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地中美術館のモネ:睡蓮

瀬戸内海の直島という島に地中美術館という地面の中に作られた美術館があります。
海外からも観光で来館する人も多いという人気の美術館です。

私がこちらを訪れたのは確か2008年か2009年頃でした。
安藤忠雄氏が建築した地面の中に作られた美術館というものに興味があったのと、島全体がアートと評される直島自体に興味を持ったからでした。

ベネッセが手掛ける美術館とホテルが一体となったベネッセミュージアムという場所にもとても興味をそそられたので、大学時代の友人を誘って1泊2日で直島への旅を計画したのでした。

地中美術館では、アメリカのジェームズタレルという作家の光を使ったアート作品。
そしてこちらもアメリカのウォルターデマリアという作家の巨大なオブジェのようなものを設置した空間。
それからフランスのクロードモネの睡蓮という3人の作家の作品が恒久展示されてありました。

美術館巡りが趣味だった私は学生時代にたくさん美術館巡りをしてきましたが、好きな作家としてモネを気に留めたことはなく、日本人に特に人気のある印象派の画家という認識に過ぎませんでした。
ですがこの美術館で初めてモネの作品が持つ力というものをひしひしと感じ改めてモネの人間性を感じることが出来たのでした。

この美術館ではモネの睡蓮の作品の部屋に入る際は靴を脱ぐことになっています。

無音の状態で静謐な空気に包まれた部屋に入り、自然の柔らかい光に照らされた睡蓮を目の前に見ていると、いつの間にかモネの心の深淵に入り込んだような錯覚を覚えていました。

すべてを癒し包み込むような空間。
そのそこはかとない温かな心に慰められ、気が付いたら涙を流している自分がいました。

絵画作品を見て涙を流したことなんて40年近く生きてきてこの1度きりです。

当時の私はまだ20代半ば頃で、人生経験も浅く特にこれといった深刻な悩みもなかった社会人1〜2年目でした。
それでもそれまで生きてきた中で感じてきた想いや葛藤、痛みなどが全て無条件で許されたような、そんな感覚を覚えた尊い体験でした。

この唯一無二の体験ができたのはモネの作品が持つパワーだけではなく、その作品と鑑賞者にとって最も相応しい空間、状態を作り上げた安藤忠雄氏の建築に依るところが大きいと思います。

モネの作品を鑑賞するためだけに作り出された設計。
私たちを取り巻く建築物が私たちに与える影響の大きさについても気付かされた出来事でした。

長い人生において心の機微に触れるものに出会えることはとても幸せなことだと思います。
そのためには自分が好奇心を持ち続け、行動するということが一番大事なことのように思えます。

それこそが人生の醍醐味なのではないかという気さえします。

だから私も今は実際に行動するには物理的に難しい状況にあってもこうしてnoteで文章を綴り、人とのつながりというものをずっと大切にしていきたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。  
                
                                2023.10.31

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