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キネマの神様 神様は健在だった

ジュリーに逢いに行ってきた💕

私が保育園の時から、ファンだった沢田研二さんがスクリーンに出ている!

ジュリーは美しい。歌も上手い。芸達者。録画がまだ普及していなかった時代、ジュリーが出演する歌番組やバラエティの時間には必ずTVの前に張り付いていた。

映画では、様々なジュリーが見られる。例えば『太陽を盗んだ男』では70年代の青年の瑞々しいジュリーが💕『魔界転生』では妖艶なジュリーが💕『ヒルコ妖怪ハンター』では、コミカルなジュリーが💕『男はつらいよー花も嵐も寅次郎ー』田中裕子さんにマジ恋しているジュリーが💕

今回はどんなジュリーが見られるのか…💕


松竹映画100周年記念映画。山田洋次監督89歳にして、89本目の映画。『キネマの神様』2021年公開日本映画。原田マハ原作。

映画を愛する人の2020年の現在の暮らしがあり、1950年代頃映画黄金期の撮影所で働いていた青春時代の記憶があり、映画を愛する人々の現在に繋がる幸せな軌跡がある映画。

山田洋次監督の表現したい世界感。その意図を外さず、自分の役どころをきちんとわきまえておられる役者の面々が素晴らしかった。

主人公を沢田研二さん、その若い頃を菅田将暉さん。繊細な愛されキャラを愛されキャラのお2人が好演。

主人公の妻を宮本信子さん、その若い頃を永野芽郁さん。可愛らしく、そしてひたむき…そのまま歳を超えたお2人。お2人に違和感が全くないところが不思議。

主人公の娘に寺島しのぶさん。両親のダメダメさを辛辣に非難して、家族の現状を浮き彫りにするシングルマザー役。主人公の孫に前田旺志郎さん。オタクな感じのWEBデザイナー役。この親子が2020年現在の家族を強烈に印象付ける。

主人公の親友に小林稔侍さん、その若い頃をRADWIMPSの野田洋次郎さん。真面目で誠実で落ち着きがあって、ずっと変わらない友情や、フィルムへの愛情がある役どころのお2人。この方々と主人公の絡み、親友同士の沢田研二さんと、岸辺一徳さんにみえてしまって…ポイント大。

銀幕の大物女優役に北川景子さん。1950年代の女優にただ似せているだけではない彼女自身の品や、貫禄に魅了される。


現状がいかなる状況であっても、映画を愛するものには神様がご褒美をくれる。そんな映画だった。


1950年代頃の映画撮影所やその近くの食堂、ロケ地での撮影風景。それぞれの組みが競い合うように、良い映画を作ろうと活気に溢れた映画撮影現場の雰囲気を再現されていた。

主演らが映る画面の端端の演出にも作為が…クスリと笑いが込み上げてくるものであったり…往年の先輩監督の誰かを彷彿とさせるものであったり…小道具やセット、衣装にいたるまで、散りばめられた仕掛けが面白い。監督自身が体験した撮影所の記憶のカケラを詰め込まれているのだろうと思った。

そして、ジュリー。若い時の麗しいジュリー。今は体型も様変わりし、セクシーな目元も視線も見るこてはできないが、やはり愛されキャラ全開。役柄も博打に酒に借金に家族を困らせても、見限れない可愛いさがある役どころ。ジュリーもおんなじ、何をしてもどうなってもファンがついて行く可愛らしさがある。

役は元々は志村けんさんがされる予定だったとか。でも、そんなのは関係ない。この映画はジュリーでよかったと思う。志村けんさんならまた別ものの素敵な映画になっていたであろうが、この映画はこれで良かったと思う。ジュリーは昔から崩しても崩れない品がある。そこが良い。

山田洋次監督らしく、笑いあり、涙あり、そして感動あり。熟練のコンダクターが作り出す、安心出来る一本の映画。

山田監督が若かれし日、見上げていた先輩監督小津安二郎さんを、主人公を通し懐古されている。小津安二郎監督作品を事前に観ておくほうが、もっと深く楽しめる映画だと思う。

ちなみに1950年代頃の日本映画界とはどんな時期だったのだろう。

1945年終戦直後、GHQの統治下だった日本。厳しい検閲のため、自殺、仇討ち話禁止等のため、時代劇は事実上不可能とされ、自由に映画が作れなかった。1951年、サンフランシスコ講和条約。1952年からGHQの映画検閲禁止。時代劇復活。其れ迄、息を潜めていた沢山の映画会社がそれいけとばかりに群雄闊歩し、民衆が楽しめる映画、映画史に残る名作や、国際映画賞を受賞する映画をも次々と排出した映画第二黄金期。※第一期は1920から1930年代と言われている。


松竹映画 文芸作品がヒット。大庭秀雄監督『君の名は』。小林正樹監督『人間の条件』。木下恵介監督『カルメン故郷に帰る』『樽山節考』『喜びも悲しみも幾年』小津安二郎監督『麦秋』『早春』『彼岸花』『東京物語』etc

東映映画 二本立て活劇や時代劇がヒット。中村錦之助。”東映ニューフェイス”と呼ばれる高倉健、佐久間良子、千葉真一などが活躍し始める。

東宝映画 黒沢明監督『生きる』『七人の侍』『隠し砦の三悪人』etc。ゴジラシリーズスタート。円山英二の特撮ものがヒット。

日活映画 石原裕次郎、小林旭、浅丘ルリ子、赤城圭一郎、宍戸錠、二谷英明ら自前スターを排出し、若者向け青春、アクション映画ヒット。

大映映画 長谷川一夫、市川雷蔵、京マチ子、山本富士子、若尾文子、高峰秀子、鶴田浩二、岸恵子、etcなど大御所役者を揃えて、人気作品を排出。

眩いばかりの銀幕の俳優女優さん方が活躍する世界が広がっていた時代。※敬称割愛ゴメンなさい。

※小津安二郎監督作品『東京物語』の感想文、良ければご参考に









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