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月めくり 獅子舞演ず 秋の夜に 隠してやるの それも解るか

「月めくりのように細かい雲が多いわ」私が満月間近の月を見ながら付き合って間もない彼にそう言ったが、彼はあまり興味を示さない。「月めくり?なんだよそれ、たまたま発生した雲に隠れているだけだ」とそっけない返事。私は一瞬むかついたが、彼がこういう性格であることを承知の上で付き合っているから驚きはしない。

そんな彼に対して私は基本的に不満はない。だが一つだけ気になる点があった。それは週に1・2回どうしてもデートに来てくれない日があったからだ。
「悪い、今日はダメな日なんだごめん」と、そういう日はメッセージが返ってくる。私はまさかとは思ったが、「別にいるの?」という疑問を持ってしまう。だってあまりにも定期的だから。普段あっているととてもそんな雰囲気ではないし、私はこの人のことがますます好き。だけどなぜ週に1・2度会えないのか。
一度問いただしたことがある。すると「ごめん、もちろんそんなんじゃない。こう、説明できないんだけど、うーん、ごめん」としか言わない。だから私の心の奥ではモヤモヤが湧き出てしまうのだ。

「まさかとは思うけど、でも」私は彼に内緒で、そのデートできない日に後をつけるという暴挙に出た。「怒られるかもしれないけど、やっぱ気になる」
彼の後をわからないようにつけていく。彼はあるホールに向かっていた。そこは大阪府河内長野市の日野という完全な田舎。周りは田んぼしかないようなところだ。「いったい、なんでこんなところに?」私は疑問に思ったが、彼がホールに入っていくのを見た。ホールの中に入ると彼にバレそうだから外から様子を見る。

10分くらいしただろうか、突然太鼓や笛が聞こえて何か始まった。「え、何、何しているの?私は気になったが、外から出は何をしているのかわからない。気になって私は中に入る。大きな扉があった。この中で彼が何かをしている。私は扉を静かに少しだけ空けた。すると彼は下半身だけしか見えないが、獅子舞の中に入っている。獅子舞は非常に激しい動きをしていた。

 それを見た私はすぐにドアを閉めた。「まさか!あの人獅子舞の練習していたんだ」私は静かにホールを後にする。この獅子舞はこの地域の伝統芸能の日野地区獅子舞である。私は彼の新しい一面を見た。

「そうか、そうだったのね」帰れの不可解な行動に納得した私、完成した獅子舞を見るのを楽しみに、今日は一人で帰る。ふと空を見上げると中秋の名月、満月が空を照らしていた。いずれ彼が演じる獅子舞のことを考えていると、ふと短歌が思いつく。 

月めくり 獅子舞演ず 秋の夜に 隠してやるの それも解るか
(つきめくり ししまいえんず あきのよに かくしてやるの それもわかるか)

今日は、こちら小牧幸助さんのシロクマ文芸部という企画に参加しました。

こちらの本日の記事、秋分の日に公園で何ができる!∞コンルームさんの名イベント金剛中央公園で前回の様子をご紹介をモチーフに創作しています。

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