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「綾波レイ」と『スノーグース』

『スノーグース』とは

アメリカの作家ポール・ギャリコによる短編小説。

入手しやすい新潮文庫版では他に短編小説『小さな奇蹟』『ルドミーラ』が収録されている。
「訳者あとがき」にも書かれているが、3作品とも人間と動物をダブル主人公的に描き、その交流が描かれている。
キリスト教的な世界観も強い。

『スノーグース』は1940年に発表された作品で、第二次世界大戦が作品に大きく影響している。

『スノーグース』の少女

庵野秀明氏をはじめ、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に関わった人々へのインタビューや対談が収録されている『スキゾ・エヴァンゲリオン』では、キャラクターデザイン担当でありマンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』(KADOKAWA)の作者でもある貞本義行氏が、綾波レイのインスピレーションを得た例として、『スノーグース』に登場する少女を挙げている。

その少女はフリスという。
その姿は、『スノーグース』では以下のように描写されている。

年の頃まだ12にもならぬやせっぽちの薄汚れた少女で、神経質で、鳥のようにおどおどとした様子でしたが、垢を落としたら沼の妖精さながら、ぞっとするほど美しかったのです。生粋のサクソン人だったので骨組みは大きく、色白で、体の伸びきらぬわりには大人びた顔をし、ぐっとくぼんだ、すみれいろの目をしていました。

ポール・ギャリコ著 矢川澄子訳『スノーグース』(新潮社)

少女の外観についての描写はこれだけ(ただし、物語が進むにつれ成長していく)で、「色白」や「体の伸びきらぬわりには大人びた顔」といった部分以外は、綾波レイとの共通点は見いだせない。
おそらく貞本氏は文面以上のものを、本作から読み取ったのだろう。

筆者には、むしろ『スノーグース』のストーリーのほうが綾波レイ的であるように思う。
少女フリスは、スノーグースを通じてのみ、もう一人の主人公であるラヤダーと交流する。
これはエヴァを通じてのみしか、碇ゲンドウや碇シンジ、あるいは世界との交流ができないと思い込んでいる綾波レイ(「私には、ほかになにもないもの」「絆だから」)を彷彿とさせるように思える。

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