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初めての会社売却を失敗しないために

 私は現在、実質個人で経営コンサルティングを行いながら、事業承継の形で買収した3つの事業会社のオーナーも兼ねています。

 株式会社においては所有と経営が分離されています。法的に所有している人と、会社を運営するトップは、もちろん一緒でもあっても構いませんが、別であっても運営できるようになっています。日本では(飲食店業界以外)通例として圧倒的多数の非上場会社においては所有と経営が一体化されていて、上場会社においても(50%に満たなくても相対的な)大株主や創業者が所有と経営が一体で運営されているような風潮がありましたので、「所有しているだけで、経営はしてないよ」と言われてもピンとこない反応が普通です。

 私は元々投資ファンドでのサラリーマンをしていましたので、そうしたそもそもの法的な仕組みや、会社を個人で買うということ自体がそんなに距離感のあることではありませんでした。ですので、目の前にお金を失うリスクはあれども興味深い事業を行なっている会社があり、タイミング等々の問題で買収を検討できるのが著者しかいなく、そうすることがその会社の役員や社員にとっても少なからず幸せにつながる可能性があったので、迷いもなく株式の買収と運転資金の提供を行ないました。

 業績が悪い状態で買収していましたので、私も(当初数ヶ月のみ)深く関わることで業績が改善できました。すると、次々と「こちらもご検討どうですか?」といった具合に買収の打診の頻度がものすごく増えました。3社を譲り受けるまでには30社以上の会社を検討しましたが、やはり最初の1社を譲り受けてからが紹介のペースが加速していました。今も継続的に紹介を受けています。

 ただ、こうした一連の流れは投資ファンドに在籍していた著者からすると、ごく自然な流れでした。業績が悪くて、資金がなくて困っている会社はリスクが高いからこそ安く買える。買収した会社を良くした(業績だけの意味でもなく、社員の処遇なども含めてです)という実績があれば、その評判を聞きつけて相談件数が増えるという流れです。

 そういった買い手からの目線による手引きは、『会社員が一生モノの“実のある仕事”を創る方法(ベータ版): 事業承継問題を抱える会社を個人で引き継ぐ』にまとめ、Kindleで出版しております。

 このマガジンでは売り手、すなわち事業承継について悩んでいて、「売却も1つの手段かなあ」と考え始めた中小企業のオーナーを対象に、自社で解決できる課題や論点を「基本の『き』」として、相手がある課題や論点については「基本の『ほ』」としてまとめてあります。

 投資ファンドで扱っていたような売上100億円以上の規模の会社の話ではなく、独立して著者個人で承継する際に検討していた10億円未満の会社を想定して述べていきます。

 2012年の内閣府のデータによれば、100人以上の規模の会社は6万社である一方で、従業員数が10~100人の会社は110万社、10人以下は427万社あります。

 そのなかで帝国データバンクが115万社を対象に調べたところ、社長の平均年齢は2015年に59.2歳で、3年連続で上昇しているそうです。うち売上1億円未満の会社では60.2歳だそうです。中小企業の事業承継問題は増加の一途を辿るでしょう。

 そうした世の中のうねりの中で、このマガジンが多少になりともお役に立てれば幸いです。

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