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僕の小規模な退職 その22

週に1度この日が来る。
燃えるゴミの日だ。

厳密には燃えるゴミの日は週に2回ある。
我が家は夫婦二人暮らし。
1週間でも、10リットルのゴミ袋が余るほどの量しかゴミが出ない。
少ない時は5リットルで十分なくらいだ。
なので週に1度だけ燃えるゴミ出しの準備をする。

その日の前日は台所のシンクも掃除する。
排水溝ネットのゴミを捨てるついでだ。
東京に居た頃は気温や湿度の関係か、1週間も放置すると物凄い悪臭とヌメリだった。
しかしここは冬の長い雪国。
さすがに1週間放置しても真夏日以外はダメージが少ない。
そこはこの土地の利点だと僕は思う。

シンク回り、排水溝の掃除はもちろん僕の担当だ。
食べ終えた夕飯の食器を洗い終えた後、続けて掃除する。

最近、この日の、このタイミングになると必ず背後から妻の声がする。
「ウタマロ使った?」
匂いを嗅ぎ
「また洗剤つかった?」
いやいや誤解だ。
まだ食器洗いが済んだだけ。
これからシンク回りの掃除だ。
「そう」
と行ってリビングに去っていくウタマロ警察の妻。
ウタマロでシンクを洗っているか見張りに来るのだ。

なぜか妻はシンク回りの掃除にウタマロを勧めてくる。
まだまだ習慣化されていない僕はついつい食器用洗剤で掃除してしまいそうになる。
たしかにウタマロでシンク回りを掃除するとピカピカになるという記事を何度も目にしたことはある。
でもだ。
しかしだ。
台所洗剤で洗ってもヨシッ。という記事も見たことがある。
どちらが正解かは知らない。
どちらも正解なのだろう。
ならどっちを使用しても良いじゃないか。
とは思うが、そんなくだらないことで争うつもりは無い。
ウタマロ警察とは言ったものの台所洗剤を使用しても別に怒られるわけでもない。
小言を言われる訳でもない。
ただのコミュニケ―ションだ。
それは知っている。

でも僕は面白いから妻のことをウタマロ信者と思うことにした。
ウタマロ信者がウタマロをきちんと使用しているかチェックするウタマロ警察になって台所洗剤使用者を取り締まるのだ。
こわい、こわい。

あいにく僕は台所洗剤信者ではない。
なので妻に従う。
たまに忘れることもあるが。
その時は誤魔化すのだ。
「まだ食器洗いが済んだだけ。」と。

44歳。推定無職。ウタマロクリーナー。


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