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恐れる育児-体型コンプレックス

コンプレックスというのは、どんな人にも多かれ少なかれあるだろう。

私は自分の体型に大いにコンプレックスがある。
物心ついた頃から私は…ぽっちゃりなのだ。
そして骨格がしっかりしているので、常にガッチリ体型である。

生まれた時こそ、2300gと小さめだったが、旺盛な食欲で一日で保育器を出された…と母に聞いた。

年子の妹は逆に昔からガリガリだった。
同居の祖母に妹と比較されてデブだと言われ続け、その度に私は傷ついていた。

たしかに太めではあったが、小学生で60キロを超すような巨漢だったわけではない。(小学五年の時点で158センチあった)
何にでもマヨネーズをかけて食うような食生活もしていない。
運動も得意だったし足も速かった。

中学になって、バレーボール部に入った。
これで少しは細っそりとするかと思いきや、私は脂肪は落ちずに筋肉がつくレスラー体質だったらしい。

相変わらず身体はゴツく、ふくらはぎはバキバキにししゃもだった。

大学受験が終わり、私はダイエットをすることにした。
毎食舞茸ばかりを食べ、五キロほど痩せた。
しかし大学に入って一人暮らしを始めると、みるみる太ってしまった。

合気道部に入ったが、先輩にキューティー鈴木(女子プロレスラー)にもじったあだ名をつけられ、女子プロレスラーを勧められた時は傷ついた。
「お前は顔がいいから女子プロになったら人気が出る!」と言われても全く嬉しくなかった。

私は過度な食事制限をしたり、深夜のランニングをしたりして痩せてはすぐにリバウンドを繰り返した。

社会人になってから、三年ほどかけて10キロほどダイエットに成功し、BMI的にも身体のサイズ的にもようやく「痩せ」ている部類になった。

しかしここでも、会社の飲み会でオッサンに「お前は太ってるからな」と言われ、傷ついた。


だから、自分の体型に対する自己評価がとてつもなく低い。
ウエストが56センチになっても、BMIが19を切っても、自分の自己イメージはデブのままだった。

妊娠はとても怖かった。
結婚をしてからも痩せた体型はキープしていたが、それは努力の上だ。

妊娠をして、趣味のようになっていたランニングや筋トレやホットヨガができなくなった。
食事に気をつけていても増えていく体重、そしてどんどん変わっていく身体。

食事に気をつけていたためか出産時には9キロ増で収まった。
でも体型は、産んだからといってすぐには戻らない。
授乳をしていると食欲が止められないし、子どもを置いて走りに行くわけにもいかない。そもそも骨盤がガクガクで運動をするのが怖かった。

子どもが生まれたのだから、自分のことなどどうでもいい。
日本の母親にはそんな姿が求められている節がある。

でも妊娠出産をする母親の多くは20代から30代なのだ。
妊娠がわかるその数秒前まで、スキンケアにも体型維持にも心を砕き、日々努力し、お金をかけてきたのだ。

母になった瞬間全てを投げ出せというのは酷すぎる。
父親は何一つ変わっていないのに。

お酒が飲めなくなるとか、仕事が前のペースで出来ないとか、女は妊娠した途端に様々な変化を強要されるが
体型の変化が個人的には一番辛かった。

それくらい、私は自分の体型がずっとずっとコンプレックスだったのだ。

私の夫はガリガリである。
身長差10センチほどだが、妊娠してしばらくした頃には夫の体重を上回ってしまった。

身体を見ても、どこにも贅肉などついていない。
毎日腹筋をしてるわけでもないのに、お腹は6つに割れている。

夫はむしろ華奢な体型が嫌だったようだ。
特に幼い頃は早生まれの子は身体が小さく運動も身体の大きな子に劣ってしまう。
高校でなんとか標準程度に身長は伸びたが、30代の今でも高校生のようなヒョロっとした体型である。

運動の後にプロテインを飲んでいるが、特に変化は見られない。(自分ではパンプアップした!とか言っているが)

私は運動をすればするだけ筋肉がつくが脂肪は落ちないレスラー体型だが、夫は筋肉も脂肪もつかない日本人体型なのだ。これが逆だったらどんなにいいだろう。
愚痴を聞くたびに、贅沢言いやがってこの野郎とお互いが思っている。

