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お気に入りの愛の表現、言葉


小説や映画に出てくるお気に入りの愛の言葉。

「愛してる」や「好きだ」という言葉以外で表される愛情表現や愛する人を形容する言葉など。

愛は、この世に存在する。きっと、在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である。 

太宰治「思案の敗北」

今朝、私は戦争で消滅したかもしれない街から電車に乗ってここへ来た。戦争で死んでいたかもしれない男から切符を買ったの。すべて、あなたが救ったのよ。あなたが普通を望んだって、私はお断りよ。あなたが普通じゃないから、世界はこんなにも美しい。

「イミテーションゲーム」モルテンティルドゥム

好きだという言葉がなくても言葉の節々から愛が伝わってくる表現。

サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。ともに生きよう。会いに行くよ

「もののけ姫」

新しい愛の形。一緒に暮らすんじゃなくて、自分と相手がそれぞれあるべき場所で共に生きる。

甘酸っぱいフルーツみたいな声

「カラフル」森絵都

中学生の主人公が好きな女の子の声について形容する一節。彼にはこの女の子の声が弾けるようなフレッシュな声に聞こえるんだろうな

大丈夫だ。お前を乗せて坂道のぼるって、決めたんだ。

「耳をすませば」

聖司が雫を丘まで連れて行くシーン

あの綺麗な景色を雫に見せたいと思うことこそがこの世で最も尊い感情

call me by your name, and I'll call you by mine
君の名前で僕を呼んで 僕の名前で君を呼ぶ

「君の名前で僕を呼んで」ルカグァダニーノ
オリバーとエリオ

君は僕で、僕は君という一体感。
二人だけの秘密の言語、おまじない。
エリオ、オリバー、オリバー、エリオ。

「この歌、好きなんですか」
「好きって言うか、俺の気持ちだよ」

そう言いながら港くんは何かに気づいたらしく、急に恥ずかしそうな顔をする。まさかそんな表情が見られるとは思わなかったから、自然と顔がほころんでしまう。後でこの曲の歌詞をきちんと確認してみよう。

「アスクミーホワイ」

「アスクミーホワイ」という恋愛小説の終盤の一節。"この歌"とはビートルズの「アスクミーホワイ」という曲。

「愛してるよ、君は僕が知りたい事を、話してくれるから。そして間違いないのは、僕が悲しい気分になるなんて絶対にない、って事なんだ。」

という歌詞で、間接的に愛を伝える表現。

小説中にタイトルである「アスクミーホワイ」という歌は出てこなくて、この一節でタイトルの伏線回収。アスクミーホワイを知らなかったから、最初は"この歌"って何?と気づかなかった。歌を聞いてみてやっとわかる登場人物の気持ち。

「キャンディー100万個分愛してる」
「私もチョコ100万個分」

「ロイヤルセブンティーン」

シンプルで可愛らしくて、愛が伝わる表現

この寂しさやストレスはかわいがってお供にする。一生ついてきたっていいよ。

「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ

喪失感ですら愛おしい

「おれは、 100万回も......。」 と 言いかけてねこは「そばにいてもいいかい。」 と白いねこにたずねました。白いねこは、 「ええ。」 と言いました。ねこは、 白いねこのそばに、 いつまでもいました。

100万回生きたねこ

私は紙川さんのこともちゃんと好きだ。この紙の、一センチ四方の中に五十個名前を書きたいくらい。

「この世は二人組ではできあがらない」山崎ナオコーラ

可愛い表現。紙に名前をたくさん書いちゃうくらいの愛

出会ってから急速に近づいて、敬語を使わなくなり、ざっくばらんな言葉で会話し始めたとき、妻との間が縮まったように感じられて嬉しかった。でも、関係が遠くなるのもまた嬉しい。淡いのも濃いのも近いのも遠いのも、すべての関係が光っている。遠くても、関係さえあればいい。離れよう、離れようとする動きが、明るい線を描いていく。

