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【読書記録】湖の女たち

「湖の女たち」吉田修一

黒か白かでいえば、完全に黒。

闇が深い。
時々、覗き込む吉田さんの作品の中にある闇に、ふと、やはりどういう人なんだろう、という想像をしてしまう。作品と本人は果たして別物だろうか。別物だなという感覚と、一緒なのかもしれないという安心と、作品ごとに見せる顔が180度違う。

琵琶湖近くの、もみじ園という介護施設で100歳を越える老人が亡くなった。呼吸器が停止したのは、誤作動か、それとも故意か…。殺人か事故か。
もみじ園で働く佳代という介護士。事件を扱う刑事。事件を追う記者。3人の視点で描かれる。

事件は製薬会社の陰謀、政治家の陰謀、果ては第二次世界大戦の負の遺産か…というところまで展開するも、最後まで読んだ感想というのは「人間の闇は深い」だった。不意に覗き込んでしまった闇の深さと、湖の美しさとの対比。

余談だけれど、吉田さんは長崎のご出身で、おそらく東京在住だと思うのだけれど琵琶湖周辺の空気感の出し方に違和感のないこと。
私も琵琶湖周辺に住んだことはないので、確かではないけれど関西弁にも違和感はない。長崎弁、福岡弁、標準語、時には台北、台南…なんだか変幻自在だなあと感心してしまう。

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