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秘密の招待状 喜びの選択

 誰かを幸せにしたい気持ちや愛する気持ちの表し方は、千差万別でどれがベストかなんて分からない。ただ1人に伝えたい深い愛もあれば、みんなを愛する大きな愛もある。

人生の選択は、その時の自分が精一杯考えて下した決定だから、その後の結果がどうなるかは分からない。

ただそこに愛があるならば、時を超え、距離を超え、時空さえ超えて愛は生き続ける。


春眠暁を覚えずとの言葉が頭をかすめる程、眠い、桜が満開のこの頃。お昼寝から目覚めてふらりと見た映画『秘密への招待状』をご紹介。

『秘密への招待状』2020年アメリカ映画。バート・フレイシドリッチ監督、脚本。その妻ジュリアン・ムーア主演共同制作。デンマーク制作の『アフターウェディング』スザンネ・ビア監督作品のハリウッドリメイク版。オリジナルでは、主人公2人が男性のところをハリウッドリメイク版では、女性に設定が変更されている。また、ニューヨークで撮影がされている。インドのスラム街で孤児院を運営する女性とニューヨークで全米一のメディア代理店を経営する女性、全く違う生活を送る2人の愛と葛藤と未来を描いたお話。

良い映画というのは、オープニングから匂いを放っているような気がする。この映画の始まりはインドカルカッタ。赤い土の古跡で瞑想する主人公ミシェル・ウィリアムズと子供たちの姿から始まる。みんなが目を閉じる中、目を閉じられずに横たわる少年1人…叱られるかと思いきや、ミシェルは優しく問いかけ、そして少年に役割を与えて元気を出させる。

この映画には、こうして視聴者に不安を掻き立てる要素をちらつかせ、解決するという手法が何度も登場する。

インドスラム街で、生き生きとした子供達に囲まれながら孤児院を運営するミシェル・ウィリアムは金策には苦労しながらも幸せそうだ。ニューヨークで女性経営者としての成功を収めたジュリアン・ムーアもアーティストの優しい夫に結婚直前の娘と双子の息子たちに囲まれて幸せそうだ。それぞれが見出した幸せの姿があった。

ところが、ジュリアンが広大な森のような庭で、割れた卵が入った鳥の巣を拾った辺りから、どうしょうもなく不安な気持ちにさせられた。何かが変わる予兆の象徴のようだった。

ここからはネタバレ。

結果として、人間の生き方として凄く参考に思えたし、自分の今後の生き方を考えさせられた作品だった。

女性経営者のジュリアンはガンを患い余命が幾許かしかない事が判明し、会社を売ることを決め、社会奉仕の観点から寄付出来る団体を選考していた。そこで出会ったのか、既に下調べをしていたのか、アーティストの夫の元彼女で娘の実母であるミシェルを娘の結婚式に招待し、その後孤児院への多額の寄付を決定する。若気の至りで失敗すると分かっていても娘の結婚を許し、失敗と気づいた娘を許すジュリアン。娘に実母の存在を示し、娘のこと双子の息子のこと、夫のこと、多額の寄付金で設立した財団の運営を娘と共同経営にした上でミシェルに託し、この世を去っていく。

自分が去った後も、人々が混乱なく穏やかに生活できるように全ての後始末をする敏腕女性経営者の手腕に艶やかさを感じた。自分の人生の終末をキチンとケジメがつけられるのは潔い。

また様々なことを託されたミシェルが、幸せだったインドを離れ、孤児院をつつがなく運営する為、また莫大な金銭管理のためにニューヨークで学ぶ決心をすることも潔いと思った。奉仕の現場は楽しいが、大事に思う子供達が今後も窮せずに暮らして行けるようにすることも奉仕なのだ。

責任を逃れるため、見解の違いのため、病のため、様々な姿で、別れるカップルの姿は、まさに巣の中の割れた卵のようだ。巣と割れた卵はまさに映画の要となっている。

ジュリアンが後を託したミシェルは、さながら新しい巣を形成しつつある鳥のようだ。2人の対称的な女性の生き方が交わる時、新しい道が示されたようだ。ミシェルの博愛の精神や奉仕の力など、今後に期待せずにはいられいラストで、後味良くまとまっていた。

赤いサリーを頭から掛け、瞑想する姿はオープニングに始まり、映画のラストまで赤いサリーが登場する。今後も瞑想し続けるであろう姿のようで印象的だった。

桜の花びらが舞う、うららかな春。飛び交う鳥も巣づくりを始める。人生は新しい門出を迎え、期待と不安を抱きながらも、その門をくぐろうとしている。私も勇気を持って一歩、足を踏み出そうと思う。

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