「美しい距離」山崎ナオコーラ

死を介して遠くなってしまう相手との距離すらポジティブに捉える美しい愛の表現。光の言葉。

恋。ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手につかなくなり、身悶えしたくなるような心の状態。成就すれば、天にものぼる気持ちになる。

「舟を編む」三浦しをん

実際に恋してみて初めて書くことができる恋の意味。

別れたけどさ、今でも一緒に生きてると思ってるよ

「大豆田とわ子と3人の元夫」坂本裕二

離婚した元夫の言葉。
物理的に離れてくらしていても、すぐそこにいる。例えば、苺を食べながら、彼女も好きだったなと思い出すこと。「一緒に生きている」ということ。

矛盾してるけど、ずっと愛するだろう

「マリッジ・ストーリー」ノア・バームバッグ

妻が離婚する夫に向けて書いた手紙の一文。
離婚して、関係が破綻したとしても
2人の間にあったものがなくなるわけではない。

私の好きはそのへんにゴロゴロしてるっていうか寝っ転がってて。で、ちょっとだけ頑張るときってあるでしょ。住所をまっすぐ書かなきゃいけない時とか、エスカレーターの下りに乗る時とか、バスを乗り間違えないようにする時とか、白い服着てナポリタン食べる時。そういう時にね、その人がいつもちょっといるの。いて、エプロンかけてくれるの。そしたら、ちょっと頑張れる。そういう好きだってことを忘れるっくらいの好き。変かな。

「カルテット」坂本裕二

これが強がりであったとしても、燃え上がるような好きじゃなくて、こんなお守りのような好きもいい。

あなたといると、2つの気持ちが混ざります。
楽しいは、切ない。嬉しいは、寂しい。
優しいは、冷たい。愛しいは、虚しい。
愛しくて、愛しくて、虚しくなります。

語りかけても、触っても、そこには何もない。
じゃあ、僕は一体何からあなたを奪えばいいんですか?

「カルテット」坂本裕二

世界中が君の敵に回っても僕は君の味方だってことさ

Banana Fish

王道だけど、これが愛
それもここでは友への愛情表現なのがまたいい

6年間 君がいなかったら 私は息ができなかった
ありがとう これからもよろしく
だいご

「違国日記」ヤマシタトモコ

中高の同級生へ宛てた手紙。
彼女にとってどれほど大切な存在か、その切実さが伝わる。

私は君が消えたら悲しいし
君が生まれたことに祝福しきれない
ご両親にも感謝だ
でも死ぬのはいつだっていいよ

「売れっ子漫画家×うつ病漫画家」

私は愛する人にここまで寛容になれるだろうか
苦しむ人に向けてこの言葉を言えるだろうか

とぎすまされた刃の美しい
そのきっさきによく似た そなたの横顔

「もののけ姫」

こんなに美しい表現はない
「研ぎ澄まされた刃のきっさき」はきっと鋭くて、輝いていて、強いんだろう。そんな美しいものに似ているなんて、こんな形容の仕方すごすぎる

初めてのルーブルはなんでことはなかったわ
私だけのモナリザもうとっくに出会ってたから

「One last Kiss」宇多田ヒカル

初めて行く世界最高の美術館に対して、世界で最も希少で美しいものが集まるところに対して「なんてことはなかった」なんて言える?

