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タバコ+高脂肪食で体重が落ちる?腸内環境に起こる変化をマウスで調べた研究

厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、たばこを吸う人の割合は男性で25.4%、女性で7.7%でした。男性は前回19年から3.4ポイント、女性は1.1ポイント低下しており、いずれも減少傾向が続いています。

国立がん研究センターの2019年の統計によると、全国の成人喫煙率は男性27.1%、女性7.6%、男女計16.7%でした。男性では1995年以降20歳~60歳代で減少傾向、女性では2004年以降ゆるやかな減少傾向にあります。

と、徐々に減り続けている喫煙習慣ですが、2024年に発表された論文では「タバコ+高脂肪食の組み合わせが、身体にものすごい影響を与えているかも」という結果が報告されました。それをもとに、このnoteではタバコと腸内環境の関係性について解説したいと思います。

腸内細菌叢の話、タバコの話

腸内細菌叢は、代謝機能の維持や肥満、2型糖尿病など、いくつもの生理現象に重要な関わりがあります。そして、私たちが日々食べる食事によって生み出される代謝産物は、宿主(つまり人間たち)の代謝に大きな影響を与えるのです。

例えば、腸内細菌による難消化性多糖類の発酵に由来する短鎖脂肪酸は、インスリン感受性の改善、肥満の回避などに大きく関わります。また、腸内細菌叢はいくつもの脂肪酸を合成し、交感神経系の活性化によるエネルギー消費を促進します。つまり、腸内細菌が生み出す代謝産物が、私たちの肥満の抑制に働いていたわけです。

こうしたエピソードをあげればキリがないほど、宿主である私たちと腸内細菌たちは、切っても切れない関係にあります。

さて、タバコは現在、世界中で予防可能な死亡事故の主な原因として知られています。喫煙者は肺疾患、心血管疾患、がんなど深刻な病気にかかりやすく、副流煙でも感染症のリスクが高まり、喘息などの症状が悪化してしまうのです。世の中の重篤な疾患の主要因というのが、タバコに対する世界の認識です。

タバコの喫煙、禁煙と体重変動との間には強い関連があるとされています。興味深いことに、禁煙後の体重増加は、ヒトと動物の両方の研究で観察されているのです。実際、ニコチンは交感神経系の活性化による脂肪燃焼の促進効果があるとされています。ダイエッターやトレーニーにとって、ニコチンがもたらす数少ない「良い影響」の1つです。

他にも、トリプトファン由来の腸内細菌代謝産物であるインドールは、ニコチン投与後に増加して、一部の大腸炎の抑制に働くとされています。他にも、ニコチンが肝臓疾患の緩和する可能性があるという報告もあれば、ニコチンが非アルコール性脂肪性肝疾患の発症につながるとも言われています。

ニコチン=身体に害があるというのは疑いようのない事実である一方、腸内細菌叢に与える影響、ひいては人体に与える影響は多種多様なのです。

結局、ニコチンは腸内細菌叢にどう影響するの?というのを確かめたのが、今回紹介する研究です。

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