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背中【Three】

背中に何がかいてあるのか
見聞きもせずに
人はひとを、そう決めつける


きみは言った


肩に花びらがのっている
はらりと落ちた花びらは
桜なのか桜ではないのか


幾千の道を走りぬけて
何度も何度も立ち止まり
つまずき転んで傷を負ったきみのその背中に背負う
不屈の二文字が見えてくる
くじけないことを課してきた
きみの背中に


傷ついたきみの心は
きみ自身なのかきみではないのか


自分で見えないという
二文字に


ぼくが僕の背中を見るときには
とうにここには居ないだろうね


きみは振り向きざまにそうも言った
自分の背中は見ないと言った


もう行くのか


あぁ、


覚悟とは二度と振り返らぬことだと言った


背中をみせつけ
振りむきもせずに去ることだと


背中にはきみの来し方が描いてある


桜の花びらを
そっとひとひら
はらいのけて


染まる夕焼けに透かした傷口は
美しい背中に輝きをそえて
紛れもない、それはきみ自身だった



背中にかいてあることに
誇りを持つことだ


後ろ姿は美しいのだから




背中シリーズ

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