見出し画像

願いよ届け

しちがつなのか、といえばこの曲を真っ先に思い出す。


曲に込められた想いや、紡ぎ出される歌詞の世界に素直に入り込めていた20代の私。

切ない気持ちや胸の痛みは歳を重ねるごとにだんだん薄れ、掌の砂が風にさらわれるように心の感度は少しずつ失われていく。

母親になり、なんとなく感性の錆び始めた大人の仲間入りをした私は忙しい毎日に追われ、七夕も数ある年間行事のうちのただのひとつになってしまっていた。


娘が通っていた保育園では、四季の行事をとても大切にしていた。

毎年この時期お迎えに行くと、ニコニコしながら先生からそれぞれこどもたちが作った七夕のお飾りを渡される。

金曜の仕事帰り、保育園から週末の大荷物を抱えて、さらにこのうえ笹まで持ち帰るのかと思ったら、正直なところ少しげんなりした。

車に乗り込み、ぞんざいに助手席に積まれた荷物にふと目をやると、そこにたどたどしい文字で書かれた短冊が見えた。


『おりひめ ひこぼし あえますように』


その頃クラスの女児たちの関心事といえば、プリキュアになりたいとかケーキ屋さんになりたいといった幼い夢ばかりで、娘の願い事だってどうせその類だろうとタカをくくっていた私は、その文字に衝撃を受けた。


今夜、たくさんの笹飾りの中に、こんなに純粋な気持ちで放たれた願い事が幾つあるだろうか。


どうか、どうか、この夢が叶いますように。

そっと心の中で手を合わせた。なにかに。誰かに。

サポートというかたちの愛が嬉しいです。素直に受け取って、大切なひとや届けたい気持ちのために、循環させてもらいますね。読んでくださったあなたに、幸ありますよう。