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第6回 「経験を意味付ける~大学2年生の教室から~」

みなさん、こんにちは。
キャリアコンサルタントの糸井です。
 
本業は自社にて採用と教育を行っていく&ピープルマネジメントではありますが、傍らキャリアコンサルタントとしても活動の機会をいただいていることもあって、先日も複数の大学内授業でキャリア講義のご依頼を頂き、実施して参りました(副業ではありません。念のため。)
 
過去も含めまして、キャリア講義のご依頼を受けた際には、大抵が就職活動を迎える方であり、ご自身の進路をどうしていけば良いかを考える場にご一緒させていただくことが多いのですが、今回は大学学部2年生向けの機会も一部あり、個人的に新鮮な経験となりました。ただ、悩ましい点がありまして、
 
うーん・・・2年生・・・。
就活にどの程度興味があるのだろう・・・。
 
私が大学2年生の時・・・汚ったないTシャツを泥だらけにしながらげっそりした顔で大学のグラウンドから出て、キャッキャ楽しそうにキャンパスライフを満喫する他の学生を横目にアスファルトの上でぶっ倒れていたのを思い出します・・・更には「おら!糸井、テメーはやく片付けしろよ!」と楕円球を投げつけられる始末。

ワールドカップの華々しさと比べて、何と地味!悲惨!
就職難時代だったくせに就活なんて考えてもいない世代でした。
 
・・・無駄話はさておき(スミマセン)、そんな20年以上前と比して、今は大学学部2年生に対してすら就職を意識させていく必要がある。如何に社会の変化、時代の変化が早くて大きいのか。そんなことを改めて考えさせられた次第です。
 
さて、その2年生向けのキャリア講義向けの構想を進める中で、専門用語を使わず、理論を盛り込みながら、学生の皆さんに分かり易く、興味を持ってもらう。私にとってはなかなかのハードルでした。そこで、
 
「そうだ。迷った時には原点に返ってみよう。」
 
・・・と考えまして、「キャリア」の語源から構想を練っていくようにしました。つまり、
 
「キャリアとは轍である」

荷車とか幌馬車を想い描いてください。これが道を転がっていくとその後ろには車輪でできた「轍」があります。
ここから派生して、「キャリア」という言葉が生まれた、と言われています。
(英語の「Carrier(運搬するもの)」から来ているそうです)
 
 
私たちは日々人生を歩いている訳ですが、振り返るとその道のりには自分なりの人生の轍が出来上がっていて、それが繋がって今に至っている訳ですね。
「キャリア」と言うとどうしても、未来のみに注目してしまいがちで、更には、職業に限定した意味合いのように言われる場合も多くありますが、実際にはそうではないです。
 
人生におけるあらゆる出来事が自分を形成している意味では、未来だけでもなければ職業のみにも限らず、全てのことが「キャリア」と定義付けされることとなります。
(難しい事はさておき、これはキャリア理論としての考え方でもありマス)
 
私が最初にキャリアコンサルタントの理論を学んだ際に人生の色々な出来事すべてが「キャリア」です、と
言われて目から鱗でした。でも、考えてみれば、今の自分というものは過去から連続する様々な経験によって作られていて、それが何だったかを考えることは前に向かっていくにおいて重要・・・。確かに、なるほどー、と。

もうちょっと深く、専門的な視点を交えれば、将来の方向性は、自身が過去から現在に向かって経験してきた様々な出来事に「意味付けする」ことが必要になるとのことです。これは、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーやその影響を受けたというキャリア理論家の1人であるマーク・サビカスも言っています。私個人は納得です。以下アドラーの話の一部を抜粋します。

「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショック──いわゆるトラウマ──に苦しむのではなく、経験の中から目的に適うものを見つけ出す。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって、自らを決定するのである。そこで、特定の経験を将来の人生のための基礎と考える時、おそらく、何らかの過ちをしているのである。意味は状況によって決定されるのではない。われわれが状況に与える意味によって、自らを決定するのである。(「人生の意味の心理学」より一部抜粋)」
 
 
多くの就活生(のみならず、転職者も)が「将来どこの会社に行けば・・・」「何をすれば・・・」「自分はこうでなければならない」と仰いますが、結局のところ、この人生の意味付けをされながら本当の進路を見据えているのか・・・うーん。
 
 
さて、話は戻り、それらを踏まえて大学2年生向けのキャリア講義において、色々と将来に向かってのエッセンスをお伝えする中、シンプルにこんなことを学生に問うてみることにしました。
 
「あなたはナゼ、大学生なのですか?」
 
一見すると、「糸井さん、あなた何言ってんの?」と言われ兼ねませんが、これ、衝撃だったようです。
言われてみれば、どうしてでしょ?って感じで。
勉学的な目的意識があった人もいれば、様々な人との出会いを求める人、何となくという人、色々な意見がそこにはありました。どれが良くてどれが悪いかではなく、では過去からの経験を振り返った時に、その目的が生まれた理由やどういった意味付けが自身の中であるのかを考えて頂く事にした次第です。
 

一講義の中ですので、その場ですぐに結論が出るような話ではありませんが、お一人お一人が考えるきっかけになったようでした。それを見て、これ重要なんだなーって私も学ばせて頂きました。
 
私たちは複雑怪奇な社会に生きており、これから先もそういう中で自分の人生を全うしていく必要があります。そのためには、前だけ見て「何とかならんか」とか「こうあるべきなんだ」と言っても、意に沿わないことが起こる可能性は十分にあり得ます。そして、意に沿わないことがあると、それを自分の過去の経験のせいにしたり、自分自身の至らなさに目を向けて嘆いたり、モチベーションを下げてしまうことがあるかもしれません。
 
先のアドラーの理論になぞれば、過去に対して、その原因に目を向けるのではなく、これからの目的に向かってこれまでの経験を意味付けすることで、本当の意味で前に向かっていくことができる訳です。
 

就職活動を迎えるみなさん。転職を考えているみなさん。先ずは今一度自分の過去の経験を振り返り、そこに意味付けをしましょう。それが将来の目的を見据えるきっかけとなり、前に進む道しるべになるに違いありません。

~Profile~
キャリアコンサルタント/ミツイワ株式会社 人財開発部 人財開発課長
糸井 圭吾(Keigo Itoi)
学習院大学 経済学部卒。外資系IT企業入社後、大手銀行向けSEを経験。
その後、外資系並びに国内系IT企業において人事職に転身し、企業制度
設計、評価システム導入、採用、人材教育等、人事業務全般に携わる。
2016年7月ミツイワ株式会社入社。人財開発部にて採用並びに教育責任者として現在に至る。
主な有資格は国家資格キャリアコンサルタント、キャリアデベロップメントアドバイザー、行動心理士、メンタルヘルスマネジメント など。

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