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【DM制作日記】池田早秋個展

DM制作を“売り”にする者として、DM制作について紹介しないのも良くないなと思い、不定期ではありますが1つずつ紹介していこうと思います。

池田早秋個展『霧煙る』  2020.10

池田早秋さんの個展DMをデザインさせていただきました。
彼女は動物(くじらが多い)をモチーフの主として展開する作家さんです。
動物作家さんと一括りに言えど、そのスタイルは博物的に展開する人や、デフォルメを施してキャラクター化させる方など、本当に多岐に渡ります。
過去、当ギャラリーではかわさきしゅんいち氏という博物的なアプローチで動物画を手がける作家さんが個展を開催してくださいました。
対して、池田氏は描かれるものたちの物語性に重きを置く作家です。そこで、かわさき氏の時の表現と何かしら差をつけ、直感的に「ストーリーがあるもの」としてみてもらう必要があると考えました。物語を体験する媒体として、小説や絵本といった「本」という形式に着目し、そこから本の栞をベースにデザインをしていきます。

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変形サイズでの出力と、穴あけまでは印刷会社さんで。そこから全て手作業で紐を通していきます。作品がモノクロであることもあり、紐の色も黒に統一。紙は、乗った際のインキの黒の深さに加え、紙自体の白色度が高いミセスBを採用。栞ということでポストカードよりもずっと小さなDMですが、強い存在感がありました。

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表面デザイン
はみ出すサイズであしらわれたタイトルロゴと、その前を静かに浮遊する鯨で画のほとんどを占めています。池田氏の作品には「生と死」をテーマにしたものも多く、あの世の境界線を彷彿とさせるような枠の存在を取り入れました。この枠と鯨と奥のタイトルの関係が、紙面に奥行きを作っています。

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裏面デザイン
ここまで横幅のないサイズでのレイアウトは初の試みでした。
タイトルが縦組みだったので、その流れで会期と簡易ステートメントも縦組みで組んでみました。
この時の僕の中でのちょっとした流行りだったのが、可能な限り記号などの要素も削ぎ落として情報を伝えることでした。そこで、本来であれば10「/」22と表記するところを「/」を省き、数字のサイズ変更のみで関係性を生む試みもしていたのでした。(さすがにすべての基本情報にそれをやってしまうとただ読みづらいだけになるので、日付のみに限定しています)

DMは本来展示が終われば、その役割も終わってしまうところですが、このDMに限ってはそのまま栞としても使えるものなので、今でもお手元にあるという方がいらっしゃるのではないでしょうか。
いてくれたら嬉しいですね。

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