長髪教諭@ナッジの人

【行動経済学×学校教育】でナッジする人。 児童自立支援施設の中学校に勤務し、今は小学校…

長髪教諭@ナッジの人

【行動経済学×学校教育】でナッジする人。 児童自立支援施設の中学校に勤務し、今は小学校で研究を続けています。そうじ指導やあいさつ指導などの実践をnoteに書いています。ご相談はコメントやDMにて。

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  • 生徒指導ナッジ

    行動経済学を学んだ私が、生徒指導への転用を提案をするシリーズ。「人間は不合理な生き物であるという認識を出発点とし、一種の恵みへと変換する」視点で理論から実践まで幅広く紹介します。

  • 授業ナッジ

    行動経済学を学んだ私が、授業への転用を提案をするシリーズ。「人間は不合理な生き物であるという認識を出発点とし、一種の恵みへと変換する」視点で理論から実践まで幅広く紹介します。

  • 長髪教諭の頭の中

    長髪教諭の個人的な考えです。適当にお読みください。

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「ナッジで変わる掃除の時間」:教師が強制しない指導法/小学校/清掃

もう悩まない「掃除指導」をナッジ5月、新学期のわくわくも落ち着き、子どもたちは クラスにもすっかり慣れてきました。 そんなある日、彼らの掃除の様子を見ていると、 友だちとふざけ合いながら掃除に取り組む姿が 目につき始めました。 過去いろいろな掃除指導を試しましたが、 いまだピンとくるものがありませんでした。 そこで「ナッジ」の手法を掃除指導に 取り入れることにしました。 2つのことを決め、継続するだけ です。 ナッジ①子どもたちによる目的の共有5月の朝、子どもたちに、 「掃

    • 学校で使えるナッジ理論のデフォルト【行動経済学×学校教育】

      こんにちは。 今回の記事では、普段なかなか詳細にナッジ理論を解説できないので、詳しくご紹介していきたいと思います。 今回は、私がよく使うナッジ【デフォルト】について解説を行いたいと思います。 【デフォルト】の有名な成功例 臓器提供の【デフォルト】 自分から臓器提供を申し出るタイプのデフォルト 臓器を提供したい人は自分から「提供します」と言わなければなりません。 日本やドイツではこの方式です。ここでは、臓器を提供したい人は、自ら提供する臓器を選択する必要があります。

      • 授業ナッジ(自由進度)への不安を考える【行動経済学×学校教育】

        授業ナッジへの不安 授業ナッジは「1つの観と5つの手立て」で構成されます。 基本的に、勉強を強いることはありません。 ナッジは、個人の行動・選択の自由を阻害せず、かつ「より良い結果」に導く考え(リバタリアンパターナリズム)のもとに活用されます。 という不安の声が聞こえてくるかと思います。そうじナッジやあいさつナッジとは異なり、「失敗にも価値がある」などと悠長なことは言ってられませんね。自由進度学習でも、よく似た不安の声を聞くことがあります。 目の前の1問を捨てる覚悟

        • 授業を受けない子がいなくなるベイビーステップ【行動経済学×学校教育】

          授業を受けない子、なんとかしたい授業を受けない子には、いろいろなパターンがあると思います。自分の世界に入ってしまう子、学力が低くやりたがらない子、やろうとするけれど分からなくて拗ねてしまう子、いわゆるヤンキーで学習に取り組もうとしない子、さまざまだと思います。 上の記事にあるように、授業を受けることが難しい子達が集まった特殊な学校で、私は授業をすることになりました。彼らはそう長く施設にいることはできません。1年ほどすると、元の場所へと戻っていきます。彼らとの出逢いと別れを繰

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          学校の清掃指導、もう悩まないそうじナッジ【行動経済学×学校教育】

          そうじ指導を通して考える教師像そうじを静かに集中してできる学級は良いクラス? 「給食を完食できるクラスは良いクラスである」と同様に「そうじを静かに集中してできるクラスは良いクラス」という教育界の常識を、教師であれば誰もが一度は耳にしたことがあるかと思います。 そしてこのような「謎の常識」に囚われ、教師は「子供はこうあるべき」という指導に陥り、教師の言うことを聞く子どもが「良い子ども」として評価されるようになります。 そもそも、子どもは教師の評価の道具ではない そもそも

