無限大の私(短編小説)

  *

 魔法使いを人質にし、それに対して希望を見出した私だったが、魔法を発動できない付与魔法をエンチャントし忘れたので、その魔法使いに魔法を使われ、拘束器具を解除されてしまい、爆発魔法を発動され、死んでしまった。

 私は、その状況を俯瞰して見ていた。

 そう、私は私を見ていたのだ。

 私が私を見ているから、きっと私も私を見ているのだろう。

 つまり、これは輪廻が繰り返されている。

 タイムリープ現象と呼ばれる、その一歩手前と言ったところか。

 そうか。

 もしかしたら、これは神様からのお告げ。

 ここから私が、あの魔法使いに対して、なにかしらのリベンジをするということなのだな。

 だったら、ここから、やり直してやる。

 これは、あの魔法使いへの復讐になるはず。

 やってやるぞっ! おおっ!!

  *

 しかし、私はタイムリープできなかった。

 タイムリープできると思っていたのに、それがおこなわれず、むしろ私の魂なるものが、どんどん、たまっていくだけだった。

 私が私を俯瞰し、さらに私が私を俯瞰し、そのさらに私が私を俯瞰し……この作業に最後はなく、ただ、無限大の私が無限大の私を見ているだけだった。

 私は私が、たまっていく状況を俯瞰して見ながら思った。

 こんな意味のない状況ばかり俯瞰して見ているだけで、あの魔法使いに復讐できない……なんて、もどかしいのだろうか! もどかしすぎる!!

 なんで私が、たまっていくのかは、わからないけど……もしかしたら魂というものは死ぬときに分裂するのかもしれない。

 その状況が、この今なのかもしれない。

 そう思いながら無限大の私は爆発魔法で死んでいく私を俯瞰して無限に見続けるのだった。

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