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基本合意とは何か?|M&Aアドバイザー超初心者向け基礎知識!㉑

こんにちは。かきもとみさです。私は世の中に少ない女性M&Aアドバイザーとして仕事をしています。これからは女性M&Aアドバイザーを育てたいと考えており、「超初心者」向けにノウハウを発信しています。

M&Aの基本的な流れは、以前下記の記事にまとめました。

記事:M&Aの基本的な流れ!

その中でも、今回は「基本合意」にフォーカスして話をしたいと思います。

基本合意は、Memorandum of Understanding=MOUとも呼ばれたりします。

1対1での本格協議がスタート

基本合意というのは、複数ある買手候補企業の中から、候補企業を1社に絞り、「さぁ、本格的にM&A成立に向けて真剣に話を進めましょう」というステージです。

意向表明書が「結婚を前提に、お付き合いをお願いします!」というステージだとすれば、基本合意は「婚約」に近いですね。

この基本合意でのお約束事は、下記の通りいくつかあります。

①他の買手候補先は「お断り」する

意向表明書が複数から提示される中、売主から「あなたにします」と言われる段階に入るわけですから、この基本合意の段階で他の買手候補先はには「1社、別の候補先との基本合意締結が決まったのでお見送りでお願いします」という連絡を入れます。

つまり、ここで売主にとっても基本合意締結先が「唯一の候補先」という存在になるわけです。

②専属的交渉期間(=独占交渉期間)が設定される

この基本合意書によって、基本合意締結日から一定期間において、1対1の協議を専属的に実施できる権利を買手候補企業に付与することになります。

私が扱う案件では、大抵の場合「基本合意締結日より3か月間」という期間を設定しています。

この間に、買収監査=いわゆるデューデリジェンス(通称DD)が行われます。基本合意締結日からすぐにDD準備にとりかかり、DD自体は1カ月以内くらいで実施し、最終契約書をまとめるのに、肌感覚ですが3ヶ月程度がちょうど良い期間という考えで、3ヶ月で設定しています。

今のところ、大体ちょうど3ヶ月以内でまとまっているケースが多いです。

③この時点での価格条件が記載される

基本合意書には、基本合意締結時点での価格条件が記載されます。但し、以降の独占交渉期間中に実施されるDDを経て金額交渉が発生するケースが多いため、この書面上は「法的拘束力は無し」とされた価格条件となります。

具体的には、下記のように記載しています。

本契約における対象株式の譲渡価額は、合計〇〇〇〇円とする。ただし、第〇条に定める本件調査の結果、対象会社らに関し甲が乙に提供した従前の情報とは異なる事実が判明し価額調整を行うべき必要性が生じたときは、甲と乙は、協議の上本件譲渡価額を変更することができる。

また、細かい点ですが、譲渡対価の内訳として、対象会社から売主社長へ退職金を払いだすことができるケースでは、下記文言も追記しています。

譲渡対価の支払い時には、株式譲渡対価の支払いの一部を甲に対する役員退職慰労金に充てる場合があることを甲および乙は確認する。

④譲渡後の処遇を簡潔に記載する

基本合意締結時点で想定している、価格以外の条件についても記載します。例えば、既存の従業員の給与水準は当面は下回らないようにすることや、売主社長の引継ぎ期間中の処遇(役職・報酬)など。

⑤表明保証

基本合意締結時点での表明保証(売主の)は、あまりガチガチではなくても良いと考えますが、買手企業の要望で記載したことがあります。

記載されていると良いと思うのは、下記くらいかなぁと思います。

・反社会的勢力に関与している事実がないこと
・対象会社の発行株式総数と、発行済株式の形態についての表明
・基本合意締結以降に、対象会社に重大な変更(大量解雇、他者への株式譲渡承認、重大な保証・担保設定、増資など)を生じさせないこと

買手の要望を受けて基本合意で記載したときは、最終契約書に「ガッツリ」記載する予定の内容を一部、基本合意書へ前倒して記載しておいたことがあります。(そうしたら買手企業には「ここまで表明保証してもらえるなら十分です」と言われました。)

実際には基本合意書時点では最終契約書レベルの表明保証は不要ではありますが、ただ最終契約書内容で表明保証できる内容の中で、基本合意書でも当然に表明保証できるような内容は、とくにこの時点で記載しておいても何のデメリットは無いと思います。反社の点や発行株式の点など、ここで表明保証できないとしたら問題ですし、早期からしっかり表明保証できるのであれば信頼も増しますよね。

