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エッセイを書こう! 読書ログ 『エッセイ脳』 - 岸本葉子

はじめに

こんにちは。文を上手に書けるようになりたい人、みそいちです。
月イチで、作文学習に取り組んでいます。
先月は、情報を分かりやすく伝える文章の書き方を学びました。それが、『理科系の作文技術』。
今月は、情緒をうまく伝える文章の書き方を学びます。それが、今回取り上げる『エッセイ脳』です。

情緒を伝えるといえば小説です。ただ私は、フィクションを書きたいとは思っていません。自分の感情を、自分の言葉で紐解けるようにすることが、私の目標です。
そこで、ノンフィクションで、情緒を伝える文章ジャンルである、エッセイについての本を取り上げました。

著者の岸本葉子さんは、東京大学卒業後に会社勤務を経て、20年以上もコラムニストとしてご活躍されている大ベテランです。
本著は、著者の長年の経験から見いだされた「エッセイの作法」をまとめたものです。理知的でありながら分かりやすく、得るものが多かったです。
以下に、その内容を要約します。


(今日の一曲)

エッセイの構造

エッセイは、次のように組み立てられていく文章です。

  • A: 「自分の書きたいこと」を

  • B: 「他者が読みたくなるように」書く。

Aとは「私」。そしてBは「公共」です。
「私」が伝えたいことを、「公共」へと繋いでいく文章がエッセイです。
文章の書き始めでは、「私」ばかりに目が向きがちです。しかし「公共」への視点を十分に持てなければ、他者に伝える文章 - エッセイにはなりません。


B: 「他者が読みたくなるように」はどのように達成できるでしょう?
そこには次のポイントがあります。

  1. 読みやすい文章であること

  2. 興味の持てる題材であること

1は、勉強を通して伸ばしていくことが、相対的に簡単です。
2については、著者自身に特殊な属性がない限り、差を付けることが難しいです。それは例えば、著名人であるとか、特殊な環境で生活しているとか、珍しい仕事をしているとか。そうした珍しい境遇でない場合、題材の選び方で差をつけることが求められます。

最初に、2: 題材の選び方から説明し、次に1: 読みやすい文章術を説明していきます。

題材の選び方

題材と似た言葉にテーマがあります。それらは次の関係にあります。

  • テーマ:そのエッセイが置かれるコンテキスト。抽象的・一般的なもの。

  • 題材:テーマから連想される"私"のエピソード。具体的・個別的なもの。

多くのエッセイの依頼では、テーマはあらかじめ設定されています。そこから、自分オリジナルの題材を思い出し汲み上げ、構成を考えていきます。


よきエッセイは、テーマにありきたりな結論で終わりません。適度なひねりやオドロキを設け、読み手に楽しみを残してくれます。

紙幅が限定されがちなエッセイでは、すると起承転結の中の「転」こそが、エッセイ全体で言いたいことになっていきます。
「転」は、逆説ではなくオチです。

『エッセイ脳』より

「起」でテーマやエピソードに向けての導入を示し、「承」でテーマとエピソードを繋げる。「転」で自分にとっても最も印象的な具体的なエピソードを示し、ここがエッセイの中心になります。「結」は、文章全体のまとめとして添えられるもので、最悪なくても成り立ちます。

読みやすい文章に向けて

文章の役割を知る

伝わるエッセイ:読み手に「あるある、へぇーっ、そうなんだ」と感じてもらえるエッセイを書くには、読み手の頭と感情の双方にはたらきかけることが必要です。

エッセイは以下の種類の文章から作られます。

  1. 枠組みの文:つまり説明。状況を読者につかんでもらったり、時間の進行を示す。人物や事物の紹介をしたり、その出来事の位置付け=「つまり、こういうことなんですよ」を念押ししたり。アウトラインやポイントを示す。

  2. 描写:枠組みの文の、具体的内容が書き込まれる。視覚描写だけでなく、嗅覚・触覚・聴覚での感じ方も含めた、場面の写生。

  3. セリフ:会話も心の声も含める。文章全体に活気や臨場感を付け足す。描写を補強する。印象を際立たせて、単調さを払う。

枠組みの文で場面設定を行い、その内容を具体的に描写していく。描写を受け、また枠組みの文でポイントを整理していき、セリフを使って場面の臨場感や再現性を持たせていく。
枠組みの文で読書の頭にはたらきかけ、描写・セリフで感情にはたらきかけます。
このように、文章ごとの働きを意識していくことで、読みやすさや読了感を調整しやすくなります。

文章を制御するマインド

文章の読み手は、書き手とは別人です。そのため、読み手には話のヤマ場が分かりません。いつどこでどう展開するかを見えない読者に向けて、読み進める負担を和らげる仕組みを用意することが大切です。
短文で、身近な話題をとりあげるエッセイでは、読み手への配慮がとりわけ高く要請されます。

以下に、本著で示される「読みやすさを上げていくテクニック」の一部を、抜粋します。

  • 書き出し:意外性を演出しようとするのはリスキー。決め台詞・比喩・概念の定義などから入るのは悪例。さりげなく初めて、呼びかけや問いかけに留めるのが吉。短文で始めるのがよい。徐々に、少しずつ情報開示をしていく。

  • 情報開示:急がずに、少しずつ示す。全体から部分への説明を行う。

    • 全体から部分へとは、以下のような論理的順序のことでもある:空間的な順序・動線に則った順序・時系列に沿った順序・箇条書き・既知のことから未知のことへ。

    • 特に堅い情報は分けて配置する。「長いですが」などと前置きを置くのもよい。また、謎解き感や期待感を維持してもらうために、あえて一度に全てを示さないとか、読者が離れないように、あえて時系列を無視して最初に全てを明かすとかのテクニックもある。

  • 言葉選び:以下の3つの側面から検討を行う

    • 正確かどうか:言葉とそれが描写する対象との関係性が、最適な状態になっているか。

    • 文法上の整合性がとれているか:主語述語の対応、並列関係や呼応の整合性など。つまり、言葉がその他の言葉と、適切な関係性に置かれているか。

    • 語感がふさわしいか:文章全体における表現と、その表現の関係性がとれているか。本文では具体的検討事項を7つ取り上げている。

おわりに

いかがでしょうか?
本著では、具体例を豊富に示し、より詳細な・よりプロフェッショナルな観点についても説明がなされます。気になる方は是非、手に取ってみてください。

私が最もインパクトを受けた点は、やはり「"転"こそが話の中心になる」というエッセイの構造分析の部分でした。
思えば、日常での「すべらない話」とかも、「転」を中心に話が組み上げられています。
「転」中心のストーリーの作り方は、コスパ・タイパ重視のイマドキのコンテンツ作成で、大いに役立てられそうです(こう書くと、岸本さんの発想を下げるみたいに取られるかもしれませんが…)。

文章ごとの役割を意識することも、大切です。
私の目指したい自分批評の文において、感情にはたらきかける文がどこまで必要かは不明確ですが、少なくとも、それぞれの文章の役割が何かを自覚できるようになりたいです。


最後までご覧いただきありがとうございます。
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