ある小学5年生の英検2級体験記、"勉強"しないアプローチ
先月(S-CBTで)受けた英検2級にLucasが合格していたので、最近の様子などをメモしておきたいと思います。
英語育児(おうち英語)育ちのLucasは、スポーツと音楽に夢中。朗らかな性格で、毎日の学校が楽しい。でも「勉強」は好きではなく、体育・音楽・図工のない日は、今ひとつ力が出ない。そんな小学生男子です。
英検2級に向けては、単語・文法・読解は特に対策せず。中学受験塾の宿題にひいひい言いながら、英語は動画視聴+音読をなんとか継続。過去問を使ってスピーキングとライティングの問題を練習して、本番にのぞみました。
小学生は「体育や音楽のように」英語を身につけていくことが可能です。
今回改めて、「勉強」が苦手な子どもほど、英語の取り組み(英語育児/おうち英語)のメリットは大きいと感じています。
英検2級を受けるタイミング
準2級に合格して1年経った小5の秋、改めて準2級の問題を解いてみたところ、特にリーディングで正答率が上がっていました。
細々と続けていた音読練習などが効いたとは思いますが、それ以上に大きいと感じたのは、本人の精神年齢が上がったことでした。集中力も(以前に比べれば)増していました。
準2級のリーディング問題で8〜9割を正答できるようになったとき、次の2級にチャレンジしてみようか、ということになりました。
小学生のリスニングの意外な落とし穴
さて、英検2級の腕試しとして、まずリスニング問題をやりました。
小学生にとってリスニングは一番の得点源で、ラクに取り組める…はずでした。
問題をいくつか解いてみたところ、間違いだらけ。早くも諦めそうになりましたが、本人の様子を観察していると、次のような状態が見えてきました。
1)の聞き逃しについて
音声の冒頭部分には、会話のシチュエーションやパッセージのテーマを把握するために必要な手がかりが詰まっています。
問題と問題の間の無音の間に、気が緩むのか、次の問題の出だしをボンヤリとしか聞けていないようでした。
このため、次の問題の音声が始まったら("Number ~."が聞こえたら)、音に全集中する、ということを徹底したところ、正答率が上がりました。
2)の選択肢読み過ぎ問題について
これは大人でもやりがちですが、選択肢を読むことに気を取られ、音声を聞くことがおろそかになってしまっている状態です。英検の級が上がるにつれて、選択肢の内容も長くなり、このワナにはまりやすいようです。
2級の音声は一度しか流れないため、聞き逃したら挽回できません。
理想は、聞くことを優先しながら、流し読みをすることですが、それができないうちは、選択肢を手で隠して、音声に集中し、最後まで聞き終わってから、選択肢を見るようにしました。そうした方が、パッセージの内容が頭に入り、正答率が上がりました。
そして、音声に集中できるようになってきたところで、次の段階として、あくまで聞くことに集中しながら、同時に選択肢も眺めて、アタリをつける練習をしました。そうすることで、さらに正答率が上がりました。
このように、小学生(幼児さんなら、なおさら)は、分かる力があるのに、思わぬところでつまづいていることもあります。
S-CBTのスピーキングは慣れが必要
2級はS-CBT(=Speaking込みの、Computer Basedの試験)で受けました。S-CBTで一番心配だったのは、吹き込み式のスピーキングパートでした。
旺文社のウェブ模試を使って試したところ、Lucasは、回答を吹き込むときに画面に表示されるタイマーが気になって仕方がありません。
はじめのうちは、変に慌ててしまい、回答半ばで、次の問題に進んでしまう、という状態でした。
この時間制限のある状況に慣れるために、第1問の「パッセージに関する質問」と第2問の「3コマのイラスト説明」について、ウェブ模試を使って繰り返し練習しました。
やっているうちに、「(質問文を)もう一度聞いてやり直す」というボタンが(2回まで)使えることも分かり、コツをつかんでいきました。
スピーキング試験といえども、2級は厳格にパターン化された問題しか出題されないため、パターン練習を試験前に集中してやりました。
机に向かうことなく、寝転びながら口頭で練習できるため、Lucasも嫌がりませんでした。
また、第3問と第4問の「意見問題」については、準2級のときよりも、内容を膨らませる必要があるため、「もうひとことを追加する練習」をしました。
これはそのまま、ライティングの「意見論述」問題の準備にもなりました。
ライティングのアイデア出し
来月から英検ライティング問題が変更されますが、Lucasは変更前に受けたため「要約」問題はまだなく、「意見論述」問題の1問のみでした。
書き方(構成)としては経験済みの準2級と全く同じです。ただ、スピーキング同様に、2級では内容を膨らませる必要があります。
このため、ここでも、(理由を述べてから、具体例を挙げるか、詳しく説明をするかしたあとに)「もうひとこと加える練習」をしました。
ライティングとなると、実際に書くか、タイプして練習しなければならず、「勉強」要素が高くてどうしても億劫です。
Lucasとは、このあと「もうひとこと加える」ためのアイデア出しを口頭でやりました。
それの良いところは?