というところで、赤子(最近1歳になりました)である。

赤子は1歳になった今でも8キロないくらいの体重で細身だ。
たまに顔が丸っこい時もあるが、基本的には常に顎もシャープでスッキリしている。
細身とはいえ成長曲線内なので健康には問題ないが、周りの子どもや、友達の子のようなムッチリした手足だったことはない。

赤子は女の子だ。
夫の体型に似るほうが、絶対にいい。

私と同じ苦労はさせたくない。
それこそプロレスラーにでもならない限り、私の体質は女子にとっては無用の長物、むしろ欠点でしかない。

何故なら日本人は細く、手足が長く、顔も肩も膝も小さい女性が美しいとされているからだ。

余談だが骨格がごつい女は、膝の大きさがそもそも違うのだ。いくらダイエットをして足が細くなっても、膝の大きさは変えられない。
肩幅も然りである。
Mサイズの服を着て肩の切り替え部分がほぼ鎖骨の上にある。
体質だけでなく骨格についても遺伝してほしくない。

そんな赤子は現在食べ盛りである。
一日のうち起きている時間の三割くらいは食べ物を欲して泣いている。
というか食べ物以外のことではほとんど泣かない。

食事の量は育児書の通りあげているのだが、全く足りず、そのあとにバナナを一本食べ、それでも足りずにトウモロコシを与え、食パンを与え、最後はとりあえず水を飲ませて紛らわせているが、

少し経つとまたお腹が空いたと泣くのだ。
赤子はまだ喋れないが、お腹が空いた時は「まんま」と言って泣くのですぐにわかる。

お腹が空いたと泣く我が子の姿は母性センサーでも働くのかめちゃくちゃしんどい。
古来より母親は子を飢えさせまいというアラートが遺伝子に組み込まれているとしか思えない。

今は欲しがるだけ与えているし、なるべく市販のおやつではなくバナナやトウモロコシと言ったものを常備してあげるようにしている。

ものすごい勢いで食べる赤子を見て、ある時自分の体型コンプレックスが刺激させられていることに気付いてしまった。

欲しがるだけ与えていいのか?
どんどんブクブク太ってしまったらどうするのだ?

と自分の中の「子どもを太らせてはいけない」という思いが顔を出してしまうのだ。

だからと言って、赤ちゃんに無理な食事制限をするなど虐待以外の何物でもないことはもちろんわかっている。

わかっているから辛い。
体型を気にするなど、少なくともあと10年は先だ。
でも…このまま食べたいだけ食べるというクセがついてしまったら…?
その時苦労するのはこの子じゃないのか…?

そんな思いがよぎってしまう。
異常だ。
そんなこと自分が一番わかっている。

ご飯を求めて泣き叫ぶ我が子を前に焦ってご飯を準備しながら、自分のコンプレックスとも戦わなくてはならないとは思いもしなかった。

それほどまでに自分のコンプレックスは根強いのかと愕然とする。

だが、これは決して口には出してはいけないのもわかっている。

これ以上食べたら太るよ
また少し太ったんじゃない?

こんなことを言われて育った子どもは、いくら痩せていても自己評価が低くなってしまうだろう。

下手したら摂食障害にだってなりかねない。

人生は公平ではないと、感じることはたくさんある。

体型を維持するために、糖質制限をして、野菜やキノコ類をチマチマ食べている横で

ずっとスリムな妹は、大きなステーキを食べ、ケーキを食べ、ビールを飲んでいた。


何故私は普通の人間レベルの食事すら取れないのだと投げ出したくなることは何度もあった。

一番太っていた時でさえ、服のサイズはL(13号)だった。世間的に見れば、デブとは言えないかもしれない。
それくらいの体型の人はいくらでもいるだろう。自分の体型に満足して、ポジティブに生きている人もたくさんいるだろう。

でも私自身はそれを許せなかった。
問題は私自身なのだ。

わかっている。
わかっているからこそ…

赤子は私に似てほしくない。

#育児 #子育て #コンプレックス

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