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【読書】心に響くスピーチの極意、ここにあり

今回ご紹介したい本は、私が婚活に悩んでいた時期に見つけた一冊です。
タイトルから真っ先に「結婚に関する話だ!」と思い込んで
ぱっと手にとったのですが(とびつきやすいタイプなのです)、
残念ながら結婚に関するお話ではありませんでした(笑)。
ただ、この作品に出てくる”職業”について興味を持ったので、
婚活のことは一旦置いておいて、そのまま購入して読んでみたのです。


原田マハ『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫)


心にすとんを入り込んでくる言葉を紡ぐお仕事、スピーチライター。
この小説を読むまでは、そんな職業があるなんて知りませんでした。

二ノ宮こと葉は、幸運なことに幼馴染の結婚披露宴にて
久遠久美(くおんくみ)に出会い、
そして彼女が作成を手伝ったスピーチを聞いて感銘を受けます。
こと葉は、そのまま久美のもとでスピーチライターの勉強を始めます。

結婚式で久美が手掛けたスピーチが読まれるシーンでは、
思わずじーんと来てしまいました。
小説の中では、音声がなく、読書の読むスピードと想像力で
各登場人物が話しているけれど、
プロが創り出すスピーチは、その音声がなくとも臨場感を持って
人の心を動かすことができるのだと実感しました。

個人的には、久美に弟子入りをすることになったこと葉が
彼女の仕事場へ行ったときの描写がとても気に入っています。
それは、「仕事場の中に、何冊もの分厚い本が置かれている。
図書室以外でこんなに本がたくさんあるのを見たことがない」という内容。
久美のスピーチづくりにかける熱意と努力が描かれていて、
この描写だけで仕事への活力を貰えた気がしました。

彼女たちが創るスピーチには、具体的な体験談や例が必ずあって、
心から想っていることを語っているように感じるものばかりです。
つい眠気を誘うようなスピーチを聴いている時のことを思い返すと、
どれも上っ面だけの”端的すぎる”話だったように思います。
ふと思い返してみましたが、学校の頃の校長先生の話なんかは、
思い出しても特に内容を憶えていません(笑)。
「夏休みを有意義に過ごすように」といった内容だったとは思うのですが、
本当に校長先生がそう話していたかは全く記憶がありません。
もしあの頃に「校長先生の夏休み失敗談」なんかの話があったら、
もしかしたら子供心に「へぇー。先生でも子供の頃はそんなこと
してたんだなぁ」と意外に思って、覚えていたのかもしれません。

なかなか普段人前でスピーチをするという機会に出会うことは
ありませんが、もし私が結婚式等でスピーチを頼まれたら、
間違いなくこの小説をバイブル本にして書き上げようと思います。

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