さらに、どの角度から見ても目が合うと言われているように美術館の「モナリザ」は皆んなのもの。

「私だけのモナリザ」私も出会いたい。そして、ルーブルをなんてことはないと思いたい。

君は私に、より善い人になりたいと思わせてくれる。

「恋愛小説家」

好きな人のために変わりたい、その人に見合う人になりたいという優しい気持ち

私のこの胸の炎は、あなたが点火したのですから、あなたが消して行って下さい。

太宰治「斜陽」

消して行ってください。いい表現。

私のひと。私の虹。マイ、チャイルド。にくいひと。ずるいひと。

太宰治「斜陽」

ストレートな愛情表現

恋、と書いたら、あと、書けなくなった

太宰治「斜陽」

恋しい気持ちを表現する一文。
この甘酸っぱい気持ちをこんなに上手く表現できるなんてすごい

もし君が100歳まで生きるなら、 僕は君より1日少なく生きたいな。

「くまのプーさん」

君がいない日を過ごさなくて済むから。
友達に対する愛情表現。

愛するドロレス
君は「家」に似ている。明かりが灯ってて幸せな家族が暮らしてる。

「グリーンブック」

ドロレスがあたたかい人で、彼が彼女を愛していると伝わってくる手紙の書き出し。
幸せな家族が暮らしているような家に似ている人。包容力があって、強い人なんだろうな。

私と・・・一緒にいてくれてありがとう
私に・・・生き方を教えてくれてありがとう
…私に マフラーを巻いてくれて ありがとう

「進撃の巨人」

あなたは無力なんかではなく、私は助けられたんだよとエレンを慰めるミカサのセリフ。

宇宙人みたいな人だ 何よりも赤い金魚が怖いだなんて

岡本真帆

岡本真帆さんはストレートに愛を表現する短歌が多いけど、その中でもこれが好き。
自分とは違ったり、変だなって思うことが好きの始まりだったりする。

きみはぼくのとなりでねむっている
しゃつがめくれておへそがみえている
ねむってるのではなくてしんでるのだったら
どんなにうれしいだろう

「きみ」谷川俊太郎

恋する少年の詩の中の一部。
こんな思いをして振り回されるくらいなら、死んでいたほうがマシ。二人で幸せになれないのなら死んだ方がマシ。それでも好き。

私の好きはその人が笑っててくれること。笑っててくれたら、あとはもう何でもいい。

大豆田とわ子と三人の元夫

坂本裕二はいつも新しい愛の形を提示してくれる。孤独に寄り添う言葉。
誰か一人を選ぶのではなく、その人が笑ってくれることがとわ子にとっての「好き」。好きはひとつじゃない。

「あたしを何だと思っているの? 怖いものなんか死ぬほどあるわよ」
「僕にもある。じゃあ二人で怖がろう」

イエスマン

「こんなに苦しむのなら出会わなければよかった」
「僕は明日死んでもいい、君を知らずに百年生きるくらいなら」

「ポカホンタス」

これほど熱い愛に出会いたい

・・・
あなたの名前は必ずくる美しくて新しいもの

違国日記

名前は母親が子供に作る最初の詩というけれど本当だね。愛を前にするとみんな詩人になる。

みりちゃんのこと好きだーって思うとにさ
すっごいいろんなこと考えるよ
いちばん大っきい約束あたしたちだけなんでできないんだろとか
おそろい着たいけどビミョーに趣味合わないよなとか
会いたいなーすきだな
「すき」だけじゃ言葉足んないな
全然足んないな
でも結局「好きだ」以外に何にも言葉がない

違国日記

・・・・・・朝・・・いたいだけここにいていい
・・・わたしがいやになったら二度と戻ってこなくてもいいし
何年も・・・なんなら一生わたしに連絡しなくて構わない
でもいつでもここに戻ってきて暮らして構わないし
一生ここにいても構わない
わたしはいつでも不機嫌だし部屋は散らかっていて
食事のメニューはつまらないけど
それでもあなたが幸せでいてくれればいい
って言うと幸せでいなきゃいけないみたいだね
ときどき不幸せでもいいよ

違国日記

なんだかんだ言っても
つまりは単純に君のことが好きなのさ

「セロリ」山崎まさよし

夏がだめだったりセロリが好きだったり
価値観が違っても結局単純に君のことが好き。

なんだかんだ色々挙げてみたけど、結局全ての愛情を抽象化したものが「好き」なんだ。
この世に「好き」以上の言葉はない。愛はとは結局、「好き」以外では語り尽くせないのかも

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