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面白い本・好きな本|知覚・知性・知能 魅惑的な脳の世界[アフォーダンスとの深いつながり]

最新の脳科学がアフォーダンスを証明?

今年3月、ビル・ゲイツが「AIの時代が到来」と題し、人生で出会った革新的な技術としての2つのデモを挙げる。ひとつは、パソコンの元祖であるOS。もうひとつが、今話題のChatGPT

そんなビル・ゲイツが2021年のベスト本に選出した『脳は世界をどう見ているのか』を読む。「真のAIをつくり出す理論」という前情報の通り、非常に面白い本。

アフォーダンスと最新の脳科学がとっても似てる

ネットで調べてみたけど、誰もこの著書で提唱される「1000の脳」理論アフォーダンスを絡めたテキストが見当たらない。でも、どう考えても、1960年代に提唱された心理学の概念が、2020年代の脳科学で証明されようとしている。

この興味深いつながりを、誰も言語化していないなら、自分でまとめるしかないか、、という話。

養老天命反転地
アフォーダンスを歪め、人本来の感覚を呼び覚ます公園

「アフォーダンス」と「1000の脳」理論

荒川修作+マドリン・ギンズが30年間の構想の果てにいきついた、”肉体を再認知させる”ための公園、養老天明反転地

地面も建物もすべてが不自然に傾いたり歪んだりしている、とても有名なやつ。意図的に違和感をもたせる形状。あえてアフォーダンスを歪めることにより、ヒト本来の感覚を再認識させる、と荒川さんは言う。

ということで、心理学の「アフォーダンス」と、最新の脳科学「1000の脳理論」の興味深いつながりを、3つにまとめてみる。

①静的なものではなく、動的な知覚

アフォーダンス
身体の動きで「発見」する
1000の脳理論
 動くことで「予測」する

②五感に分解されない総合的な器官を提唱

アフォーダンス:知覚の器官
五感に分解されず、全身で感じる「知覚の器官」
1000の脳理論:皮脂コラム
五感は全て同じ「皮脂コラム」で知覚する

③動きの「変化」と「不変」の知覚

アフォーダンス:不変項
変化することで変わらない「不変項」がカギ
1000の脳理論:座標系
位置や変化に気づく「座標系」が知覚のカギ

地面も建物もすべて歪んで、とても歩きにくい、、

参考文献

アフォーダンス|J•ギブソン|心理学

知っている人は知っているけど、多くの人にとっては馴染みのない「アフォーダンス」という言葉。アメリカの心理学者ギブソンが1960年代に提唱した概念で、ヒトの知覚を扱う新しい理論になるのでは?と言われているもの。

伝統的な知覚モデル
 「意味を持たない」刺激が、脳に入力され、
 脳の情報処理によって「意味をつくりだす」
アフォーダンスモデル
 もともとモノは「意味をもっている」
 行動や行為によって「意味を発見する」

意味は、脳が「つくる」のではなく、身体で「発見」している

例えば、「地面」は、ヒトが立って歩く可能性を示している。ヒトは、実際に動きながら、重力を感じ、その可能性を発見する。「地面」が歩く行為をアフォードしている。「椅子」は座る行為をアフォードしているし、「ラケット」は手で持って振ることをアフォードしている。

では、ヒトは「アフォード」をどのように発見しているか?

『知覚の器官』
ギブソンは、個別に分解された「眼」や「耳」といった器官ではなく、「全身」で感じ取る『知覚の器官』が存在するという。ラケットを見るだけでなく、実際に振って、重さや長さ、しなり、重心を感じ取る。触覚という表層的なことではなく、重力とともに、骨格や筋を動員して、「全身」で感じ取る。

『不変更』
重要なのは「変わらないもの」
ラケットを動かしならが、全身で感じとる情報は、体もラケットも動いているので常に変化する。しかし、変化するほど、「不変項」が浮かび上がってくる。この『不変更』が知覚となる。

動きの「変化」と「不変」の知覚
ギブソンは1960年代に、この概念が重要だが、科学的に扱える枠組みは、残念ながら存在しない、と言っている。


「1000の脳」理論|J•ホーキンス|脳科学

脳と人工知能の理解に革命を起こす理論。細胞の塊にすぎない脳に、なぜ知能が生じるのか? カギは大脳新皮質にある。

従来の新皮質モデル
 脳は入力受けて知覚する
 知覚に基づき出力する
1000の脳モデル
 脳は入力される情報を予測する
 予測と入力の差異で知覚する

「動く」ことで「予測」する

入出力モデルは脊髄には当てはまる。しかし、知性が宿る新皮質は、入力の前に予測する。例えば、「コーヒーカップ」に手を伸ばすとき、カップの手触りや重さ、温度、机にもどしたときの音を「予測」している。予測と入力が一致しているときは意識されず、予測との差異が生じたときに、知覚する。「動く」ことで、無意識に大量の「予測」を行なっている。

では、ヒトはどのように知覚しているか?

『皮脂コラム』
大脳新皮質は細胞の構造がすべて同じ。つまり、視覚も聴覚も触覚も、すべて同じ仕組みで動いていると、ホーキンスはいう。その構成単位は『皮脂コラム』という。無数のコラムが同時に予測を行い、コラム間の「投票」によって合意が形成され、知覚が生じる。

『座標系』
予測をするために、脳は世界モデルをつくりだす。言い換えれば、脳の中に地図をつくる。地図を通して、位置や変化を知覚することが可能となる。この概念は三次元の物体だけでなく、数学や民主主義のような抽象的な概念にも適用される。

考えることは、動きである
知識が座標系内に保存されているなら、思い出すためには、座標系内の適切な位置を活性化する必要がある。それは街を歩き回るときに目に入る一連の物事に似ている。


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