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マインドフルネスの問題点

マインドフルネスは大きく分けると2つあります。

アメリカ式マインドフルネス仏教的マインドフルネスです。これは私が勝手に名前をつけているだけです。

アメリカ式マインドフルネスはセラピーやストレス解消などが目的とされています。

代表的なものがマサチューセッツ大学でカバットジン博士がプログラムしたMBSR(マインドフルネスストレス低減法)です。


MBSRは慢性的な痛みやストレスを抱える人に向けて開発されました。

取り除くことが難しい痛みに対し、うまく付き合っていくことを学び、人生を豊かにすることが目的です。

MBSRは特別な内容ではなく、マインドフルネスの基本的な理論と実践がベースになっています。そのため、医療分野以外にも広く応用されていると言われています。

日本でも数年前からMBSRの研修や講師養成が行われています。


仏教的マインドフルネスは、日常生活の全てを気づきと観察の対象にします。行住坐臥。

アメリカ式マインドフルネスのように、エクササイズとして捉えるのではなく、日常をマインドフルネスにするのです。生活そのものがマインドフルネス。

歩くときや食べるときはもちろん、話をしているとき、掃除をしているとき、お風呂に入ってるとき、仕事をしているときなど、生活の全てを丁寧に気づきを持って行います。

このような生活を送ることで、執着や囚われから解放され、精神性や人格が高まると言われています。

仏教的マインドフルネスに目的はありません。常にただマインドフルでいることです。

マインドフルネスの発祥は仏教ですから、本来のマインドフルネスはこっちです。

仏教的マインドフルネスでも、アメリカ式マインドフルネスのようなセラピー効果や疼痛緩和の効果は当然あります。

場合によっては仏教的マインドフルネスの方が効果が高いこともあるでしょう。

日本で一般的に広がっているマインドフルネスはアメリカ式の方です。

マインドフルネスをエクササイズやテクニックとして捉えている人が多く、マインドフルネスと名の付いた講座やセミナーで行われているのはほぼ全てアメリカ式です。

MBSRの講師が増えていること。今の日本人の価値観的にアメリカ式の方が需要があること。

この二つの理由から今後、日本で展開されるマインドフルネスはアメリカ式がより増えると考えています。


アメリカ式マインドフルネスと仏教的マインドフルネスは手法的には似ています。と言うよりほぼ同じです。

アメリカ式ではサマタ(一点集中)とヴィパッサナー(観察)を分けて行いますが、仏教式ではサマタとヴィパッサナーを同時に行います。

手法と違い、その価値観や考え方は全然違います。

アメリカ式マインドフルネスは、瞑想や禅のテクニックだけを抽出し体系化したもので、仏教の価値観や考え方は無視します。

西洋人特有の「良いものはとりあえず何でも取り入れよう」みたいなものです。

仏教的マインドフルネスは、仏教の価値観や考え方をベースとした生き方の実践です。

執着や囚われを手放し、人格や精神性をより高め、生活の中にマインドフルネスを取り入れていくのですが、これはアメリカ式マインドフルネスとは相容れません。

アメリカ式マインドフルネスのように「ストレス解消」「痛みを取る」「リラックス」「生産性の向上」といった俗世間の価値観は、仏教に存在しないからです。

同じマインドフルネスでも真逆の両者が同じ世界に成り立つのは、興味深いところではあります。


しかしアメリカ式マインドフルネスには弊害が指摘されています。

それはアメリカ式マインドフルネスを行うことで、執着やエゴがより大きくなる可能性があることです。

実際にアメリカ式マインドフルネスを行うことで、エゴや自己高揚感が大きくなることが様々な研究でわかっています。

理由は簡単です。

アメリカ式マインドフルネスでは自分の優先順位を維持したまま、人生の枠組みを変えずに、表面的な「ストレス解消」や「能力アップ」だけを行うからです。

例えば、悪いことをしてお金儲けをしている人がいたとします。

悪いことをしている自覚があるので、自己嫌悪などのストレスが溜まり、仕事に支障が出てきます。

マインドフルネスを正しく行えば、そのストレスは確実に小さくなるでしょう。そして心が整い明日からまた仕事をすることが出来ます。

しかし本当の意味でストレスをどうにかしたいのであれば、ストレスの元である悪いことを辞めればいいだけです。

でも悪いことした方がお金儲けできる。だから辞めたくない。でもストレスはどうにかしたい・・・

このような生き方の枠組みを変えることなくストレスだけ取り除きたいというのは、精神性が幼く、自己中心的です。

そこには自分の利益しかなく、そんな人間がアメリカ式マインドフルネスに取り組めばエゴが大きくなるのは当然なのです。

このような理由から仏教界からは、アメリカ式マインドフルネスに否定的な意見が多数出ています。


私自身はアメリカ式と仏教式のどちらが良い、悪いという視点で捉えることはしていませんが、大阪マインドフルネス研究所が提供するマインドフルネスのレッスンは、主に仏教的マインドフルネス寄りです。

その場限りのリラックスやストレス解消ではなく、日常の中にマインドフルネスを取り入れ、日常生活の全てを気づきの対象にする。

それが結果的に精神性や人格の向上につながり、生き方が変わり人生も大きく好転するのです。

うつ病を抱えている方、慢性的な痛みを抱えている方、アスリートにメンタルトレーニングを指導するときなどは、アメリカ式マインドフルネスを提供する場合があります。

それでもベースは仏教的マインドフルネスですが。

ちなみに日本人は仏教式マインドフルネスの方が向いているはずなのでは?と考えています。

なぜなら何百年も前から日本人は禅文化、つまり仏教式マインドフルネスを取り入れて過ごしているからです。

内観療法や浄土真宗の身調べはそこから発展したものです。

戦後、アメリカの価値観が大量に入ってきたことで、禅文化が失われつつありますが、それでもまだ日本人の生活に残っている部分はあります。


あなたはアメリカ式と仏教的のどちらのマインドフルネスに取り組みたいですか?

どちらを取り組むにしても正しいプロセスで段階を経て、本気で取り組まないと何も変わりません。

マインドフルネスは一時的なストレス解消や現実逃避ではないからです。

本気の人はぜひマインドフルネスに取り組んでください。

プロフィール
西山 純一 
大阪マインドフルネス研究所
https://www.mindfulness-lab.com/

メンタルトレーナーとして多くのプロアスリートや経営者、アーティスト、医療従事者、教師や心理士、学生やビジネスマンなど幅広い人にマインドフルネスをベースとしたマインドの使い方やメンタルコントロール、食事改善や運動、ダイエットを指導。

指導歴は18年 1000人を優に超える人達に指導してきた。

20代前半でアメリカのパーソナルトレーナー資格を取得して、大手フィットネスクラブや関西のスポーツ強豪大学や高校でスポーツトレーナーとして活動。

同時期に大学で心理学の単位を取り、心理カウンセラーとしての訓練も受ける。専門僧堂や禅寺でも禅や瞑想を学び実践する。

プロアスリートや年商数十億円を超える経営者をクライアントに持ち、うつ病を始めとする精神疾患やガン患者、難病患者のカウンセリングやメンタルケアも行う。

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