午後7時からの中学生談義 26

narrator市川世織
「人生の中での大きな決断」ってこういうことか。
そう思いながら私は朝から過ごしてきた。
休日で、叔父さんは久しぶりに友人の家に遊びに行くと言っていた。おじさんは仕事が恋人のように、毎日朝から晩まで働いている。今日ぐらい1人でゆっくり友人達と過ごしたらいいと、半ば私が強制的に追い出した。
本当は、私も一緒に行こうと誘われてたんだけど。
でも、今の私にはやるべきことがある。
私はスマホで貴之と裕翔を呼び出すLINEを送った。
もしかしたら、2人は部活かもしれない。
そう思っていたのだが、意外にも2人は部活がなかったようで、すぐに我が家のインターホンが押された。
「んだよ。わざわざLINEで」
「お前から呼び出しなんて久しぶりだなあ」
2人を居間に通して、私は、先生よりも下手ではあるけれどお茶を淹れる。
そして、2人と向き合った。
『2人に、報告がある』
「彼氏でもできたか」
「バカか」
貴之に肘鉄を入れられた裕翔は小さく呻く。
私は苦笑しながらも、再び表情を引き締めて書き記した。
『フランスに行ってこようと思う。お父さんと今後のことについて話し合ってきたい。1人で行ってくる』
私のお父さんはお母さんとは離婚しているが、時折フランスから私宛に、手紙を送ってきてくれる。
お父さんは荒れ果てたお母さんをどうすることもできず、フランスに帰ってしまったのだ。
私が自由になるためには、そして、お父さんも解放されるためには、2人で話すことが必要不可欠だ。
決意を明かした私に、しばらく2人は呆然としていたが、すぐに笑顔になり
「お前が決めたことなら」
「気をつけて行ってこいよ?」
応援の言葉をかけてくれた。
『ありがとう。2人に1番最初に話しておきたくて』
これは、私が貴之と裕翔、2人からの旅立ちの一歩でもあると、私は思っている。
私も、1人で歩く。
そう決めた。
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