⑤その他(一般事項)
あとは、買収監査のスケジュールや、買収監査における売主の善管注意義務、また秘密保持など一般事項を記載しておきます。

1点、補足するとすれば、もし破談した場合には、売主から受領した機密情報は、必ず速やかに買手企業が返還・破棄することを記載しておくと良いと思います。

私は秘密保持の条項に、こんな風に追記しています。

本件基本合意が失効したときは、乙(買主)は甲(売主)に対し、本件基本合意の締結・履行に関して甲から受領した資料を速やかに返還し、甲から提出された機密情報が完全に削除・破棄された旨を表明する文書を速やかに提示する。

何かトラブルやら揉めたりして破談になった際に、「それなら機密情報破棄した証明書を提示しろ」と言っても、買手企業が快く応じないケースが発生しかねないので・・・・(←経験あり。トホホ。)

⑥法的拘束力のある条項を明記

これは基本合意書の特徴かもしれませんが、この書面には、法的拘束力がある条項とない条項が同時に存在します。

法的拘束力を持たないものは、例えば下記。

・譲渡対価
・従業員や売主の処遇
・DD(買収監査)スケジュール

これは単に、基本合意時点での「想定条件」であり、単に意向を示しているだけであることを両社とも押さえておく必要があります。独占交渉期間中に揉んでいき、最終合意に至るわけなので。

法的拘束力を持つのは、下記。

・独占交渉期間
・表明保証
・一般事項(秘密保持、譲渡禁止、善管注意義務 など)

つまり、ざっくり言ってしまえば、基本合意書の締結における法的な意義は正式にその買手に「独占交渉期間」を付与すること。これのみです。

もちろん、買手の提示金額を前提に基本合意締結に進めるわけなので譲渡対価の金額も大事なのですが、1対1の関係性に決まった後には、すでに金額は「変動しうるもの」になっています。

基本合意の位置づけ

基本合意に至ると、買手企業はほとんどが、アドバイザーに「基本合意報酬」を支払うことが多いです。

その締結書面が「基本合意書」ではなくとも「何等かの形式で独占交渉期間が付与された場合に、中間報酬を支払う」というアドバイザリー契約になっているケースが多いです。弊社の契約書雛型もそうしています。

この際に中間報酬は、相場は10~20%でしょう。1000万円の最低報酬であれば、100万円~200万円。

この報酬の意味は、なんでしょうか?アドバイザリーが稼働した工数分、破談になっても稼ぐためでしょうか?

そう考えているケースもあるかもしれませんが、これは買手の「本気度」を体現しています。「一定のお金を払うほど、真剣に検討している」という意向の表れです。無償のうちは冷やかしでも話に乗れますからね。

アドバイザー視点から言うと、「本気の買手企業にしか基本合意締結に進めさせたくないので、一定の報酬を設定してハードルを上げている」と言えます。

本気100%

さて、形勢逆転?

意向表明書の記事でも書いたのですが、基本合意締結前とあとでは、売主と買主のパワーバランスに変化が生まれやすいです。

つまり、それまでは売主が買手企業を選ぶ立場だったのが、「あなたに決めます」となった後のステータスでは「もうこのままゴールインさせてほしい」という気持ちになるので、買手企業の交渉パワーが強くなりがちです。

ここで、「買って欲しかったら譲渡価格を下げろ」「処遇などの条件を安くしろ」など、無理難題を押し付けるような買手は好まれません。長い付き合いになるので、最後の成約まで気持ちよく協議を進めたいものですね。

個人的には、アドバイザーとしては、基本合意締結時点で、買手の意向、本音を先に聞いておくようにしています。

「実際、基本合意締結時点の譲渡対価から、金額下げようと思ってますか?」と。

ここで、もし「実は下げたい。予算としては〇〇〇円くらいで見ている」という意向なのだとしたら、私はこの本音の金額で基本合意締結してもらうように調整をします。

あとから金額を「下げられた・・・」となったら、売主だってちょっと残念だし、減額で破談してしまうくらいなら、最初から基本合意締結しないほうが良いわけなので

いろんな気遣いや根回しという意味で、アドバイザーが心がけるべき点というのはたくさんあると思います。

コツは、目先のステータスにとらわれず、最後のクロージング日までをしっかり想定してベストを考え両者に寄り添ってアクションを決めること!

長くなってしまいましたので、本日はこの辺にしておきます。



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ではまた♪Adiós❤
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