次の記事で。


参照 
松村直宏:仕掛学〜問題解決につながるアイデアのつくり方〜東洋経済新報社 (2023/11/22)


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