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(育休)第5話:家庭を救うヒーローは誰?

男性育休の法改正までのヒストリーを語るマガジン。前回、第4話では、男性育休のジレンマと、ジレンマを脱するために発足させた「男性の家庭進出プロジェクト」とその戦略について紹介しました。

今回の第5話では、私たちが、プロジェクトの賛同者を増やすため、そして行政や政治に矢を打ち込むために、「なぜ男性育休が必要か?」をどのように説明してきたかをお話しします。


(1)必要性の伝え方、「矢」の放ち方

miracoがプロジェクトの必要性を訴える際に気を付けていたことは、(1)エピソードベース、(2)エビデンスベース、の両輪で語るということです。

エピソードベースについては、自らの経験をCOのストーリーオブセルフ(第3話参照)で語ることと、子育て当事者の「声」を丁寧に拾うことを意識しました

エビデンスベースについては、公的なデータ、客観的なデータを引用することを心掛けました。最初は子育て関連のデータがどこにあるかもわかりませんでしたが、慣れてくると不思議なもので、厚労省や内閣府に山のように蓄積されているデータから必要なモノに辿り着けるように。欲しかったデータに辿り着いた瞬間には、税金によって貴重なデータが収集されていたことの有難みを感じたものです。

子育てについてエピソードとエビデンスをセットで語る

人の心に刺さる「矢」を放つ時、エピソードとエビデンス、どちらか片方でも欠けると、人の心を動かすことができない。というのが私の実感です。

既にエピソードを語れる人との繋がりがあったmiracoにとっての課題は、エビデンスのつくり込みでした。ここでは、男性育休の必要性を語る上で多用した「矢」として、2つのデータを紹介したいと思います。

(2)ゼロコミット男子は2児の父になれない!?

「少子化=国難」と位置付けている行政や政治に対しては、男性の家庭進出が2人目、3人目の出生に直結することを示すことが効果的だと考えました。

そこで、夫の家事育児時間と第2子以降出生の相関データ(下図)を前面に押し出しました。

夫の家事育児時間と第2子以降出生の関係

妻が1人で家事も育児もがんばるよりも、夫婦で協力してやっていける家庭の方が、2人目を生んでもやっていけると思えるのは当然で、夫が家事育児する時間が長いほど、第2子以降が生まれやすくなることを、データが物語っています。

「家事育児にコミットしない男性は2児の父になれない」というデータは多くの男性に刺さるメッセージでもあり、行政や政治との対話においても、「男性の家事育児が大事」という誰も否定できない共通認識を築く役割を十二分に果たしたと思います。

(3)ママの「いのち」を救うヒーローは誰?

男性育休の必要性を語る上でエビデンスとして用いたもう1つのデータは、産後の妊産婦の死因・うつ病の割合です。

妊産婦本人でも自認できないケースもあるうつ病。パートナーである(パートナーであった)夫が認識して、ケアの必要性を理解することは難しい(難しかった)かも知れません。しかし、産後1年までに死亡した妊産婦の死因の第1位は自殺で、産後2週の初産婦は4人に1人がうつ病の可能性がある、という客観的なデータを突き付けられては、産後の母親にケアが必要だということから目を背けられないのではないか、と考えたのです。

妊産婦の死因とうつ病の可能性

上で例に挙げたエビデンスは、ほんの一例。子育てに関する様々なデータについてmiracoメンバーはチャットで話し合い、深掘りし、エビデンスをどんどん蓄積していきました。(同時に当事者の声もSNS等で集めていきました)

(4)私たちの「矢」が国会に届く

エピソードとエビデンスが集まったところで、さぁ、miraco代表の天野の出番です。

待機児童問題で既に一度、2017年に国会に立つ経験をしていた天野は、2019年の3月に国政のさらにど真ん中の参議院予算委員会に公述人として呼ばれます。

そこで天野は、日本が「子育てしやすい国」になるためのレバレッジポイントとして「待機児童の解消」と共に「男性の家庭進出」が必要だと語りました。

その際にも、育休を取得したい男性が45.5%いる一方で取得率が5.14%(2018年発表数値)にとどまっている事実や、男性が家事育児に加わることのメリットについて、エピソードとエビデンスを交えて伝えた上で、そのきっかけとして「男の産休」の義務化(必須化)を提案しました。

参議院予算委員会での訴え

その時の台詞がこれ、「今、子育てに必要なのはまず”夫の手”です」でした。ママの「いのち」を救うヒーローは誰か、という問いを立て、その答えを提案したのです。

参議院予算委員会公聴会のノーカット動画(天野は4時間24分30秒頃~)

この提案を国会で聞いていた自民党のあの議員から「ぜひやりましょう!」と想定外の声がかかり、一気に育休の法改正への扉が開かれることに。その話は、第8話でご紹介したいと思います。

次回:男性はなぜ育休を取らないのか

今回は、行政や政治へのアプローチを軸に、「なぜ男性育休が必要か?」を説明する上で用いた手法と、エビデンスとして活用した2つのデータについて紹介し、国会の提案にまで結び付けたところまでお話ししました。

次回、第6話では、育休を取得する当事者へのアプローチとして、男性はなぜ育休を取らないのか(取れないのか)について、データを交えながら紹介します。ぜひお楽しみに。

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(文責:りょうたっち)

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