          学校の清掃指導、もう悩まないそうじナッジ【行動経済学×学校教育】

          そうじ当番の掲示物、何がいいの?【そうじナッジ】

          新学期に頭を悩ます、そうじ当番の掲示物新学期が始まる直前の4月、我々教師はできるだけ学級運営がスムーズにいくよう、思いを張り巡らせながら準備をしている時期です。 本記事は、そのうちの1つ「そうじ当番の掲示物」に対する考えを明らかにしたいと思います。「1人1役で掲示物をつくるのか」「どれくらいの周期で掃除場所を交代にすべきなのか」など、そうじ指導に悩まれている方にもぜひ読んでいただけたらと思います。 そうじナッジで掲示物を考える結論、掲示物は「趣味」であり、何だってよいです

          そうじ当番の掲示物、何がいいの?【そうじナッジ】

          授業ナッジ⑥7月の様子(3種類の振り返り)【行動経済学×学校教育】

          本記事は、授業ナッジ第6話になります。 前回の記事(第5話)⇩ 授業の「振り返り」が建前になっていない?昨年度「振り返り」に関するアンケートを取りました。 児童自立支援施設に併設された我が校の子どもたちは 「先生のために書いている」 「すでに理解している内容をなぜ書く必要があるのか」 という非常に素直な回答をくれました。 学んだことを「振り返る」活動が、 子どもたちにとって 「有益である」「成績の向上に役立つ」と 実感できるような内容の作成が必要だと考えました。 いわゆ

          授業ナッジ⑥7月の様子(3種類の振り返り)【行動経済学×学校教育】

          授業ナッジ⑤6月の様子(単元計画表)【行動経済学×学校教育】

          本記事は、授業ナッジ第5話になります。 前回の記事(第4話)⇩ 6月の授業の様子6月上旬頃には、板書に示してある3つの力(下記画像)が生徒に浸透した結果、生徒の授業態度に大きな変容が見られました。 課題の内容や評価基準について、教師に尋ねる生徒はほとんどいなくなり、教師に尋ねる生徒がいると「計画表(下記画像)に書いてあるよ」と即座に声をかけたり、丁寧に説明をしたりする仲間が現れました。寮で次回のワークシートの「予習」をしたり、授業前に仲間と課題についての考えを交流したり、

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          授業ナッジ④5月の子ども(ワークシート)【行動経済学×学校教育】

          本記事は、授業ナッジ第4話になります。 前回の記事(第3話)⇩ ワークシートの構成 めあて 本時の「めあて」は、単元計画表の「めあて」と同様のものを記載しました。「単元計画」「板書」と併せて本時の「めあて」を3通り示すことで、「今日の授業で何ができることを目指しているのか」を明確にしました。 大問1(基本問題) 「基本問題」はワークシート1の問題であり、教師が口頭で確認していく基本的な説明や発問、さらには「課題問題」を解答するために必要な知識に関する内容を設定します

          授業ナッジ④5月の子ども(ワークシート)【行動経済学×学校教育】

          授業ナッジ③4月の子ども(オリエンテーション・板書の実際)【行動経済学×学校教育】

          本記事は、授業ナッジ第3話になります。 前回の記事(第2話)⇩ 授業のオリエンテーション 4月、初めの授業で、何のために自分たちが学習するのか、授業の目的を明確にし、共有化を図る授業のオリエンテーションを行います。学校という枠から離れ、自身が大人になった時の社会を連想しやすいよう、経団連が作成した「20XX in Society5.0〜デジタルで創る、私たちの未来〜」の動画を視聴させます。 この動画は、デジタル革新(DX)が私たちの生活にもたらす日々の変化とワクワクするよ

