見出し画像

アーティストの脱皮(感想メモ:『騎士団長殺し』2巻:)

アーティストが、なにかを打破しなくてはならないとき。

それまでの安定した単調な自分の仕事から脱皮し、

真にクリエイティブで本質的な仕事に、生まれ変わりたい時。

どんなことが必要なのかなと、考えさせられた。

このままでもやっていけるけど、なにかが違う。クリエイティブとしては、まったく生き生きしてない自分を自覚したとき。

もう一度、再生しなければならない。

この作品の場合では、

免色さんというクライアント。

つまりその変化を求める側からの、外からの需要という刺激。

一方で、実作を試みることによる、自分自身の姿勢。

不可思議な見えない世界からのシンクロやサイン、インスピレーション。もっとスピリチュアルな感覚。理屈でない流れみたいなもの。

免色さんのポートレートもそうだが、『白いスバル・フォレスターの男』のエピソードが、素晴らしいと思う。

アーティストの内部の感覚やイメージ、インスピレーションが、形になり、すこしずつ三次元へ具現化していく時のさまが、よく伝わってきた。

なにか、その男の内部にあったその男そのものの本質が生々しく主人公に残り、かつそれが〈人間〉のある生々しい一面を切り取るのに、ぴったりのモチーフだったのだろう。

わかりやすい美しさではなく、ナイフで勢いよくつけた引っ掻き傷のように、人の心に強く印象を残す、なにか特別な気配をまとうもの。

そういう作品には、そんな理屈ではない生々しさが、必要なのだとおもう。そして、主人公はそれを写しとることに成功しつつある。

それが、何を意味しているか作家にはわからないとしても、直感的になにか生命や力を感じるもの。霊気を感じるもの。オーラを感じるもの。それを写し取っているのだ、きっと、絵ならば絵、音楽なら音楽に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?