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「哀れなるものたち」、すばらしくもストーリーにモヤモヤ

※ネタバレあり

上映終了間際で日曜日の夜のレイトショーだというのに、私含めて観客が3人!この3人全員貸切映画館を目論んでいたんだろうなと思う。ざんねん。

音楽、衣装、建築揃い踏み

前評判とポスタービジュアル通り、映画館であの映像美を拝見するのは至上の贅沢だった。
お色直しするみたいに変わっていくドレスのどれもが劇的にかわいくて、しかもエマストーンに似合いすぎている……!
パフスリーブ最高!エマストーンやばすぎ!

オリエンタルな感じもするクルーズ船や将軍の館のアンティークにもキュンときた。

この奇妙で繊細な音楽よすぎ……。

このドレスが一番好きだったな……


フェミニズム映画とよばれることに違和感

成長したベラは下ネタや失礼なことを公然と言わず、不埒な発言を慎む様子も見られる。
発達途上のベラは「自分の力でお金を稼いでる」と娼婦をポジティブに捉えていたけど
ダンカンや使用人、将軍などさまざまな人に娼婦であることを揶揄されていた。

婚約の際には娼婦の過去を人生の汚点としてためらい
結局成長した人間(ベラ)は社会の規範に帰結するという構図になっている。

え?社会の規範へのレジスタンスと知性を重んじるマーサ・黒人青年との出会いはなんだったん?ってなった。

ゴダールが「すべての仕事は売春である」と言葉を残し売春に関して緩和的な目線を向けたのはもちろんランティモスも承知だと思うけど、
「哀れなるものたち」の世界でも性風俗へ向けられる差別はきびしく、価値観の変革が映画の中で起こるわけでもない。

男性からの罵詈雑言に対して、不完全なベラはダンカンを殴打するなどフィジカル面での抵抗も見られるけど
成長したベラは常に冷静に言い返し、抵抗のパンチラインもいまひとつ。
女性への侮蔑的、支配的態度を取る将軍に対して
「殺したくない」と慈悲を見せるベラ。

ベラは結局男性の求める従順な女性像に収まり
結婚という紋切り型の社会契約を取り交わした。
これがフェミニズム要素のある映画とは全然思わないし、
この映画の女性像の提示に思えて納得がいかない。

まとめ

翻って、やはり映像がこの上なく好きだった。
ここまで映画の着地点に納得がいかないのも初めてでなんとも消化しがたいけど、
「哀れなるものたち」、見れてよかったってたしかに思う。
原作とけっこう違うらしいから余裕あれば小説読も!

ウェディングドレス、美しすぎ!

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