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熟女の恋はセンセーショナルではない

恋愛に年齢制限はあると思いますか?

こちらの記事はちょっと前になりますが、40代50代独身女性の「ファンタジー症候群」と、その「空振り」具合がレポートされています。

2万人以上に取材された恋愛専門コラムニストさんの記事だそうなので、信頼できるレポートのよう。だけど、私が日本にいた時の周りのアラフィフ状況は、このレポートとは違っていました。(対象は独身女性に限らずですが)

彼氏がいる率は7割ほどで、確かに「アラフィフはお年頃」との上記レポートを裏付けるものでしたが……。出会いのきっかけは恋活・婚活アプリではないし、ほとんどの相手は独身男性でした。

独身彼氏持ちのある既婚友人は、泊まりがけの旅行に出かけた現地に雪が降っていました。白銀の中を彼とコテージに向かう自分を「まるでキムヨナみたい!」と思ったそう。

私は韓国ドラマに詳しくないので、どのシーンのことかは知りませんが……。まさに上記記事の「ファンタジー」という命名がぴったりですね。

コラムニストさんの取材対象が「周囲のほとんどが既婚者、恋愛に興味のない独身者のため、相談する人がいない」(原文まま)女性たちである点も、私の周りとは違います。

私も既婚者なので、周りの誰もが大っぴらに恋バナをするわけではありません。でも良妻賢母と信じて3年間つき合っていた友人が、ある発言をきっかけに彼氏持ちとわかって驚いたり。それを聞きつけた別の良妻賢母が「私も実は」と言ってきたり……。 

そんなこんなで、私の周りでは恋愛相談やノロケは普通でした。周りが恋愛環境であれば、類友の引力が働いて「空振り」は減るのでは……。

ニューヨークに来てからは、若い友人Vとも恋バナが定番でした。

Vはアメリカ人との結婚でグリーンカードを取った、キュートなロシア人です。どうやって結婚に漕ぎつけたかというと、折あるごとに彼氏に「結婚しようよ〜」と言い続けたそう。

あなたはできますか? 私は「気持ちを伝えて嫌われるぐらいなら、はっきり言わないほうがいい」というタイプ。 私が無知なだけなのか……?

こんな風に迷う人間がいるから、前回ご紹介したようなオンラインのDating Coach恋愛サポートが必要とされるのでしょうね。

それで考えるのは、恋愛は果たしてネット社会で「より幸せ」なものになったのか?ということ。私が若い頃は、意中の人と連絡を取る手段というと、電話(家電)か手紙しかありませんでした。

そんな不便の中でも、1980年にお見合いと恋愛結婚が半々になって以来、恋愛結婚が優勢を占めてきたのです。ところが現在、独身者に彼氏彼女のいる率は約3割、交際経験のない人の割合は、過去最高だそう。

では、ネット社会以前に比べて、誰かを好きになる感度が劣化したのでしょうか? 

私は違うと思います。恋とは「するものじゃなく、落ちるものだ」とは、100回は読み返した小説「東京タワー」(江國香織 著)の名言です。「する」は意図的で、「落ちる」は知らないうちに。

お見合いから恋愛結婚に移行しつつあった時代には、みんな恋愛結婚が「したい」から、なんとか相手を調達していたんだと思います。終身雇用時代で、男女ともに結婚プレッシャーは大きかったし。

今は恋愛結婚がフツーになってしまい、意図的に「する」恋愛には誰しも興味をそそられなくなったのでは? そもそも恋愛「する」スイッチの電源が入ってないのかも。リモコン感度が劣ったのではなくて……。

あるいは、電源は入っていてもリモコンの設定温度が上がったのかもしれません。男女ともに、結婚相手に求めるルックスのレベルが上がったという、結婚相談所スタッフさんのレポートがあります。

一方、知らずに恋に「落ち」ちゃう時には、スイッチもリモコンも要りません。

恋が「する」ものだとすれば、「なんのためにするのか」の目的が要ります。結婚・出産がそれに当たるとすると、出産可能以外の年齢は圏外。だから恋を「する」ものだと思っている人には、熟女の恋は奇異に見えるのでしょうね。

でも「落ちる」ものと考えれば、何歳だろうが「落ち」てしまうことはあります。だから恋に年齢は関係ないし、年齢制限もないと思います。

若い人から見れば、熟年の恋はセンセーショナルな(人騒がせな・興味本位の)トピックかもしれませんが……。「落ち」ちゃった当人たちは、「こんな歳で……」と気が引けていることもあるのです。

「女性は何歳まで女なのか」の問いには、火鉢の灰を指差した大岡越前守の御母堂の逸話↓が有名ですね。

もちろん、結婚やグリーンカードなどの目的で恋を「する」のも人間らしくて素敵。 

「する」のも「落ちる」のも、どちらも自分の中でのセンセーション。倫理に外れてない限り、外からのノイズはNo thank you――それが恋というものではないでしょうか。

(1万回は聴いたピアノ・ポップの古典。ラズベリーズ ”オーバーナイト・センセーション “(1974年)

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