ランタン
煌々と彼の鼻筋を照らすランタンは
いまが真夜中であることを改めて思い出させる
左ひと差し指を立てたまま
現代のモーツァルトが誰であるのかを
皆に言って聞かせている
一人はコーヒーを片手に反論するタイミングを探しながら
一人は手枕に頭を沈め
彼の動く右手を追いながら
一人は写真で見るアドリア海のような色をしたテントの中央にかかった
ランタンが照らす
彼の鼻筋を眺めながら
私は質問した
「モーツァルトらしさの定義さえ分からないオレたちに言葉だけで理解させることが出来たのなら、モーツァルトは楽譜に音符ではなく小説を書いたのでは?」
彼は立てたままの人さし指を
微かにゆらゆらと揺れるランタンに向けてこう言った
野暮なことを言うな
偉人に照らされてこの夜の素晴らしさを噛み締めているだけだ
コーヒーをすする音がした
虫の音とともに
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