とくし丸がやってきた
ある日のこと、町内会のLINEに散髪屋の奥さんからメッセージが届いた。
とくし丸って何なん?
とくし丸を知らなかった私は早速検索してみた。
どうやら移動スーパーらしいということが分かる。うちの近所でもたまに見かけるのは、軽トラにお魚を積んで来るタイプや、お豆腐やお豆腐製品に特化してるタイプ、あとパン屋さん。お魚はその場で捌いてくれるみたいだし、お豆腐やパンはスーパーのとは違って美味しい。ただ、高い。「スーパーのとは違う」から高いのだ。
確かに。うちの近所にも歩いて行ける範囲にあったスーパー3店舗のうち2店舗が、もっと交通量の多い道沿いに移転してしまった。私がよく利用していた2店舗だったので、今そのお店に行くには車で行かなくてはならなくなった。
車の運転が出来るうちはまだまだ「買い物難民」というには程遠いが、もっと歳を取って車の運転があやしくなってしまったらどうする?買い物に行けたとしても、大きな荷物や重たい荷物を車に運んで降ろして、という作業が待っている。考えたら確かに不安。
スーパーに行く以外にも買い物の手段はあるけど、例えばネットで注文して宅配となると注文してから届くまでに時間がかかるし、送迎サービスは気を遣う。そういえば一人暮らしだったうちの母は、普段の買い物を知り合いに頼む時にはお礼(お金)を渡してた。私が一緒に買い物に行く時も必ずお礼をくれた。私が遠慮しても「その方が頼みやすい」と言って握らせてくれた。年金暮らしなのに、買い物が品物代金だけでは済まず、結局高いものにつく。
とくし丸さん、グッジョブではないか。母が元気な頃に利用してあげたら良かったな。お年寄りの見守りまで担ってくれるなんて、高齢者社会の強い味方だよね。
そんなわけで、買い物難民と呼ぶにはまだ早い私であるが、後学のために覗いてみることにした。土曜日の午後である。私は録画した韓国ドラマを観ながらうとうとしていた。すると、なんだか楽しげな音楽が聞こえてきた。これはもしや‥
表に出てみると、散髪屋さんの駐車場にトラックが停まっていた。おおっ、あれがとくし丸。やはり先程の楽しげな音楽はとくし丸から流れていたようだ。慌ててお財布を取りに戻り散髪屋さんへと走る。既に散髪屋の奥さんや、そのお隣のご夫婦がトラックを取り囲んでいた。
「こんにちは」
「いらっしゃい。どうぞ」
と、スーパーのカゴを渡された。
移動スーパーを初めて見る私はちょっと興奮していた。トラックの運転席側の側面と後ろ側が商品棚になっていて、助手席側にも商品が少しとレジ。
「あのぉ、写真撮ってもいいですか?」
「あ、どうぞ」
すると、ご近所のご夫婦の旦那さんのほうが、
「あ、僕撮りましょうか?トラックと一緒に」
「あ、いえ、トラックの写真が撮りたいだけなんで」
と、私は苦笑い。
どれもこれも、スーパーで見かける物ばかりだけど、こうやって一度にズラっと並んでいるといつもとは違う物に見えて、なんか楽しい。えー、何買おうかな。
ご夫婦がリンゴを手にしていた。
「これ、おいくら?」
2つ入りのパックだった。670円と言ってた。
「品質の良い物を選んで持って来てますが、もし傷んでいたりしたらおっしゃってください」とのこと。
他の物も値札のようなものは付いてなくて普通より高いのか安いのかは分からなかったけど多分ビックリするほど高くはないということは分かった。
目移りしながら私が購入したのは、こちらの4点。計1205円。やっぱり普通のスーパーで買うよりちょっとお高めのようだ。ガソリン代を使って来てもらえるということを考えたら、仕方ないとも。
白だしはいつも使ってるメーカーの“減塩”タイプ。パンは、ロングラン商品なので8月が消費期限。プリンはただただ美味しそうだった。プリンは残念ながら2つしかなかったので、家族3人で分けっこだ。
そんなわけで、初めてのとくし丸体験、楽しかったです。申し込みして予約すればうちの前にも来てくれるし、欲しい物はお願いすればピンポイントで持って来てくれるって。これで、歳を取っても安心、てことで、めでたし、めでたし。
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