悟りと美輪さんの話

(H) ヨガをやっていて、この人悟ってるって人に会いますか？
(K)これは自分の見方ですけど、思うことはあります。
(A)ヨガに出会うまでは、悟ってる人っていわゆるブッダとか、歴史的な人物とだけだと思っていたんだけど、全然普通に生きている世界にも日常生活をおくっている人がたくさんいて、ひょっとしたら私も？って可能性がある(笑)
(K)そうだと思います。そこに意識的であるか？っていうこと。個人的な考えでは、生きてる人みんなそういう存在なんだと思います。
(A)そうそう、みんなある瞬間はそうなんだと思う。
(H)一回悟ったらずっと悟ってるっていうのではなくて？
(A)そういう高次の悟りもあると思うけど
(K)たとえばブッダとか本当に悟りを教え解く人はそうだと思う。
(H)以前、テレビで美輪明宏が「私、一回悟ったんだけど、何もする気が起こらなくなって、全てが愛おしいし、何の欲も無くなって。つまらなかったから辞めたの。人間欲がないとダメよ」って言っていたのを見て、ある一人の悟った人の感想ってそうなんだって思ったのを覚えています。
(A)悟った人の条件っていうのが書いてある本があって、例えばお腹がすかなくかるとか、欲求がなくなるとか。ある意味、美輪さんもその体験談も本当なのかもしれないね。でも現世で、みんなと喜びを一緒に享受したいと思ったのかもね。
(H)エンターテイメントの人だからね。
(A)30年くらい前に渋谷のライブハウスで美輪さんのことを見たことがあって、この世の人とは思えない雰囲気で、引き込まれたのを覚えている。歌だけど、お芝居を見ているようで場所が一体化する世界観に引き込まれた。いわゆる聖人って人、例えばダライラマみたいな、いかにも聖人としてではなくて、エンターテイメントの世界で出会ったのでびっくりした。
(Y)美輪さんに話が流れたけど八支則の説明はもう終わりですか？
(A)もう終わったね！
(K)もう最終的にはサマーディですから！
(H)ポーズのヨガのイメージが強いけど、土台に八支則があるのがわかってヨガに興味がわきました。

自分を見る、自分を知る

(K)基準が人によって違うから、意図せずに人を傷つけてしまうこともよく起こるから、本当に注意する必要があります。それから、悟るために社会と関わらず、洞窟で瞑想するとかっていうことがヨガではなくて
(H)それは逃げですよね！
(A)逃げではないけど(笑)そういう人も、そういう時期が必要なこともあるけど。
(K)社会から逃げるためにヨガするわけでも、ヨガしていることが特別なわけでもなくて、自分で選んでヨガをしているだけ。
(A)ヨガのためにヨガしているわけではなくて、生きていくために幸せになる方法でしかないからね。
(K)だから、実は何でもいいんです。パンを捏ねるでも、コーヒーを焙煎するのでも。何をしていても瞑想になるんだけど、ヨガは自分の体しかないから他に言い訳できないのが私にはよくって。例えば、料理なら、この素材が悪いとか、この器具がないからとか、条件が揃わないと言い訳できるようなことがヨガにはないから。自分が今何をやっているのか、自分をよく見ることができると思う。
(Y)私はヨガをしていると今世生まれてきた肉体を味わい尽くす感じがする。
(A)自分を細部にわたって見るから、私ってこんな感じなんだって気づくと、肉体を愛おしくなる。
(H)スポーツ選手みたいに、自分の細かい体のパーツに目を向けるってなかなか難しいですよね。
(K)忙しく過ごしていると、なかなか意識を向けることってない。
(H)以前、野口整体を習っていて、その先生に「君の肩はこの辺にあると思っていると思うけど、実際の肩は君が思っているよりもっと下にある」って言われたことがあって、自分の意識上の体のつくりと、実際の体のつくりにかなりズレがある。ズレてるのをまずちゃんとしないとって。
(K)それはみんなあると思う。思い違いをしていることを知らないし、気づかない。
(K)ヨガの教えのおかげでものの見方が変化しました。

解放と浄化のカギは呼吸？！

(Y)今回の特集のテーマは「癒し」にしたんですけど、現代は感情体、心、アストラル体の浄化がますます大切なんじゃないかな？と思っています。何かいつも心がけていることはありますか？

