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これからのことはこれから知ればいい きみを栞のようにつつんで

恋人と付き合って3ヶ月が経った。
世間的にはまだまだピヨピヨカップルだけど、一緒にいる時間が長すぎて「あれ、まだ3ヶ月なんだ」という感覚だ。

魔の3ヶ月、と聞いたことがある。
どうやら恋人たちにとって3ヶ月とは、最初の山場らしい。
付き合い始めの「ずっと一緒にいたい」という気持ちが落ち着く頃のようだ。
「最初の3ヶ月がいちばん楽しい」とも聞いたことがある。恋人の溺愛が続くのは3ヶ月あたりまでらしい。
わたしには今の恋人以外に溺愛された記憶がないので、この先どうなるのかよく分からないけど。

そんな山場に立たされているらしい3月のわたしたちは、会えない日々が続いていた。
というのも、お互いの合宿や、彼の学生連盟の仕事があるからだ。
彼とこんなに会えていないのは、付き合ってから初めてだ。
大学が違うので、付き合う前は会える方が珍しかった。
今は会えない方が珍しいなんて、なんだか不思議な感じ。

いま(これを書き始めた時点でのいま、つまり3月中旬)彼は5泊6日の合宿に行っている。
会えない寂しさを、余裕のない彼にぶつけるわけにはいかないので、noteをサンドバッグにしている。
LINEで「会いたい」とか「好き」とか言っちゃっているけど。
会いたいと思った瞬間を具体的に伝えてしまっているけど。
XことTwitterにも書き殴ってしまっているけど。

これは彼には、もううんざりされる話だけど、わたしは前の恋愛で恋人に会えない状態に慣れて、変に強くなってしまった。

いや、「強くなった」という表現は適切ではないかも。
感覚が麻痺した、という方がぴったりな言葉である気がする。
会えないことが普通で、会える方が珍しかったからだ。

前の恋人はわたしが「会いたい」とか「デートしたい」とか言っても「落ち着いたらね」としか言ってくれなかった。
「最近、忙しいんだよね」なんて言われたこともあった。
半ば自虐ネタになっていたが、1年近く付き合っていて、一日中ずっと一緒にいられたのは、1月の始めが最初で最後だった。
デートも数えられるほどしかしていない。
電話もLINEも全然していなかった。
付き合っているのか分からないくらい会っていなくて、笑っちゃう。

わたしはいつしか、会いたいとすら思わなくなっていた。
いや、この言い方は正確ではないな。
毎回のように断られて誘う気すら起きなくなった。

元彼からのアクションを待っているとずっと会えないから、わたしから会いたいと伝えていたけど、元彼はわたしと会う時間を作ることが難しいほど忙しかったようだ。

そんなわけない。多忙を極める芸能人ですら恋愛している。
一般人の忙しさなんて、たかが知れている。
つまりわたしは、忙しくても、いや、忙しいからこそ会いたい存在にはなれなかったということだ。
少し無茶をしてでも会いたいと思わせることができなかった。

わたしには大きすぎるほどの愛を注いでくれている今の恋人に会えていないこの期間で気がついたけど、どうやらわたしはこのことがずっと心の枷になっていて、ネガティブになることがあるようだ。
会いたいだとか好きだとかを言葉で伝えることも、怖くなっていた。
前の恋愛では言葉で伝えても返ってくることはなかったし、ただ虚しくなるだけであったからだ。
いつしかわたしは、言葉で伝えるのをさぼるようになっていたようだ。
今の恋人と前の恋人は別人なのに、ずっと呪いのように染み付いていた。

わたしは本当に面倒な女だ。
こんな呪い早く解かないと、愛想をつかされてしまうんだろうなとも思っているし、今はたくさん伝えてくれているけどいつか減るんだろうなとも思っている。
根っこがまあまあネガティブなので、どんなふうに終わってしまうのかを考えることもある。
失恋ソングのプレイリストを流して、別れることになってしまったらこれで泣くんだろうな、なんて思うこともある。

彼はたくさん気持ちを伝えてくれて、周りにも、わたしの話をしてくれているのに、わたしは何を不安に思っているのだろう。
こんなにも大切にしてくれているのに、伝えてくれているのに。
やはり面倒な女だ。

わたしはわたしのこういうところがすごく嫌。
という話を彼にすると、「そういうとこも好き」と言ってくれる。
「まあそこをこれから無くしていくのが責務なので」とも言ってくれる。
本当に、敵わないな。


彼は、わたしが「会いたい」と言えば会うための努力をしてくれる人だ。
無茶をしてでも会いに来ようとしてくれる。
彼の方から「会いたい」「好き」と伝えてくれて、合間を縫って電話までかけてくれるような人だ。
そんな彼だからこそ、呪われているわたしは、そういうわがままを言えずにいた。
彼の負担になりたくないという気持ちも大きかった。
というより、負担だと思われて嫌われたくなかった。
結局は自己保身でしかない。わたしは彼に捨てられることを恐れているだけだ。

こんなことを彼に言ったら「負担になるわけないじゃん!」なんて、ぷんすかされそうだけど、彼の時間を邪魔したくないと考えていた。
だけど、それは逆に彼を不安にさせてしまっていた。
「本当に好きなの?」なんて言葉を彼に言わせてしまったこともある。

わたしは彼がとっても好き。本当に好きなの、大好きなの。
なんて言えば伝わるかな。
会えない時間に「今なにしてるのかな」と考えてしまうくらい。
ひとりの時間がないとしんどくなるわたしがずっと一緒にいても苦痛にならないくらい。
家族や友達にたくさん彼の話をしてしまうくらい。
1日の終わりに、その日の取り止めのないことを話したくなるくらい。
朝の電車や会えない夜に写真を見返すくらい。
返信がこないか、そわそわしちゃうくらい。
いままではとくに死ぬ理由もないから生きていたのに、いまは彼ともっと一緒にいたいから生きていると思えるくらい。

好きだ。

好きだけじゃ足りないけど、大好きだとちょっとニュアンスが違う気がして、伝わらないな。
そんな曲あった気がする。まさにその通りだと思う。

朝おきたとき。
実家の鍵を閉めようとしたら、間違えて彼の家の鍵をさしてしまったとき。
綺麗な夕焼けを見たとき。美味しいお店に出会ったとき。
ハリーポッターのグッズを見かけたとき。
家具屋さんに行ったとき。
納豆の箸置きを見つけたとき。
ハンブレッダーズの『ファイナルボーイフレンド』が流れてきたとき。
部活の子とお酒を飲んだとき。
彼といつか行こう話していた場所に友人が行っているのをインスタで見たとき。
幸せそうなカップルとすれ違ったとき。
ひとりで歩く夜道。美容院の帰り道。
夜ねむる前。

彼に会えていない間、ますます会いたくなった瞬間を並べてみると、わたしの日常に彼が溶け込んでいることを感じる。

会えない日の夜は眠りにつく前に写真を見返す癖がついてしまった。
そうすれば夢で会えないかなあとか思ったり思わなかったり。
なんて可愛げのある女だろう。

わたしはこんなに彼が好きなのに、不安にさせてしまっていた。
口に出していなかったからだ。
ちゃんと自分の声で届けないと、思っているだけでは意味がないのだ。
有り体に言えば、ちゃんと言葉にして伝えることの大切さに気づかされた。

早く呪いを解かなきゃね。
彼がくれる大きすぎる愛を正面からちゃんと受け取って、倍以上にして返さなきゃ。

早く会いたいな。



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