天真爛漫な彼女とちょっと根暗な僕 10
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第十話
絶好の機会を母さんに邪魔さ…、いやいや母さんに阻止さ…、いやいや母さんの帰宅により成し遂げられなかったけれど、杏と付き合うことが決まったのだからこれからいくらでも機会はあるだろう。そう思うしかないよな。それよりも学校の親しい連中に納得してもらうのが大変かもな。
通学路
「カッチン、手つないでいい?」
「何考えてんだ杏」
「だって、付き合うことになったんだからいいじゃない」
「家に帰ったら好きにしていいけど、一応通学路だから控えろよ」
「チェ、つまんない。でも今好きにしていいって言ったよね。帰るの楽しみ~。早く学校終わらないかなぁ」
「これから行くんだからまだ始まってもいないぞ。それに今日は部活だから帰りは遅くなるぞ」
「チェ、つまんない。まぁ果報は寝て待てっていうからカッチンの部屋のベッドで寝て待ってるよ」
「自分の部屋で寝ろよな」
「じゃあ、カッチンが忍んできてくれる? それなら自分の部屋で待ってるけど」
「目的があからさまだな」
「だって続きをしないと気持ち悪くない?」
「確かにな。でも先は長いんだから気楽にいこうよ」
「カッチンは私のことそんなに好きじゃないんだ」
「またそこへ行くのか」
「はっきりして」
「好きだよ。でも焦ってそういうことしなくてもいいと思ってる」
「私は早くしたいの」
「杏、一生一緒って言ってたよな、先はずいぶん長いのに、数日か数週間か数か月か数年が待てないのか」
「分かった、とりあえず我慢する。でも数年は長過ぎるし、私はいつでも大丈夫だからね」
「聞き分けが良くて助かるよ」
やせ我慢しちゃったかなぁ。ホントは僕だって望んでるんだよ。でもね将来のこととかうまく想像できないんだ。だから成り行きでそんなことはいけないって思ってる。それほど大事に思ってるってことを分かってほしいんだけどな。
「じゃあ、学校まで腕組んで歩こうよ」
この人と一生一緒……か、頭痛くなってきた。
結局学校へ着くまでの間、腕を組んで歩かされた。
途中すれ違うクラスメートなどからは『いつも仲いいね』とか『熱いぞ』など冷やかされはしたが、奇異に思うヤツはいなかったようだ。
僕たちが付き合ってることを発表しなくてもすでに認知されているってことかなぁ。確かにずっと一緒にいるからなぁ。
放課後の放送室前
放送部の同期、藤田優子が話しかけてきた。
「竹本君、杏チャンと付き合ってるんだって?」
「そうだけど、情報早いね」
「それだけじゃなくて同じクラスの芙美ちゃんやクラブの後輩の平井ちゃんとも付き合ってるんだって?」
「ちょっと誤解があるようだけど」
「それから梨香ちゃんや香織ちゃんのおっぱいも楽しんで触ったそうじゃないの」
「ずいぶんと誤解があるようだけど」
「私というものがありながら何してんのよ」
誤解の域は超えてますけど・・・?
「どうして君と僕が何らかの関係があることになってんのかな?」
「だって一夜を共にしたじゃない」
「そんなことあったっけ?」
「覚えてないの? ヒド~イ。文化祭の前日」
「学校に内緒で放送室に止まった日のこと?」
「そう文化祭に使うためにレンタルした高額な機械が心配で一夜を過ごしたじゃない」
「確かに同じ空間で一夜を過ごしたことはあるけど、何も起こらなかったよね」
「私が深夜に眠くなっちゃって、竹本君の膝で眠らせてもらったわよね」
「確かに」
「ああいうのって普通の友人や知人ではしないよね」
「でも何もなかったよね」
「私が寝ている間に」
「何もしてないし、何かされた形跡もなかっただろ?」
「知らないだけで私が寝ている間に」
「無理に想像しなくていいから」
「朝目覚めたら竹本君の股間が目の前にあってビックリしたんだから」
「それは君が寝返りしたからだろ」
「ホントに何もなかったの?」
「神に誓って」
「じゃあ今からしよ?」
「疑いが晴れたのなら・・・そんなことしなくても」
「既成事実がないと彼女じゃいられなくなるじゃない」
「エッ? 僕の彼女でいたいの?」
「エッ? 私はずっとそう思ってたから」
「根拠薄いよね」
「だから・・・」
「先輩、おはようございます」
「ああ、おはよう平井君。今日はどうしたのかな? 君たちの学年は明日だったと思うけど」
「克哉さんと一緒に帰りたいなって思って」
「部活あるから先に帰れば?」
「そうだ克哉さん、私少し胸が大きくなったみたいなの。あの噂は本当だったのね」
「その噂って何?」
「ああ藤田先輩いたんですね」
「あなたより先に竹本くんと話してたんだけどね」
「藤田先輩は聞いてませんか? 克也さんの背中に抱きつくと胸が大きくなるってお話」
「そうなの? 詳しく聞かせなさいよ」
「はい。噂で流れているのは・・・・・・省略・・・・・・というわけなんです」
「それであなたは後ろから抱きついたのね?」
「はい」
「それで?」
「今朝、ちょっとブラがキツイなって思って」
「竹本君、後ろ向いて」
「それ誤解だから」
「でも現に大きくなってるじゃない。そういえば杏ちゃんも大きいし、梨香ちゃんや香織ちゃんのおっぱいも大きいわよね」
「それは偶然の一致で・・・」
「早く後ろ向いてよ。こっちは切実なの」
「ホントに効果ないから」
「それを自分で確かめるためにもやってみるのよ」
「藤田先輩、克哉さんの背中は私のモノですから」
「何言ってんの。大きくなるのが事実なら全女性のモノになるのよ」
「じゃあ仕方ないから貸してあげます」
「それより竹本君を拉致監禁して一人だけ恩恵に与ろうとするヤツもでてくるかもしれないし、商売にしたら儲かると思う輩がいるかもしれない」
「考え過ぎだって」
「とにかく試してみなきゃ。竹本君後ろ向いて」
誤解だってことを証明するためにも藤田さんの要望を受け入れよう。
彼女もある意味スピーカーだから嘘だとはっきりしたら噂は沈静化へ向かうだろう。
だけど杏になんて言おうか。
つづく
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