          授業ナッジ③4月の子ども(オリエンテーション・板書の実際)【行動経済学×学校教育】

          授業ナッジ②授業を受けなかった生徒が変わる「3つの力」【行動経済学×学校教育】

          授業ナッジ第2話になります。第1話はこちらになります↓ なぜ学校で勉強をするの?このように生徒から尋ねられた場合、みなさんは何と答えるでしょうか? 「将来やりたい仕事に就けるようにするため」 「豊かに生きるため」 私は今までこのような回答が精一杯でした。 そして、多くの生徒の正直な胸の内は「受験のため」ではないでしょうか。将来の夢がある生徒は明確な目的があるかもしれませんが、ほとんどの生徒はまだまだ模索中なわけです。 曖昧で抽象的な未来のために、粘り強く学習すること

          授業ナッジ②授業を受けなかった生徒が変わる「3つの力」【行動経済学×学校教育】

          授業ナッジ①一斉授業をやめたワケ【行動経済学×学校教育】

          「授業」のナッジについて、細かな仕組みやマインドを書きたいという欲を抑えながら、全5話でまとめていきたいと思います。 児童自立支援施設での衝撃「児童自立支援施設」という施設をご存知でしょうか? 教師生活7年目、この児童自立支援施設内にある本校という場所に、異動を命じられました。 そこで、今まで上手くいっていた教師生活が全て打ち砕かれることになりました。 プライベートの話ができない、授業のみでの勝負の世界。素行の壁、学力の壁、認知機能の壁、生育歴の壁など、数えきれないほど

          授業ナッジ①一斉授業をやめたワケ【行動経済学×学校教育】

          学校でよく見かけるナッジ3選【学校教育×行動経済学】

          学校でよく見かけるナッジの一つに「選択肢のアーキテクチャ」と呼ばれるものがあります。選択肢のアーキテクチャとは、人々の行動を望ましい方へ導くための環境設計のことです。 その中でも有名な実践を3つご紹介したいと思います。そして、ナッジを身近に感じていただけたら幸いです。 ◾️選択肢のアーキテクチャ①トイレのスリッパ置き場 トイレのスリッパを置いて欲しい場所に、シールで囲いを作るというものです。実際、トイレのスリッパをどこに置いても自由ですが、「ここに置いた方がいいな」と思

          学校でよく見かけるナッジ3選【学校教育×行動経済学】

          学校教育におけるナッジとその作り方⑤【行動経済学×教育】

          前回の記事 ■ナッジを作ってみる①シートの使い方 「ブースト」とは、人々の認知的能力をそのものを向上させ、より良い意思決定を下すための力を育てる、いわばナッジの手助けとなるアプローチです。ダイエットでたとえると、①正しい食事知識を学習すること②ダイエット成功者の話を聞くことなどがいわゆるブーストになります。 詳細はリンクの記事をご覧ください↓ ②シートへの記入例 問題から順に記入していくことで、学級経営や生徒指導に関する困りごとに対して、効果的なナッジを施すことが可

          学校教育におけるナッジとその作り方⑤【行動経済学×教育】

          学校教育におけるナッジとその作り方④【行動経済学×学校教育】

          ボトルネック(悪影響)を見つけるボトルネックとは、いわゆる「瓶の首の細い部分」です。 言い換えると「流れの勢いが弱まる部分」になります。 子どもたちの気になる行動や活動には、 おそらくこの「ボトルネック」がどこかに存在しています。 例えば、先生方が子どもの活動を見守る中で、子ども一人ひとりが異なる背景や特性をもっているため、時には進行にブレーキがかかる「ボトルネック」が生じます。 これらのボトルネックは、行動経済学の視点から分析すると、様々な心理的特性に基づいていると理

          学校教育におけるナッジとその作り方④【行動経済学×学校教育】

          学校教育におけるナッジとその作り方③【行動経済学×教育】

          「教室ナッジ」が作られるまでナッジを作る手順を説明します。 そうじナッジで簡単に例えてみましょう。 ①子どもたちの行動を観察する ・見てないところでサボったり、どうしてもやらなかったりする子どもがいる。 ・いろいろなそうじ指導法を試すも、しっくりこない。 ②行動経済学で分析する ・そうじをするべきだとはわかっている。 ・友達とじゃれあうという目先の利益が優先される。 ③どんなナッジがよいか、考える。 ・自制心を活性化する社会規範ナッジ (そうじ終わりの自己評価の共有)

          学校教育におけるナッジとその作り方③【行動経済学×教育】