唐揚げにレモンをかけるな!(短編小説)

俺は親切心で揚げ物にレモンの果汁をかけるやつは嫌いなのだが、それが愛したい彼女の場合は、どう対応したらいいのか、わからないんだ。

もし結婚したら人生の相棒になるわけだし、正直な気持ちは、さらけ出さなければいけないと思っているが、それでも揚げ物にレモンはない!

特に鶏の唐揚げにレモン汁をぶっかける彼女は「かけたほうがおいしいよ!」なんて俺の意に反した善良な心を振りまくわけだが、どうしても俺には耐えられない。

言ってしまおうか?

揚げ物に、特に唐揚げにレモンをかけるのは嫌だって。

でも、俺は本音が言えない。

本音を言ってしまうと、すれ違いが起こって別れてしまう可能性だってある。

ここは、こう考えよう。

俺が耐えたら、とりあえず彼氏と彼女である関係は続いていくはずだし、我慢すればいいだけじゃないか!

だって、まだABCのBCどころかAだって一回もしていないわけだし、初めての彼女だから別れたくないのだ。

そんな唐揚げレモン汁我慢作戦を実行した帰り道のとき、突然、彼女に「やっぱり価値観が違うと思うから別れよー!」って言われた。

もう、我慢なんてしなくていいよね。

新たな人生の相棒を手に入れるためにマッチングアプリに手を出す俺。

「唐揚げにレモン汁をかける女は、もう、こりごりだ!」

今度の人生の相棒は本音が言える関係を作ろうと思う俺であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?