それの悪いところは?
例えば?
パソコンに向かってタイピングしたり、机に座って鉛筆で書く練習は最小限にしました。塾の宿題でウンザリしているLucasには、この負担を減らすことが最優先でした。
できることなら外注したかった
ここまで読んでいただいたなら、親が全面的に関わって英検の準備をしたという印象になるだろうと思います。
実際には、フォローをしていた母Minnieが業務多忙でなかなか手が回らなかったため、Lucasにライティングとスピーキングを指導してくれる先生を探し回っていました。しかし残念ながら良い外注先は見つかりませんでした。
お金を出せば、理念に共感するスクールはいくつかありました。しかしとにかくハイスペック過ぎるのです。中学受験の勉強をしながら、気軽に利用できるサービスではありませんでした。また、Lucasにとって必要のない内容が多く含まれていました。
外注の代わりに考えたのが、Copilot(Microsoftの生成AIサービス)を利用した作文添削とアイデア出しです。
これについては、以下の記事に綴っています。
英検2級は“高校生レベル”?いいえ、英語自体は“小学生レベル”です
そもそも英検2級の英語はどのくらいのレベルなのでしょう?
日本の学校教育のカリキュラムに基づいた語学試験であるため、対象は高校生であり、想定する教養レベルも高校生の設定です。
しかし、英語そのもののレベルはどうでしょう?
私立中学入試(=小学6年生)における「帰国生英語」の目安は「英検2級から準1級」となっています。また、ある小学生の帰国生向け模試の「英語」は、英検準1級すれすれの水準で偏差値が50となるように調整されているという説明を受けたことがあります。
たしかに、英検は、小学生の英語力をはかるために作られた試験ではなく、級が上がれば上がるほど英語以外の要素が多くなり、この乖離が大きくなります。
帰国生英語の界隈では、英検準1級合格を急ぐよりも、まずは「2級問題の満点」を目指すことが奨励されるのはこのためだと思います。
一方、ある調査によると、英検2級の長文のLexile指数は1000L程度とのことです。これは、おおよそアメリカの小学校のGrade 5相当です。
したがって、ネイティブの国語の読解問題としてみたとき、2級は小学校高学年レベルといっても、大きく外れていないだろうと考えています。
次のステップは
これまでLucasとは、英語を聴く、音読する、物語を読む、そして動画を楽しむことを大事にしてきました。そのような取り組みの先に、英検2級の合格がありました。
Lucasは中学進学まであと1年。英語の取り組み内容は特に変えず、動画視聴と音読を続けていくつもりです。
Leahの2級合格のときは、かなり高得点での合格だったため、すぐに次の準1級を受けることを考えました。Lucasの場合は、2級レベルの文章にじっくり取り組むことがまだまだ必要だと感じています。
また、日本語にしても、英語にしても、より長い文章が読めるようになることが必要だと感じています。これについては、目下取り組み中の、中学受験の国語の勉強がきっと役に立つだろうと期待しています。
お読みくださりありがとうございました。
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