筋トレの思わぬ恩恵
1ヶ月前から、パーソナルトレーニングに通い始めた。週に1時間、トレーナーが付きっきりのみっちり筋トレ。
今年35歳、出産を2回経て、毎日PC作業している体には、めちゃくちゃきつい。
何せ、はじめの筋トレメニューのカウントゴールが、100回なのだ。トレーニング初日、私はトレーナーのAさん(女性)の顔を見て「マジですか?」と尋ねた。
筋トレ中は汗ダラダラ、泣きそうな顔で、何か産まれますか?というくらいのうめき声を出しながら、自らの体を追い込む。
少しでもポジションがずれると、Aさんは見逃さない。すっと姿勢を修正し、「ここ」と静かに注意を促す。
その位置戻しだけで、まあびっくり。効く部位がガラッと変わる。そしてさらに負荷がかかって、つらくてつらくてたまらない筋トレになる。いわゆる"パンプ"している状態だ。
Aさんの快活な声が響く。
「(鬼だ……)」
言葉にならず、ひたすら私はうめいている。
パーソナルトレーニングを始めたきっかけは、ママ友の誘いだった。Aさんも彼女のママ友で声をかけてくれたのだ。
ベトナムに来てから車中心の生活になり、運動の必要性を感じるようになった。
実際に、いくつか運動の習い事にも参加してみた。テニス、ピラティス、ズンバ、ヨガ。しかしどれも続かず、そっとフェードアウトしていた。
そもそも働いているから、駐妻向けの日中の時間が合わないというのもある。けれど何より、他の人と自分を比べがちな私は集団での運動に楽しさを見出せなかった。
かといって、1人でのウォーキングや筋トレも続かない。これも楽しくないのだ。寂しい、誰かに褒めてほしい。ややこしい性格である。
そこに来たパーソナルトレーニングのお話。これは新たな選択肢かも、と飛び込んだ。
……で、1ヶ月続けた結果。どうも私にはパーソナルトレーニングが合っているようだ。
正しい姿勢をキープできるのはもちろん、つらい追い込みから逃げられない状況がいい。
大人になると、困難を避けて通る術をどんどん身につけていく。帳尻合わせの仕方も、なんか頑張ってる風の見せ方もうまくなっていく。
そこに立ちはだかるAさんという鬼。逃げることは許されない。
筋トレ中は頭の中は真っ白で、Aさんのカウントに集中している。
これもいい。いつも原稿の納期と今日の献立、読みたい本のことに埋め尽くされている私の脳みそが、その瞬間だけ空っぽになるのだ。
ダイエット効果が出ているのかはわからないし、そもそも今回のパーソナルトレーニングにはそれを求めていない。
生活に運動習慣を組み込むこと。今のところ、この目標は順調に達成できている。
正直、筋トレに行く前は逃げ出したくなる(だって鬼がいるんだもん)。
でも、あの"脳みそ空っぽ"の時間は今の私にとって何よりのリフレッシュになっている。すべての役割から解き放たれる瞬間なのだ。
翌日からの数日間は信じられない筋肉痛だけど、仕事と家事のやる気が湧いてくるから不思議だ。
自分自身に体で向き合う時間。これからも続けてみようと思う。
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