その一瞬

今日は娘のダンスの発表会があった。

この日のために毎週練習して。最近は心にも余裕がなくなっていたから、行きたくないと泣いた日もあった。葛藤していた。

学校に行ってなくて塞ぎこんでばかりいたから少し踊ると息切れがする。体力も落ちているから。

家族以外の人の前に出ると固まるように最近はなっていた。人とかかわるのがもう嫌だと言っていた。

それでもこの日はライトアップされた舞台に照らされて踊る。

もしかしたら踊っている間は違う自分になれているのかもしれない。もしくはほんとの自分に戻れているのかもしれない。

本人は自分に自信がないと言う。でも、自分の持ってるスキルには自信があると言っている。多分彼女のなかでこれもそのスキルの一つになるであろう。

「キレイだよ」「素敵だよ」と言われて踊る。

ソロもあるから一人きりでスポットライトを浴びて踊る。

それでも彼女は今日でこの舞台を手放そうとしている。余裕がないから。

親のエゴではあるが、あたしは娘が踊っているのをみるのが好きだったので、本当に口惜しい。迎えに行くときもちょっと早くいって少しだけ娘の練習をみる。だって少しでも多く娘が踊っているのをみたかったから。

「学校行かないんなら、ダンスぐらい頑張れない?」と自分の欲求を押し付けてしまった日もあった。


話は変わるが、あたしが仕事としている料理を作る仕事もそうだ。

準備には何時間もかかるが、食べる時間は一瞬だ。

それでもその一瞬の時間のために。食べる人の笑顔のために料理を作ろうとする。

あたしの対象者は主にショートステイの利用者様なので火傷しないようにあまり熱い状態での料理提供は出来ない。

それでも「出来るだけ適温で食べさせたい」「このぐらいの固さなら食べやすいだろうか」「食欲が沸く色合いだろうか」等、常に思考を巡らせて仕上げる。

全てはその一瞬の為に。

今日のステージもそうだ。

もちろん娘だけではなくて先生や舞台にかかわってくれてる全ての人も今日のこの日の為に全力で頑張ってくれたのだろうと思う。

それでなければこんな素晴らしいステージは出来上がらない。

全てはこの一瞬の為に。

そしてそれは娘の心をもう一度輝かせるには充分な時間になった。

「今日は楽しかった。あたしは普段練習している通りに踊っただけなのになんでみんなあんなに褒めてくれるんだろう?やっぱり後一年はやってみるかぁー!」

花束を抱えながらはにかんだ笑顔で言う。

そして家に帰ってくるなり、

「リハーサルの動画撮ってるよね?スマホに送って!」といってそれからは今日のダンスに使われていた他のグループの楽曲を調べて聴いたり幸せそうにしている。

もうその顔をみているだけであたしも幸せでどうしようもなくなってしまう。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

今日は心地いい疲れのままぐっすり眠れそうです。




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