(K)うーん。アーサナの練習をしていると突然、怒る人とかいるんです。マットを床にたたきつけて帰っちゃう人とか、ものすごい号泣する人とか。

アーサナはポーズの練習をするんですけど、呼吸にフォーカスして行うんです。そうすると、ものすごい怒りがわいてきたり、号泣したり、多かれ少なかれ溜めてきた感情、詰まっている感情が解放されて出ることがあります。知らないうちに溜めていて、外に出てくると、その感情があったことに気づくんです。痛みもそうだけど、フォーカスしていないとそれに気づかない。私はヨガを通して感情の浄化はできると思いますし、必要なことだと思います。

心はいつも動くけど、過去の記憶を引きずっていると、それが邪魔をして本当のことを見られなくなっちゃうから、なるべく過去のことは終わらせて、なるべく見たものをそのまま受け取る。自分の見方なしで、損得とか、好き嫌いとか。そうゆうことをしないために感情を整理する必要があるけど、知らないうちに溜め込んでいる。残っている感情が慢性化して、習慣になっていると、「いつもこう考えちゃう」とか、「いつもこうなっちゃう」って繰り返すことがおこる。

(A)アーサナの練習をとおして、呼吸をつかいながら、知らぬ間に勝手に色々なことが整理されているみたいなことがある。長くたずさわっていると、いろんな人に会うけど、ヨガをしていると人が変わっていっていると思う。派手に出る人も、そうでない人も感情の解放がすごくおこっているんだと思う。自分自身の幸福感が間違いなく増える。特別に何かするのではなくて、ただ練習を繰り返していくだけで自然と感じられるっていうのが便利だね。内側をずっと見るっていいんだろうね。

(K)そうですね。やっぱり心はかまってほしいんじゃないですか？子供の時に注目してほしくてくだらないことをしたり、自分が自分自身に関心を向けてあげる必要がある。自分で自分の世話をするって言うと変だけど、見てあげることが必要なんだと思う。

(A)それこそが癒しなんだろうね！自分自身を見るって作業が。

(H)自分にしかできないのか？！

自分を知ることは愛に？！

(A)自分を知ると自分という存在を愛おしく思うし。

(K)自分を愛してるって言うと恥ずかしいけど、自分を愛しているからこそ人を愛せるし、自分をいたわるようにしか、他人もいたわれない。自分にできないことは、人にもできない、別々じゃないと思う。自己満足のわがまま的な愛でなくて、自分をしっかり見るっていう行為が大事ってことです。

(H)本質的なことですね。

(Y)輪廻転生しながらつけてきた魂の癖を自分で認識すること、それをなるべく良いものに変えていくことを人生を通してしているのかな？って思うけど、ヨガをしているとマットの上ですごくその作用を感じる。まず、自分の癖がわからない。肉体を通して言葉じゃなくて、それを知っていくことができるっていうのは、ヨガはすごいシステムだなって、面白いなって思います。自分の癖に気づくと変わりますか？

(K)まず、その癖に気づくこと、見えることがスタートラインですね。それから気をつけるしかなくて。単純に辞めればよいこともあるし、ちょっと別のことを気をつけるとよいこともあって。それが呼吸を意識すればいいことが多いんだけど。感覚、感じ方、アーサナの練習をしていくと、いつもと違った感覚っていうのが時々出てきて。「あれっ」って、ちょっとした変化が導いてくれる。もしかしたらこっちなんじゃないか？こっちじゃなかったんだって理解しながら自分の癖、習慣を手放していく感じかな。全て手放して無になる、とかではなくて。個性もあるし、それぞれの良さを無くすのではなくて、要らないものはなるべくなくしていくっていう作業をしています。

(Y)いいところと、嫌なところっって表裏一体ですね。本人が嫌だなって思っていることでも、私からみたら魅力的だよってこともある。そこで、人を見る仕事をされてますけど、どのように人に向き合っていますか？

後編につづく…

プロフィール

渋谷明子　福岡出身。航空会社勤務後、英会話講師、タイマッサージ店勤務を経て大分市内でタイマッサージとヨガのスタジオ「つむぎ」を2023年までの11年開設していた。現在はご縁のある方に施術やヨガの指導をしている。

平川景子　大分県臼杵市出身。2011年アシュタンガヨガに出会い、大きく感銘を受けて2012年よりインドマイソールにあるKPJAYI(現SYC)へ定期的に通い、Sharath joisのもと実践を深めている。2013年よりヴェーダンタ協会会長Medhasananda Maharajiのもとインド哲学と実践を続けている。KPJAYI Authorized Level2を保持。マイソール大分主催。

http://mysoreoita.jp/